7.感情労働の難しさ
大学生の頃、社会学か心理学か何かで現代社会に溢れる「感情労働」の難しさを学んだことを思い出す。
感情労働とは簡単に言えば、自分にとって悲しい出来事が起きたその日でも、自分の感情と裏腹に笑顔でおもてなししなければならないような仕事を指す。
自分の感情と表さなければならない感情とどう折り合いをつけるか。
たしかその時は、その「難しさ」を学んだだけであって、どうしたらいいかという一律の答えなんて無かったように覚えている。
この時まさにこれに近いものにぶち当たっていたんだと、振り返れば今はわかる。
いや、この時だけではない。
メールの内容を考えて、信頼を得ようとしていたときからだ。
営業は必ずしも100%クライアントのためでは動けない。営業なのだから自社に利益を落とさないといけないし、そのために最短最良ルートを考えないといけない。
自社の負担、リスクは少なく、
かつクライアントの利益にもなる。
変動しない正解はないけれど、
不正解はある。
自社に負担が生じるときは、関係性は保ちつつクライアントに強く出ないといけない。
常に営業とクライアント担当者の関係には「利害」がついてくる。
通常の友人関係でも少なからずこれはついてくるのかもしれないが、ビジネスとなるとこれが顕著になる。
自分の感情とは裏腹に「利害」にどう影響するかで行動しなければならないし、
また相手の言動もこのフィルターを通して見なければならない。
友人として付き合えば、
良い味になるような人間性も、
このフィルターを通せばこちらの会社へ害をもたらすものになる可能性もある。
このフィルターが、
早い段階で出来上がりすぎていたのが、もやもやを消化するまもなく急成長させてしまった1つの原因かもしれない。
半年後には一人立ちを目標に走ってきた私は、社内でこなす仕事よりも、先輩たちのクライアントに向ける言動にとにかく注力した。
はじめは仕事が発生する瞬間。
仕事の相談が向こうから入るときはどんな会話をその前にしていたか、どんなトーンでどんな内容を話していたかできるだけ詳細に覚えて帰る。
その内容を思い出しては、あのときなぜこんな言い回しをしたのか、単に先輩の特徴なのか、それとも戦略なのか。
ひたすら分析して、仕事獲得に繋がる共通点を探した。
出来上がる広告物に対してもそうした。
クライアントとの打ち合わせ内容から、なぜこれが出来上がったのか。時にはクライアントの言っていたものと表面上全く違うものが出来上がっていることもある。
そういうときにはとくに
”なぜか”を突き詰める。
私の理解不足なのか。制作者の理解不足なのか。それとも戦略なのか。大抵は、戦略に基づいたもので、そうすることでよりうちの会社に対する評価が高まっている。
そうやって営業としての戦略にたくさん気がつくことで、
「営業としてどう動くべきか」
の判断基準は半年にしてはできすぎるぐらい"理論上"整っていた。
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