第17話 そして幼馴染の彼女は詰め寄った。
◇◇◇◇◇
生徒会選挙への立候補が締め切られて、早いもので二週間が過ぎた。
もう佐藤は演説の原稿も仕上がっていて、ここ最近は放課後に実際に読み上げる練習に付き合っている。
かおりもたまに不満そうにはするが、いよいよ自分のことで忙しくなってきたのか、ここ何日かはそんな愚痴も聞かなくなった。
「えー、今日の午後は前から言ってたと思うが、十一月にある修学旅行のグループ分けをするからな。各々五、六人でグループを作れるように、だいたいの目星をつけておくように。以上」
朝のホームルームを怠そうに切り上げた担任の木本が、重い足取りで教室を出ていく。
「なんか最近忙しくぜんぜん考えてなかったけど、もうそんな時期なんだね」
「まあ、十一月っていったらもう二か月ないしね」
かおりが背もたれに体重をあずけながら、こっちを向いて話しかけてきた。
「で、班はどうする? 私とそうくんと、すずちゃんと神木くんと~」
「……一人か二人足りないな」
もうその四人は決定事項だということに少しだけほっこりするが、口に出してみて改めて思う。
俺、友達少なくね?
いやね、かおりとか中野さんの女友達とか、亮と仲良いやつはけっこういるんだよ。
でも自分に置き換えて考えてみるとね。
うん。
絶望的に友達がいない。誘える人がいない。
「……どうしようか」
「適当に友達誘ってみようか?」
「いや、それはちょっと……」
ほとんど話さない男子がいるグループになんて混ぜられたい女子もいないだろう。
というか、こっちが気まずい。
なんで今年転校してきたばかりのかおりの方が俺よりも友達が多いのか。
「まあ、どうにかなるよ!」
落ち込んでる俺を励まそうとしてか、かおりが声色を明るくする。
「……そうだよな」
そんな彼女の優しさが、俺の空しさを余計に掻きたてた。
◇◇◇◇◇
「――ってことがあってさ。俺、ぼっちだったぽいさ」
「そんなことないよ。私なんて特別仲が良い人もいなくて誰も誘ってくれないから、本当に一人になっちゃうよ」
昼休みに、かおりや亮たちとの昼食を先に済ませて、生徒会室でそんな悲しい会話をする。
佐藤とはこの二週間でだいぶ打ち解けられたけど、思っていた以上に彼女はまじめで頑張り屋の女の子だった。
「さすがに一人ってまずくないか?」
「うーん……まあどこかのグループに人数合わせで入るかなぁ」
佐藤はファイルから演説用の原稿を取り出しながら、少し寂しそうに言う。
そういう顔をされると、こっちもいらぬお節介を焼きたくなってしまう。
「そうだ。それならさ、俺たちのグループに入れば? ちょうど一人足りなかったし。それに、生徒会長になろうって人が人数合わせじゃあ、当選した後の威厳に関わるよ」
「いいの?」
佐藤は遠慮がちに、だけど少し嬉しそうにしながら聞き返してきた。
「うん。こっちは大丈夫。それより話したこともない人が二人いるけど、佐藤こそ平気?」
「う……うん。水瀬くんがいるし」
「じゃあ決まりだな。そうと決まったら練習するよ。練習」
この二週間で俺にも数少ない友達といえる存在が一人できていたんだな、なんてことを思いながら、原稿を読み始めた佐藤に声に耳を傾ける。
「――ちょっ、ちょっとそうくん! なんでよりにもよって佐藤さんなの!」
昼休み後の体育館で、かおりに詰め寄られたことは言うまでもない。
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