第5話 祈りが夏響く
夏の叫び声がする
雑草だってなんだって
ぐんぐん伸びるんだよ
やっと家が片付いた。何かに気を取られるとちっとも進まない。もともと集中力が続かない。いつまでも引きずったり、すっぱり忘れたりする。強く何かに揺さぶられるたびに、流される。そうかと思えばほんの小さな揺らぎでどこからか知らない自分が顔を出す。途端に自己が暴れだす。
カランコロンと鳴る、アイスコーヒーが
もうなくなってしまう
氷は溶けてしまう
それだけ暑くなってきた
ドンドンと鳴る、花火が
もう終わってしまう
時間は過ぎていく
それだけ夜遅くなってきた
花火は好きだし花火大会はもっと好きだけど、あの音がなくなればもっともっと好きだ。まるでどこまでも響くよう作られたような、あの大きな音の衝撃。
大きな音が苦手、雷は嫌いだ。光は平気だけれど、次にあの音が来ることを知らせる。耳をふさぐ私はだいぶ子どもじみているが、しかたない。雷は落ちない、花火だって落ちてはこない、何も心配することはないよ。そう昔誰かに言われたけれど、私はいつも祈るように空を見上げる。どうか私の味方をして、雷は鳴らないで。だけど雷が鳴ると作物がよく育つらしい。通り過ぎた次の日はずっと、うんと成長するらしい。
風に吹かれて雨に濡れて、雷に撃たれてそうして伸びる草達を
おじさんが草刈り機で狩る
あの音にあの匂い
いつかの寝苦しい夜
ラジオ体操のために起きていた小学生の自分を思い出した
頭に響く声
今起きるから
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