第4章 エピローグ


 深い暗闇の中で遠くに聞こえる人間達の声に我はゆっくりと意識を取り戻した。


 目の前には既に日が開けたのか、薄明はくめいの空に照らされた焼け焦げた大樹達と所々陥没した戦闘の跡が残っている。


 既に龍脈は勢いを落とし、ガルス砦の魔術師総出で龍脈が湧き出る地面を塞ぐ工程へと移っていた。


 薄く瞼を開け、その光景をジッと見つめる。


 既に決着は着いていた。


 我は龍へと進化し、最大火力のブレスを吐き出す時、今の我に出来る最大限の妨害へ全力を出した。


 全てを一撃に力を込めたからこそ、起き上がる力も最早無い。


 だが、あの娘は違うのだろう。


 我の隣で剥き出した岩に腰を掛けてパタパタと足をぶらつかせては、ジッと復興の様子を見ていた少女が我に気付き、「あっ、起きた?」と声を掛ける。


 けれど、どんなに我が傷だらけでも彼女は一つの傷もない。


『傷一つ、付けられぬとはな……』


 感嘆の声と諦めが混じった声だった。


 ただ、呟いただけだったが、「いや、そうでもないよ」と返事が返ってきた事に視線を声の主人へ向ける。


 そこには、満面の笑みを浮かべた年相応の少女がおり、彼女は我の前でしゃがみ込むと、



「見ててね」


 指を尖った岩の先で軽く斬る。


 だが、それも少しずつ傷が消え、数秒経つ頃には傷跡など何処にも無かった。


「もう戦闘の傷は消えちゃったから、がっかりしないでね。こうやって消さないと、あの子達が騒ぐから」


 よく見れば制服の裾が所々焼け焦げ、小さな穴を開けていた。


 それは、少なくとも我の攻撃は少女に届いていたという事だ。


『傷を付けようと癒やされるか。まさか、圧倒的な実力差をつけた後に、それを見せる事で我を絶望させる為に我を生かしたのか!』

「ん? あ〜、違う違う。だって、私は別に貴方を殺すつもりなんて微塵も無かったんだから」

『ッ、殺す価値も無いと言うのか』

「だから、違うってば。話を聞きなさい」


 そう言うと、彼女は我の頭に小さな手で手刀を作り、パシッと軽く叩いた。


『む、むぅ……』

「私は、この戦いで自分と戦える強い相手がいるかどうかを探しに来ただけ。そしたら、貴方がそこにいた。だから、戦った。本当にそれだけなんだから」

『馬鹿な! たった、そんな自己満足の為に命を賭けたと言うのか!?』

「だって、その方が生きてるって思えて楽しいでしょ?」


 少女は鮮やかな朝焼けの中で嘘偽りない笑みでそう答えた。


『我が見てきたどの奴らよりも、イカれとるな』

「でも、楽しくなかった? 自分と戦える相手なんて古竜になるとそうそう居ないでしょ?」


 古い記憶の中、若い頃の我は他の竜に負けじと戦闘ばかり繰り返していた。


 竜の中では強い者が正義であり、悪は弱さだ。


 だからこそ、力を付け、勝ち続けてきた。


 それこそ、番が死んでもなお、古竜と他種族や竜種にすら言われようと。


 強さこそが正義なのだと信じて。


 だが、そこに楽しさがあったのかと問われれば。


『分からぬ。我は番が弱さで死んだ時、自分の死を番に見てしまった。我は死ぬのが怖い。そこに楽しさなどあるわけがない。死から逃れる為に強さを求めたのじゃから。今ではそんな感情すら忘れてしまっていた』


 少女は岩に再度腰を掛けると、橙色と深い青が混じった綺麗な朝日を見上げ、言葉を紡ぐ。


「私だって、死ぬのは嫌だよ? 勿論、私の大事な人達が死んじゃうのも嫌」

『だったら、何故死に向かう戦闘へ命を賭ける』

「私は一度死んだと思った事があるの。それで、生死を彷徨った事もある。その時、思ったの。その時まで何の事もない平和で温かな日々だったけど、それでも危険は常に横にあるんだなって。だったら、私がやりたい事、楽しいと思える事を一生懸命にやるんだ」

