第12話 なぜだかお隣さんにマッサージをされる。
「そうくん、入るよー」
「んー」
シャワーを浴びてから筋肉痛に抗うことをやめてベッドで横になっていると、本当にかおりがやってきた。
俺はなんとか体を起こして彼女に方へ目を向ける。
この部屋には課題だの茜に会いに来たついでだので日常的に押しかけてきているかおりだが、今日はまた一段と――。
「……⁉」
パジャマだった。
いや、一段とパジャマってどういう意味だよ! とか言いたくなる気持ちも分かるよ? むしろ俺だってそう思うくらいだ。
でも、初めて見るかおりのパジャマ姿はなんというかそれはもう、超絶可愛かったのだ。
上下セットらしいピンク色の半袖半ズボンのパジャマは袖口のフリルがアクセントになっていて、それ単体でも十分可愛らしい。
そんなパジャマを着ているのは転校から一か月で学年で一、二を争うとまで言われている容貌の持ち主なのだ。
これが可愛くないはずがない。足し算ではなく掛け算だ。
日本のオタク文化の象徴でもある萌えを、初めて三次元で実感したかもしれない。
もう可愛い以外の言葉では表現できなかった。
「可愛いなおい」
「えへへ。そんなこと言われると照れちゃうな~。今度からここに来るときは毎回このパジャマを着てこようかな」
俺の素直な感想に、かおりは頭を掻きながら答える。
「たまに見るからいいっていうのもあるかも」
「確かに。じゃあたまには着てくることにするよ。それよりほら、マッサージしてあげるからうつ伏せになって」
かおりはここに来た理由を忘れていなかったようで、俺にそう言ってベッドに腰を下ろした。
俺は言われた通りにベッドにうつ伏せになり、目を閉じて全身の力を抜く。
「ちょっと失礼するよー」
「うん。よろしく」
高鳴る鼓動を何とか抑えようと、平然を装い俺が言った直後――。
腰のあたりにむにゅっと柔らかい感触を感じた。
パジャマが夏用の薄手ものなので、なまじ素肌が想像できてしまい心臓に悪い。
「重くない?」
「……大丈夫」
「ちょっとなに今の間⁉ 私そんなに重かった⁉」
「違う! 違うって!」
俺の腰の上に女の子座りをしたかおりが笑いながらゆっくりと背中を押し始める。
かおりが体重をかけるたびに、彼女の可愛らしいお尻が俺の腰につぶされているのを感じる。
「どう? 気持ちいい?」
変なことを考えるな、俺!
背中に集中。背中に集中。背中に集中……。
心を無にして意識をかおりの指に集中させる。
あれ? なんかこれ思っていた以上に――。
「んっ……ふぅ……気持ちいい……よ」
なんだか変な声が出てしまった。
俺は恥ずかしすぎて枕に顔を埋めるが、的確なツボをちょうどいい強さで押されているのか、体重をかけられるたびに声にならない声が漏れる。
「かおり……本当にマッサージ……上手だね」
「でしょ? よく小さいころお父さんのマッサージしてたからさ。もっと楽にしてていいよー」
かおりは声を弾ませて、一段と気持ちのいいツボを押してきた。
「くぅ……そこ良い……」
「ここかぁ? ここがええんかぁ?」
かおりは時々ふざけながらも、一定のペースでマッサージを続ける。
あぁ、なんかこれ……。
あまりの心地よさにまぶたが少しずつ下がってきてしまう。
きっと疲れがたまっていたんだろう。
俺は知らない間に眠ってしまっていたようで、次に目を開けた時には――。
ぽよんっ。
起き上がろうとして、背中に柔らかいものが二つ当たる。
「ん……? って、かおり⁉」
――俺に重なるようにして、かおりが俺の背中ですやすやと眠っていた。
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