夏思いが咲く
新吉
第1話 夏願いが散る
風に吹かれて雨に濡れて
まるで花のように
願いは散っていく
願い事がかかれた短冊は、雨風にいいようにあそばれている。みんなの願い事が叶いますように、とかいてあった誰かの短冊が落ちている。
◯◯◯◯◯◯
どこか遠くに行きたい
いつだったか流行りの人魚と騒がれていた彼女にメッセージカードを依頼した。きれいな装飾、どこか壊れそうな薄桃色のそれを、そおっと飾っていた。私ははてなマークだらけの手紙を依頼と一緒に人魚に送った。あなたは本当に人魚なのですか?海には帰りたくないのですか?帰れないのですか?人魚は他にもいるのですか?思いつく限りの疑問をぶつけた。それなのに彼女は美しい字で丁寧な返事をくれた。
「私には魚の足がありませんし、年を取ります。私の涙にもチカラはありません。こんな姿で海に帰っても姉さまたちは気づいてくれないでしょう。本当に?と聞かれると人魚じゃないと答えるのが正しいような気がしています。どことも知らない遠い海から必死にもがいて今ここに立って歩くことができています。字を書いたりお話を考えるのが好きになりました。あなたの探す『どこか遠く』が見つかることを祈っています」
大掃除をしていた私は、すっかり手を止め読み返していた。そういう宇宙人や超能力者とか得体の知れない不思議が好きで、彼女のことも本当に人魚だと思っていた。返事が来て嬉しかったのに、こんなところにしまって忘れていたなんて。懐かしいなあ。
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