『生きる為に戦闘をするか。まるで……』

「まるで、過去の自分みたいって?」


 にやりと意地悪げな笑みを浮かべる。


『ふん、人間如きがほざくでないわ』

「つれないなぁ。あんなに楽しい戦闘をした後だっていうのに」

『貴様の圧勝だったじゃろうが』

「そんな事ないってば。避けきれずに傷も沢山食らったし、中々に強敵だったんだよ? まぁ、それでも私が勝ったけどね!」


 我が憎々しい瞳で睨んでやっても少女は楽しそうに笑うばかりだ。


 本当に調子が狂う。


「それに、私があそこまで本気を出すこと自体珍しいんだからね?」


 我は目の前の少女の瞳を見た。


 ジッと。


 食い入る程に。


『ふん、嘘ではないか。確かに、お主に負けて久々に悔しさや後悔というのを思い出した。じゃが、これまでじゃ。我はここで人間達に捕らえられて死ぬじゃろう。ほれ、迎えが来たみたいじゃしの』

「ん?」


 我の後方。


 深い森の奥から黒色の荘厳な馬車を引き連れ、現れた数匹の馬に乗った騎士達が見える。


 数は十人。


 だが、先頭で馬を駆ける男とその後ろの二人は明らかに他の騎士達とは別格。


 鎧を身につけ、馬に乗った状態であれ程までに体幹がブレない人間というのは、余程鍛えたか、バランス感覚が良いかのどちらかじゃろう。


 が、奴等は前者じゃな。


 そして、男が我等に近付いてくると後ろに控えていた後方にいた一人の騎士が馬から降りた。


 だが、想定してなかったのが、少女がゆっくりと我に背を向けて立った事だ。


 まるで、我を守るように。


『な、何をしておる! 我はそんな事、望んでおらぬぞ! 憐みならばさっさと退け!』


 しかし、少女は変わらずに我に笑みを向けただけだった。


 それに思わず唖然とし、次の言葉が自然と出てこなかった。


 そんなことをしていると、遂に少女の正面に若い騎士が立つ。


 漆黒の軍服に帝国軍の紋章を付け、所々に豪華な刺繍がしてある所を見るに、国お抱えの騎士と言ったところか。


「まさか、噂は本当だったとはな……古竜……いや、まさか龍種?」


 体力を消耗しすぎてまともに動けぬ我に不躾な視線を向けてくる騎士。


「さて。貴様ら、ここで何をしている」

「何も。強いて言うなら談笑」

「真面目に答える気は無いか。なら質問を変えよう。ソレはなんだ。何故我等の領土にそんなモノがいる」

「龍だよ。それよりも、貴方達は何で此処に来たのさ」

「やはりか。質問をしているのは俺だ。俺の質問にだけ答えろ」

「嫌—————」


 少女が反論しようと口を開いた直後、男の手が素早く少女へと振るわれた。


『ッ!』


 まさかとは思っていたが、少女に手を上げようとする男の暴挙に残った最後の力を振り絞り、身体に力を入れようとした直後、男の手が不自然に空中で止まる。


 それは、少女に当たる寸前といった距離。


 少女は真っ直ぐに騎士に視線を向けており、手など見ようともしない。


 しかし、男は少女の真っ直ぐで貫くような視線に動揺しているのか、手を押そうとするが、ビクともしないようだ。


「貴様っ」


