第4話 少女(男の娘)とおしゃべり
やっと頭のショートが治り体が動かせるようになったのは、新居と言われた場所についた後だった。
すでに目の前にいた二人の少年少女。どうやら双子らしい二人は、りむじんからすでに降りてしまっていた。
俺は会長と社長の目線に耐えかねて、泣く泣く、俺を包み込んでくれた座席さんと離れると、りむじんを降りた。
「おおおお!」
りむじんを降りると、目の前にはきれいな庭園。
そして西洋風の豪邸。
俺がその美しさに惹かれてふらふらと庭園の中に入っていったところで、後ろでぎーがちゃん、と言う音がする。
うん、お約束、引っかかっちゃうね俺。これは故意じゃないのがつらい。
「え、え! ちょっとなんで締めるんですか」
閉ざされた入り口の向こう側に立つ会長と社長。
にやにや顔の二人。
うん、この二人は俺に何をさせたいんだ全く。
「君には跡取りを決めてもらうまでそこで生活してもらうよ」
うん、またハモり。仲のいい親子だね。
俺がそんなことを考えているうちに二人はどこから呼んできたのか、つるりとしたカプセルに乗っていってしまう。
そしてりむじんがぶーんという音を立てて去っていく。
さようなら、俺の夢の乗り物。
そして、あの二人は帰りはりむじんには乗らないのだな。
俺は少しだけ、門の扉を開けようとがたがたする。
想像通り開かない。
がたがた音はなるが、押しても引いても開いてくれる気配はない。
「はー、これはまたまた覚悟を決めるしかないかぁ」
俺はため息をつきつつ、後ろを振り向く。
目の前に広がるのは、本当に素敵な庭。
草花、水、ツタの生えたアーチ、調和のとれた石像……まるで映画の世界とでもいうべきな空間が広がっていた。というと、仮想世界っぽいけど普通にリアルだ。
ちょっとたぶん庭園の花とか遺伝子操作されて、城もデバイスが組み込まれているだろうけど、うん、一応リアルだろう。
「お兄様の考えてること、たぶん間違ってますよ」
俺は突然聞こえた美しい声にビクンと体を反応させる。
なんだ、初めて聞いたぞこんな声。
美しい小鳥が鳴いているような、耳心地が良く、守ってあげたくなるような庇護欲を掻き立てられる女の子の声。
この声、もしかしてさっきの少年が?
俺が声がしたほうを向くと、何が人生バグっているのか、美しい男の娘がそこにいた。
「お兄様?」
そう微笑む顔も美しくて、俺の頭は一気に恋に落ちてしまう。
ただ下半身はついてこない。
うん、何だろう。
バグっているのは俺かもしれない。
俺は冷静になるためになんどかスーハースーハーと深呼吸をすると、少女に向きなおって答える。
「間違ってるって?」
よし、不審者じゃない。大丈夫。
少女は俺の問いにくすりと笑うと、両手を広げてその場でくるり、と一回転した。
「この庭も、お城も全部天然もので遺伝子操作もなしです。このおうちは、お兄様と私、マキの3人で暮らすために、お兄様のためだけに作られたもの。可能な限りお兄様の好みに合うように作られてます」
回る姿も絵になる。俺は少女に見惚れてしまう。
だが、聞き逃せない言葉もある。
「3人で暮らす家なのに、俺のためだけに作られている?」
双子のもう一人の名前が判明したがそれはまあおいとく。あとで本人から改めて聞こう。
「はい、もちろんです。お兄様にとっては、好きでも何でもない変わった双子のどちらかと一緒にならないと出られないのですから当たり前でしょう?」
ぱちくりと純粋な目で見つめてくる少女に俺はどぎまぎしてしまう。
うん、脳判断かわいすぎ。
ていうか、俺こんなかわいい子に自分で変わってるって言わせてるとか罪悪感半端ないんですけど。というか、変わってるのはオールディーな俺であって、この少女じゃない。この少女はむしろ現代では非常に普通なはずだ。
うん、かわいすぎることをのぞいて。
「かわってなん……」
俺が少女に君は変わってない、そう伝えようとしたその時。
「マキ」
少年が少女をかばうように立つ。
燃えるような赤い瞳に俺は、魅了されてしまう。
うん、そしてごめん、うずくわ、下半身。
「こんなけだものになんか近づくんじゃない」
マキと呼ばれた少年は、明らかに俺に敵意を向けて木剣をこちらに向けていた。
危ないね!
というか、今書いてて思ったけど、少年少女性別グルグル。
難しい、この双子……。
見た目の通り、とりあえず書いていきますが、木剣を向けられた俺は果たして無事生きていられるのでしょうか。
叩きのめされそう。
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