第25話 予想外の展開

結局俺たちは夕食の時間まで、クルのデザート試食会に付き合うことになった。

お腹いっぱいなのに、どんどん食べれてしまうクルの非常に美味な料理の数々。


「ではでは、夕ご飯の時間ですね!」


そして、そこから夕食に突入!


「クル、も、もう食べれないよお」


「私はまだ食べれますけど、カロリーがっ、カロリーが……」


弱音を吐くマキに、カロリーを気にするヒメ。

ふむ。カロリーを気にして食べないだけで、総量としてはヒメのほうが食べれるようだ。これは元の性別が影響しているんだろうなぁ。


うん、にしても普通の料理用ロボなら1日のカロリーとか計算して、すごい厳密な計算式より健康に最も良い量の食事のみを提供してくるんだが、クルは全くどうなってるんだ。

俺のオールディーな感覚に合わせてこういうAIを積んだロボットになったのだろうか。


「イチロー様、この間も申し上げましたが、あんまり見つめられると照れてしまうのです」


クルが首をフルフルさせながら言う。

おっとどうやら凝視してしまっていたようだ。


「ああ、ごめんごめん。クルってやっぱり珍しいなぁ、と思ってさ」


AIの緻密さとか、料理の方針とかね。


「ん。あー、はい。イチロー様が来るにあたって、カスタマイズされましたからね。えへへ。あはは。それでは、わたくしは失礼いたしますね!」


なんだか、何かをごまかすような感じで話しながらクルは廊下へと逃げて行ってしまった。

はて、何かあったのだろうか。

聞いてはいけないことを聞いてしまった?


「イチ兄、早く食べちゃお……時間空けると食べれなくなりそう」


マキは俺にそう言ってきた。

もう一緒にいる作戦はよくなったのか?


「私、残そうかしら……というかマキ、あなた全然カロリー気にしてないようですけれど、太りますよ?」


「ダメだよ、ヒメ。クルの心がこもってるんだからしっかり食べないと。僕は絶対完食するんだ。カロリーなら運動して消費すればいいし」


全く違うことで、困っているマキとヒメ。

……ヒメよくそんなに食べれるな。デザートも一番食べてたぞ。


「運動なんてっ。あなたと違ってか弱い乙女の私に運動ができると思いますか?」


「嫌いなだけでしょ? 社交の場でのダンスとかなら踊るから、イチ兄と踊ったらどう?」


「はい?」


おっと急にこちらにボールが飛んできてしまった。

ちょっと待て、ダンスだと?

俺は全くできないぞ。


「わお、それいいですね、マキ。私も久しぶりに踊りたくなってきました!」


「じゃあじゃあ、明日三人でダンスパーティーしようよ。今日は結局邪魔しちゃったし、日中は3人で過ごすのでいいよ、僕」


カロリー消費からなかなか内容が飛躍しましたね。

あのさ、俺、


「ダンスなんて……」


「大丈夫!」


双子が、一気に詰め寄ってきて、二人で俺の手を取る。


「ダンスなら、私が一から教えますわ」


「衣装なら、僕が用意するから。たくさん、ね?」


おいおい、ちょっと待て、いやな予感しかしないんだが……。


『パーティーの料理はわたくしが用意しますからねー』


どこから聞いてたのか内線で間発入れずにコメントしてくるクル。

そもそもの発端はお前の料理なんだがな。


「クル、パーティー料理はカロリー低めでお願いしますよ。じゃないと本末転倒になってしまうので」


『了解しました、ヒメ様!』


おいおいおい、どんどん話が進んでくぞ。


「じゃあ、明日に備えてエネルギーつけないとね。さ、食べよ食べよ」


マキに促されて、俺はスープに口をつける。

先ほどまでの甘いものに対比して、絶妙なスパイシーさ香辛料のバランスに食欲をそそられる。ここまで食べてどうしてまた食べれるんだ。


俺たちは完食し、ダイニングを後にする。

明日に備えて寝るということで、夕食の後の時間はフリーになった。


あのさ……ほんとに、俺踊るの?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る