 混乱したのは男だけではなく、背後に控える騎士達も男と同じ動揺を隠せずにいると、ふわりと二人のメイドが少女の隣に降り立った。


 周囲を見渡せば、空中に更に二体。


 龍に近い力を持つ紅色の竜と真っ白な竜。


 そして、そんな白竜の上にもう弓を持つ一人のメイドがいた。


「そこまでにして頂けますか?」


 そして何より、この我でさえ気が付く事が出来なかった金髪の少女だ。


「暴力を振るおうとしたのは貴方の独断ですか? それとも、帝国侯爵ノーブル家の主人たる貴方様の御指示ですか?」


 金髪の少女はジッと黒の馬車へと視線を向けており、逸らすことはない。


 けれど、出てくる気は微塵もなく、その代わり先頭に立っていた騎士を呼び寄せ、何かを伝え終わると騎士が戻って来る。


 その頃には、手が何かに捕まっていた男も解放され、手をさすりながら此方を睨んでいた。


「私の名前はノーブル侯爵家にお仕えする近衛騎士アーネストと言う。先程の部下の非礼を詫びさせて欲しい。しかし、ここは我等の領土でもある。そこで、無断に戦闘をされては条約違反となりかねないのは知っているだろうか」

「えぇ。ですが、記憶では此処は魔法国の領土でもあるようですが? まさか、自衛の目的ですら戦闘を行えないというのであれば、素直に魔物の大群に滅ぼされろとでも言いたいのですか?」

「いや、それは違う。だが、何事にも規則に則らなければならない。そうでなければ、条約の意味が無いからな」


 男がそこで一旦言葉を止め、主人に見えないように溜息を吐いた。


「とはいえ、今回は状況が状況だ。後で主人が国に特例を適用する案を提出すると仰っている以上、我らもこれ以上この場で追求するつもりはない。ただ、この場で何が起こったのかを知りたいだけだ」

「一方的な情報開示をしろ、と?」

「無論、此方も情報を渡そう」


 随分と物分かりの良い。


 逆にそこが何を考えているのか分からぬから、不気味じゃが。


 金髪の少女は承諾し、一つ一つ話していくが、我と戦った銀髪の少女の事は徹底的に隠すつもりらしい。


 とはいえ、それは時間の問題じゃろう。


 この場で数多くの者が少女を見ておる。


 ただ、情報が攪乱しているとはいえ、我を倒した者がいると相手は分かっておるじゃろ―――――待て。なんじゃ、この身も毛も立つ気配は……。


 咄嗟に全身を襲った全身の毛が逆立つ様な気配。


 それは、騎士達のずっと奥。


 何かが物凄い速度で近付いてきておる。


 我が怯えているのか?


 この数百年を生きた我が……?


「では、帝国の領土に突如として出現した魔物によって、他の魔物がこの都市にやってきたと?」

「あぁ。奴の名は『黒雷の悪魔』と呼ばれている最悪の魔物だ。奴を最初に発見したのは数日前だが、討伐に向かった冒険者三十人が重軽傷を負い、軍を動かしても奴の硬い毛に傷一つ付けられなかった」

「帝国の軍をもってしてもですか?」

「それどころか返り討ちにあったとも聞いたがな。近々、奴の討伐依頼が出ると聞く。その時はくれぐれも——————」

「それは……」

「ん?」

「アレの事でしょうか?」

 

