25話 空気を。
只今、社内は大忙し。
誰も無駄口を叩く暇もないほどに。
私もその一人。
私だけじゃない。
周りの全員がPCとにらめっこしている。
聞こえる音はタイピングの音のみ。
自分のことで手一杯。
普段はゆるい雰囲気の社内も
今は殺伐としている。
定時を回り、残業タイムに突入。
だんだんと集中力が切れてきている。
しかし
ここで踏ん張れば早く終わる。
全員が同じ気持ちで手だけを動かしている。
その一心で黙々と仕事を続けていた矢先。
「あー、こりゃ孫の手も借りたいよなー。」
プツン。
全員の集中力が切れる音がした。
そして
仕事そっちのけで
全員の気持ちが一つになった。
課長。
それは猫の手ではないか。
全員の頭はそれでいっぱい。
孫の手だと
ただ背中がかゆい人。
または
孫に仕事を手伝わせるスパルタおじいちゃん。
どちらかである。
しかし
目の前の現実を見直す社員たち。
忙しい現実に目を背けてる暇などない。
そう言わんばかりに仕事を再開。
集中力を再度高める。
「課長。背中かゆいんですか。」
またまたプツン。
そう言ったのは
同期随一の天然、もとい馬鹿な女。
佐々木。
この状況でこれを言える奇人だ。
「は、佐々木。誰もそんなこと言っとらんだろう。俺は猫の手も…。」
課長が気付いた。
それに私たちも気づいた。
そして
課長は私たちの微妙な空気にも気づいてしまった。
重い沈黙。
殺伐とした空気が一変。
もっと厄介な空気になってしまった。
佐々木だけが未だ気づかず。
お前は幸せもんだよ。
その後の仕事は予想以上に時間がかかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます