第2話 夏祈りが響く

 体の奥まで響く

 打ち上がる花

 耳を塞いでも意味はない


 大きい音が苦手だけど花火大会は好き。みんな陽気でさ。酔っ払いがフラフラ歩いてたり、サンダルが片方だけ落ちてたりするでしょ?



 ◯◯◯◯◯◯



 アジサイが咲く夏のはじめ。まだ雨が降る日もあり、ジメジメしている。だから衣替えをしたものの肌寒い日や、冷房で体が冷える日がある。暦は7月になった。七夕が近い。笹を準備しているところが増えてきた。440円でたどり着ける駅、駅のホームから街が見下ろせる。花火大会の帰り道なんかはすごい景色になる。まだ夏は始まったばかり、花火大会はまだ先だ。歩みを止めてなんとなく願い事を見る。


 歌手になりたい

 らいだーになれますように

 どこか遠くに行きたい

 宝くじが当たりますように

 ここにあるみんなの願いが叶いますように

 交通安全、健康第一

 あの子と付き合えますように

 痩せられますように


 いろんな願い事のなかに私と同じ願いがあった。私は現実逃避がしたい。行こうと思えばいけるのにどうしていかないんだろう。結局のところ行きたくないんだろう。慣れ親しんだこの場所を飛び出すような勇気もない。飛び出したところで結局またここに戻ってこなくてはいけない。そのことを知っているから余計に嫌なんだろう。ただ願うだけ。


 駅を出て祈るような思いで空を見上げる。これから私がすることをどうか邪魔しないで。暗い雲は私の味方だ。でも変わりやすい夏の天気は私たちには決められない。

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