 深い木々が並ぶ森の中で幽霊の如く黒い煙がするりと抜ける。


 奥深い黒に紛れるようにして潜む銀色の瞳は、我等をジッと見つめていた。


「ッ! 急げ! 侯爵様を守る体勢に移れ!」


 男の声が声を張り上げる前に馬車を守る騎士達と迎撃準備に入った騎士達に別れ、すぐにでも行動に移せるように守りを固めている。


 そして、騎士達の内の数人が「撃て!」と言う掛け声に反応して、片手で魔法を放った。


 しかし、それではまともに攻撃を喰らわせるどころか刺激すると分かっておる筈。


 複数の魔法が衝突し合い、爆発を起こす中で、木々が折れて地面へと倒れる。


 砂塵が舞い、爆発の煙幕が発生する中、ソレはゆっくりとチリチリと焦がす炎を割いて歩いてきた。


 思わず我含め、騎士達も息を呑んだ。


 漆黒で濡れた綺麗な濡羽ぬれば色の毛並みに馬の身長を優に越す肉体。


 毛並みに隠れてはいるが、その体躯を軽々と操る筋肉は相当なものだ。


 瞳は銀の鋭い目つきを周囲に走らせてはいるが、その風格は普通の魔物とは格が違う。


 そして、我はアレに似た生き物を数百年前に見た事があった。


『まさか、フェンリル……ッ!?』


 じゃが、毛の色があまりに違いすぎる。


 フェンリルは神の化身と呼ばれる神狼。


 それが、何故あんな黒く……。


「まさか、溢れ出た龍脈に惹かれてやってきたのかッ?」


 騎士の一人が声を荒げ、緊張で場が張り詰めるが、今の我では戦ったとしても奴の餌にしかならん。


 万全の状態でも勝てるかどうか。


 それに、帝国の人間が此処まで恐るのも理解出来る話じゃ。


 あれは人間がどうこう出来るものではない。


 我も龍へと至ったが、まだ龍としては赤子も同然。


 本来の五龍とはまるで力も迫力も違う。


 幸いなのは、此奴がフェンリルへと至ってからそこまで日数が経っていない事じゃが、最終的に大人になれば、五龍に並ぶ化け物になる。


 化け物みたいな力を持つものなら、我の前にいるにはいるが、それでも奴に勝てるかどうか……。

 

 だが、銀髪の少女は何を思ったのか、「もしかして……」と言うと、フェンリルに向かって歩き出したのだ。


「御嬢様?」

「ん〜、でも……ん〜? やっぱり、そうだよね?」


 少女は頭を傾げ、何かぶつぶつと言っているが、何をやっておるのじゃ!


 すぐに戻らんと殺されるぞ!


 だが、そんな声は少女には聞こえてはいない。


 騎士達もこれ以上フェンリルを近付けさせれば、自分達の主君を標的にされる可能性がある事もあり、各々が魔法陣を展開する直前、フェンリルが銀髪の少女へ向かって一気に駆け出した。


 すぐさま、メイド三人と上空にいる竜二匹が戦闘態勢に移り、金髪の少女はラウを守るように正面に立つ。

 

 だが、「皆んな、大丈夫だから武器を下ろして」と言った事で、すぐに身を引いた。


 それだけあの少女を信頼しての行動とも取れる。


 じゃが、少女には見えぬ位置で武器や魔法ですぐに攻撃出来る準備をしている所は流石と言うべきか。


 それにしても、距離が近付くだけでアレが持つ圧倒的な高密度の不気味な魔力が我の身体を押し潰さんとする圧力を感じるが、あやつは何も考えておらんのか!


 奴らはフェンリルの恐ろしさをまだ知らんのじゃ!


『ま、待て! それは、お主が思っているようなものじゃ—————』


 けれど、少女は此方を驚いた様子で見ると、


「ありがと、心配してくれて」


 そして、我の頭にポンと小さな手を乗せ、「でも、彼女を怖がらないで。大丈夫。良い子だから」と花が咲いたように笑みを浮かべた。


 何とももどかしい気持ちを含みながら、仕方なく口を閉ざすと、我の考えをあっさりと裏切るように、黒のフェンリルは少女の数歩前で勢いを落とすと、ペタリと尻を地面に付けた。


 まるで、主人に構って欲しそうに喉を鳴らした。


『なっ!? 馬鹿な!? あのフェンリルじゃぞ!?』

「お、おい。何がどうなってる?」

「これは……、悪魔の主人か」


 そして、少女が手をフェンリルの頭に差し出すと、フェンリル自ら手のひらに頭を擦り付けたのだった。


 誰もがその光景に驚愕する中、メイドの三人と金髪の少女だけは誇らしげに少女を見る。


「やっぱり、あの時の子だよね? 良かった〜、当たってて。魔力だとそうだって言ってるんだけど、見た目変わりすぎじゃない?」

「ヴァウ!」

「何言ってるのか分からないけど、よしよし!」


 わしゃわしゃとフェンリルの首元を撫でまくり、遂には、おいで!と声を出すと、フェンリルに押し倒されてもみくちゃにされる始末。


「きゃあ! ちょっと、くすぐったいよ!」


 これが気高きフェンリルじゃと?


