23話 ごくり。

今月ピンチ。




もちろん財布事情のことだ。




今月は飲み会に参加しすぎた。

無駄な買い物も多かった。


あと一週間を千円以下で乗り切らなければならない。




いい大人になっても

財布事情には悩まされる。

大人になったからこそなのか。


節約生活を始めよう。










「中村。今日呑みに行こうやー。」










同期からの誘い。

私が決心を固めた時に限ってこういうことが起こる。


正直、行きたい。

酒を呑みたい。


しかし

行く金がないんだからどうしようもない。



さりげなく断ろうとした時。











「中村さんも行くんですかー。」











後輩からのダメ押し。


やめてくれ。

本当は行きたいんだ。

当たり前だろう。


金がないのだから

私の決心は揺らぐにも揺らぎようがない。



後輩の前じゃ金がないとも言いにくい。


今日は予定がある、と

適当な理由をつけて泣く泣く断った。




同期と後輩は断った後も

少し粘って誘ってくれた。


その粘りは私に金があるときにお願いしたかった。









帰宅。


冷蔵庫からもやしを取り出し

塩コショウなどで炒める。


これにライスをつけて

今日の晩飯出来上がりだ。



この生活を、数日間続ける。


今頃、楽しく呑んでいるんだろう。

同期たちの姿を想像しながら

私はもやしを頬張る。




ラインの通知が鳴る。


私を誘ってくれた同期だ。












『おつかれー。この前中村が紹介してくれた店うまかったぞ。ありがとうな。今度は呑みに行こうな』












わざわざ連絡してくれる

同期の優しさに感謝だ。


少しは心が楽になる。


ラインの通知がまた鳴る。










『そういや今日、課長も来たんだよ。なんか機嫌よかったのか、全員分奢ってくれたで笑』

















財布の余裕がないと

チャンスも回ってこないようだ。



行けばよかった。




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