第13話 仲直りにはやっぱり
「それでは引っ越しパーティーを開催します!」
「い、いえーい!」
妙にテンションの高いマキに俺はなんとか声を合わせていく。
だって、協力するって言っちゃったし。
次の日のお昼、俺とヒメはマキにリビングに呼び出されていた。
マキの持つ箱には大量のきらきらとした飾りつけ達。うん、なんか楽しそうな見た目のきらきらだな。
「実はこれ、イチ兄のためにリアル素材を取り寄せました!」
ばばーんと箱を前に突き出し、どや顔で言ってくるマキに俺は少しだけ感心する。
昨日の今日でこんなパーティー用の準備をするなんてすごいくないか。
それにエコの進んだ現代じゃ、紙製品なんて普通じゃなかなかお目にかかれないはずだ。準備が早いだけじゃなくて、金かかってんなぁ。
マキは俺とヒメに、飾りつけの入った箱を1つずつ渡してくる。
「はい、これイチ兄。これはヒメの」
で、自分はきらきらとした目をさせて飾りつけを再開している。
うーむ、マキがこんなにパーティー好きとは思わなんだ。
ちょっと引き気味。
ヒメはというと、マキに渡された箱を静かに受け取ると(今日の服装はいつもより控えめでふりふりの少ないドレス)、無言で飾りつけを開始した。
むーん、すねてらしゃる?
それとも怒ってらっしゃるのか……。
俺は、ヒメの様子を横目で観察しながら飾りつけをしていたが、ふと気になって尋ねる。
「マキ、飾りつけ以外のパーティーの予定は?」
「ん? 飾り付けるのがパーティーでしょ」
「いやいや、なんかケーキ食べるとかいろいろあるでしょ。プレゼント交換とか?」
マキはきょとんとした顔をしている。
「イチ兄、パーティーで楽しいのは飾りつけだよ。パーティー本番で並ぶのはつまらない大人、おいしいけれど冷めた食事。あと、プレッシャー。始まる前のほうが楽しいんだから、飾りつけが本番だよね」
なるほど、お前らはそういう世界で生きてきたんだな。
それはちょっと寂しいだろう。
俺はマキの言葉を聞いてしょんぼりしてしまう。
二人は俺の暮らしてきた世界とは全く違う場所で生きてきた。
そりゃそうだ、だって当たり前にセクハラされて性的対象に見られていたような生活なんだぞ。普通なはずがあるわけない。
かといって、俺の感覚が普通だなんて百歩譲っても言えないが。
でもさ、ちょっとくらい。
俺との生活で新しいことに出合ってもいいんじゃない?
ではでは、俺様が、ヒメの件の解決の前に、一肌脱ぎますか!
「ヒメ、マキ。俺が庶民式パーティーの形を教えてやろう」
腕まくりをした俺は、キッチンへと歩みだす。
料理用ロボットが俺の行動を止めようとするが、俺にはそんな制止は聞かぬ。
俺はロボットの腹に停止用コードを打ち込んでやると、ロボットはしゅうんと、おとなしくなった。この世界最大の料理ロボメーカーの停止コードのパターンは2056パターン。俺は大体顔を見ればぴたりと停止コードを言い当てることができる。
世界で認められているロボット、メイドインジャパン。
俺のちょっとしたかくし芸。
さてさて、ロボットも止めたことだし。
「レッツ、クッキング!」
引っ越しパーティーの開始です。
ただしオールディーで。
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