 これではただの……犬。いや、そもそもフェンリルではない可能性もある。


 一概には……。


「ブラックフェンリル? 何それ? フェンリルの希少個体? まぁ、なんかよく分かんないけど、カッコ良くなったんだね!」


 その言葉で我は考えるのをやめた。


 だが、我や絶対の信頼を寄せているであろうメイド達とは違い、勘繰るものはいる。

 

「どう言う事だ! 説明しろ! 帝国での件もお前の仕業かッ!!」


 長剣を少女に向け、怒鳴ったのは手を掴まれていた騎士だ。


 まだまだ未熟と言った所だが、こればかりは仕方ないのじゃろう。


 さて。彼奴はどう反論するのかと傍観者に徹しようとした直後、


「待て」


 と制止が掛かる。


「何故です! アレを見ればあの悪魔を使って我が領土を踏み荒らしたと言えるでは無いですか!」

「この子が貴方達が先に仕掛けてきたって言ってるんだけど」

「獣の言葉よりも人間の言葉の方が信用できないとほざくか! この化けも————」


 だが、その言葉が最後まで続く事は無かった。


 メイド達が凍えるような殺気を纏い出した時にアーネストが男をぶん殴ったのだ。


 男は派手に吹き飛び、地面に鎧を付けながら地面を転がっていく。


 数度地面の上を回転した後にはボロボロの騎士の姿があった。


「いい加減黙れ」

「ッ! し、失礼しました」


 流石に状況が分かっていると言うことか。


「部下が失礼をした。この詫びはいつか正式に書面をお送り致します」

「別に要らないけ……ど……どうしたの? ミリア?」


 すると、少女に近づいて耳元で何かを喋るミリアと呼ばれた金髪の少女。


 しばらくすると、少女はぎこちない笑みを浮かべ、「分かりました。謝辞を受け入れましょう」と似合わない言葉を発する。


「それは良かった。では、」


 と、アーネストが口を開いた直後だった。


 何か亀裂が入ったような金属音が少女の方から聞こえ、暫くすると、突如として発生した莫大な殺気が辺りを埋め尽くす。


 殺気に当てられ、気絶する騎士達をよそ目に、我も自我を強く保っていないとすぐに意識が飛びそうになる。


「こ、これは、一体ッ……!」


 アーネストもかろうじて耐えているようだが、その額は汗が吹き出している。


 何か騎士達が少女に何かをしたわけでも無い。


 あるとすれば、何かの金属音。


 すると、殺気に押し潰されそうになりながらも微かに見えた少女の視線の先には指に付けられた指輪があった。


 まさか、アレがッ。


 そう思った直後、ヒビが指輪全体に入り、パリンと音を鳴らして粉々に崩れ落ちてしまった。


「ッ!!」


 その時に見えた少女の顔に思わず我は息をするのを忘れてしまった。


 泣きそうな感情を必死に抑え込んだ激怒した少女の顔。


 あぁ、つくづく思う。


 我はこの少女を怒らせないで本当に良かったと。


 少女は「今から戻る。メイだけ着いてきて。後はミリア。任せたよ」というと、ブラックフェンリルの背中に弓を持ったメイドと少女を乗せ、凄まじい速度で走り去ってしまった。


 その後にすぐにミリアが他の二人のメイドに指示を出し、白髪のメイドが紅竜に乗り込むと少女の後を直ぐに追った。


 残ったのは呆然とする騎士達とミリア、イラつきを隠さずにいるメイド一人と我。


 その後、遠くから兵士達やローブを着た数人が駆け付け、ミリアの見事な手腕の元、話し合いを再開する。


 しかし、我は忘れられずにいた。


 少女が激怒する寸前に聞こえた何かが燃える様な音と微かに聞こえた泣きそうな誰かの声。


 『助けて! ラウちゃん! アミル先生が—————』とは一体、誰の声だったのか……。

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