第十三話 遊園地 (前編)

 今日は待ちに待った土曜日。

 そう! 皆で遊園地に行く日だ。


 というわけで、僕たちは遊園地の正面ゲートにいる。

 残念ながら姉さんも付いて来やがった。


 僕たちは入場券とフリーパスを購入し、入園した。


「何から乗る?」

「遊園地といえば、ジェットコースターでしょ!」


 僕たちは泉さんの意見に賛同した。




 ジェットコースターの座席には、僕と泉さん、その後ろに佐藤と田中、最後に姉さんという並びで座っている。


「出発しまーす」


 係員のお姉さんがスイッチを押すと、ジェットコースターが出発した。


 ジェットコースターがカタカタと音を立てて坂を登って行き――急降下!


「「キャアァァ」」と楽しそうに悲鳴をあげる佐藤と泉さん。

「「ギャアアァァァア!」」と、断末魔の悲鳴にも似た声をあげる僕と田中。


 そして――ジェットコースターが止まった。


 やっと降りれる。


 僕たちはジェットコースターから降車した。


「次はどこに行く?」

「あれなんかどうだ?」

「面白そうだな。行こう!」


 姉さんと佐藤と泉さんが、僕と田中を置いてけぼりにして、話を進める。


 僕は泉さんに、田中は佐藤に腕を引っ張られ、次のアトラクションに向かった。




 僕はよく分からない椅子に座らされた。


 今いるアトラクションは、目茶苦茶高くて太い柱の下に座席が取り付けられているアトラクションだ。

 

 このアトラクションは一体何なのだろう?


 考えている内に、係員がベルトや安全バーで僕の体を座席に固定した。


「これは何のアトラクション?」

「乗ってたら分かるよ」


 隣に座っている泉さんの返事は、シンプルなものだった。


「Are you ready?」


 近くのスピーカーから英文が聞こえた。

 僕と田中は「No」、それ以外の三人は「Yes」と答える。


 僕たちが乗っている座席が、ゆくっりと登って行く。

 そして、高さ50mくらいで、停止した。


 高いよう。怖いよう。人間が小さな虫けらに見えるよう。


「下ろせえぇぇえ!」


 高所恐怖症の田中が叫び声をあげる。


 すると、田中の要望に応えるように座席が落下を始めた。


「やっぱ止まれえぇぇぇえ!」

「「キャ————!」」

「ギャアァァァ!」


 体がフワフワ浮いている気がする。そのままの意味で頭に血が上る。

 恐怖のあまり、頭が真っ白になった。




 気が付いたら、地面に立っていた。何故か体がすごく軽い。


 滑るように体が前に進む。


 自分が死んでしまったのかと思い、足元を確認したが、ちゃんと二本の足で立てていた。


 恐怖で感覚がマヒし、体が軽く感じているのだろう。


 と、自分で結論付けて納得した。


「怖かったね。月城くん!」


 泉さんが楽しそうに話しかけて来たが、僕は何も答える事が出来ない。


 田中の目からは、生気が完全に失われている。まるでゾンビのようだ。


 それと引き換え、女性陣はとても元気にはしゃいでいる。

 女子よりも男子の方が体力があるという話――嘘だな。


「ルナ、お前は男なのに情けないなあ」


 黙れ姉さん!


 と叫びたいが、僕にはそれが出来る元気がない。


「次は落ち着けるアトラクションに乗ろうよ」

「例えば?」

「シューティングゲームとか」

「月城にしてはいい意見を言うな。よし、行くわよ!」




 シューティングゲームのアトラクションに着いた。


 このアトラクションは、乗り物に乗り、魔物たちを光線銃レーザーガンで撃ちまくる、シンプルな屋内アトラクションだ。


 この乗り物の定員は4人。

 僕と泉さんと姉さん、佐藤と田中という二グループに分かれた。


「月城くん、頑張ろうね!」

「うん!」

「いいなあ、月城は。彼女がいてさ」


 田中がつぶやいた次の瞬間、彼の顔面に佐藤の右ストレートがめり込んだ。


「何すんだよ!」

「…………」


 佐藤は何も言わない。


 僕たちは乗り物に乗り込んだ。


「月城くん、佐藤さんは田中くんの事が……?」

「うん。僕もそう思う」

「ルナも彩良も、何を話してんだ? もうすぐ始まるぞ」


 姉さんにそう言われて、僕は光線銃レーザーガンをしっかりと握った。




 感想


 魔物を撃つ時の姉さんの狂気に満ちた笑顔が怖かった。




「あー楽しかった!」

「そうだな。ルナが選んだ割には面白かった」


 姉さんがサラッと酷いことを言う。


「お~い」

 佐藤と田中も出て来た。


「何ポイント取れた?」


 かくして、スコアの発表会が始まった。



 結果は――


  一位 姉さん

  二位 佐藤

  三位 泉さん

  四位 田中

  五位 僕



「なあ月城、特技がゲームの俺たちが、下二つだな」

「うん」


 男性陣がしょんぼりしていると、


「ほーほっほっほっ! どう!? 私に跪け!」


 黙れ姉さん! お前は悪の女魔導士(見本品)かよ!


 はあ、ゲームセンターでも泉さんに負けて、今日も負けた。

 とても悔しい。


「ねえ月城くん」


 泉さんが僕に小声で話しかけて来た。僕はそれに合わせて小声で「何?」と帰す。


「佐藤さんは田中くんが好きなんだよね?」

「多分」

「なんかこれ、ダブルデートみたいだね」


 言われてみれば、確かにそうだ。

 姉さんがいなければだが。


 そう思いながら辺りを見渡し――姉さんを追い払う方法を見つけた!


「次はあれに行こうよ」

「ルナ、お前子供っぽいな」

「私もいいと思うよ」

「そうか? 俺は優希先生に賛成かな」


 僕が指差しているのは、子供向けの立体迷路ラビリンスだ。

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