第4話 そして幼馴染の彼女はやってきた。(4)
◇◇◇◇◇
「悪い、練習が長引いてだいぶ遅くなった」
辺りがもう暗くなってきてから、亮は遅れてやってきた。
「まあ部活なら仕方ないだろ。むしろうちの学校で帰宅部の俺たちがおかしいんだから」
「まあ、それもそうか」
亮は居心地悪そうに少しきょろきょろとしながら、椅子を引いて座る。
「今日はお父さんいないから」
「そっ、そうか。なら良かった」
何の話をしているのかは分からないが、きっと二人の間にも色々あるんだろう。
亮が来るまで中野さんに聞き出したことからも、なんとなく想像できる。
中野さん曰く、彼女は毎日のように亮に部屋に行っているらしい。
夕飯を食べ終わって、そのくらいの時間に娘が足繁く男の家に通っていたと知ったら、きっと父親も亮のことをよくは思わないだろう。
「(まぁ、普通はそうだよなぁ)」
俺は思わず、小さく声を漏らした。
かおりの家なんて「また仲良くなれて良かったな」みたいなスタイルだったし、理解のある親と言えばそうなんだろうけれども。
「つーか二人とも、居心地悪くないか? 俺も初めてこの家に来たときはそわそわして気が気じゃなくてさ。自分でこいつん家を提案しといてあれだけど」
「まあ、ビックリはしたけど」
「これはこれで新鮮というかね」
「そっか。ならいいけど」
亮は大きく息を吐くと、大きな背もたれに体重を預けて天井を向いた。
「そういえばクラスで誰かも言ってたけど、なんでうちのクラスに転校してこれたんだろうね」
ふいに、頭に浮かんだ疑問を口に出してみる。
亮は俺をちらっと見て、それから何事もなかったかのようにぼそっと言った。
「あぁ、それはほら。こいつの親父、うちの高校OBなんだよ。それで結構な額の寄付をしてくれてる」
「え? それって……」
「まあ、大人の事情ってやつだな」
「……」
俺の知らない世界が、そこにはあったらしい。
思わず中野さんの方を見てしまう。
「ん? 私はただ亮と同じクラスじゃないともう勉強しないってお父さんに言っただけだよ」
「そ……そうなんだ」
金持ちは怖い。
心底そんなことを思った俺だった。
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