第9話 そして彼は幼馴染の彼女を遠ざける。
◇◇◇◇◇
『なあ、奏太。生徒会って誰でも入れるのか?』
亮からそんなメッセージが送られてきたのは、週も変わって九月が始まったばかりの――昨日の夕方のことだった。
『誰でもとは言わないけど、まあ本人がちゃんとやってくれるって言うんなら入れるよ』
『そうか』
亮は俺の返答に満足したらしく、昨日はそこで話が終わった。
昨日は。
「どうしたんだよ亮。珍しく連れしょんなんてして」
「あぁ、ちょっと昨日の件で話したいことがあってさ……」
「え、何? お前、生徒会に入る気なの?」
昼休みのトイレに二人並んで、俺は思わず声を張り上げた。
「……違ぇよ。生徒会に入れてほしいのは俺じゃなくてすずの奴のことをだよ」
一方の亮はと言うと、若干冷めた目でそう言って、俺より先に手を洗い始めた。
「中野さんをって、本人が入りたいって言ってるのか? それならわざわざお前が言ってくることもないだろうに」
「そりゃあ、本人は入りたいなんて微塵も思ってないだろうからな」
「じゃあ別に入らなくていいだろ。なんでわざわざ生徒会に入れさせようとするんだよ」
俺もその隣で少し遅れて手を洗って、少し冷たく返す。
「なんでって、そりゃあ……」
亮はそこでもごもごと言葉に詰まって、結局は「なんだっていいだろ」という
捨て台詞とともに先にトイレから出ていってしまった――。
※※※※※
「――ってことがあってさ」
放課後の人のいなくなった教室で一通り話し終えて、俺は机を挟んで向かい合うかおりに目を向けた。
「ふーん……。でもすずちゃん、サッカー部でマネージャーやろうと思ってるって言ってたよ?」
「えっ、そうなのか。初耳だわ」
「うん。入りたい部活がないとかならともかく、入りたいとこがあるんだったら生徒会に入る必要なんてないよね」
「まあ、それに関しては亮も、中野さんが生徒会に入りたがってるわけじゃないって言ってたけど…………ん?」
つまり亮は、中野さんがサッカー部のマネージャーになるのを妨げようとしている?
昼休みは結局、亮が中野さんを生徒会に入れたがる理由を聞きそびれてしまったけれど、そういうことなのか⁉
「どうしたの、そうくん」
「いや……でもなぁ」
亮が中野さんと距離を置こうとしているなんて受け入れがたい。
幼馴染を彼女に持つ俺としても、亮を追いかけて転校までしてきた健気な中野さんのことを応援してあげたいのだ。
でも。そうではあるけれども。
中野さんの恋路が前途多難でありそうなことは、なんとなく理解できた。
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