10話 整理整頓。
趣味はなんですか。
この質問は様々なシーンで聞かれる。
初対面であっても、何度かあった相手でも
年齢性別関係なく話が広がりやすい。
そして
私はその質問にこう答える。
読書とか。
あ、あとは野球観戦ですね。
これまた定番の返しだが
あながち嘘ではない。
本はよく読む。野球も大好きでよく見る。
しかし、本音では答えてない。
もし本音で答えるなら
クロスワードパズル。
こう返されて話を広げることができるのは、同じ趣味の方だけだろう。
経験上そうなのだ。
たいていは
「へえ。周りにはいないですけど、いいですね。」
「パズルとか私も好きですよ。」
「珍しいね。いや、いいと思うよ。」
と、ふわっとしたお世辞。
または
「じいさんかよ。」
「あ、うちのじいちゃんよくやってるわ。」
「じいちゃんと気が合いそうだね。」
おじいさんネタだ。
だから
趣味を聞かれても本音は言わないようにしている。
この趣味を言うことは、相手を困らせてしまうことになる。
あくまでも善意だ。
休日はクロスワードパズルにひたすらに打ち込んでいる。
スマホで好きな音楽を流し、準備を始める。
クロスワードパズル雑誌、鉛筆数本、消しゴム、そしてお茶2ℓ。
あとは電動の鉛筆削り。
そして、辞書。
それらをテーブルに準備したら、私の趣味の時間が始まる。
私にとってクロスワードパズルの醍醐味は、目に見える問題を解く達成感だ。
まるで学生時代、必死に数学の問題に取り組むような気分。
授業とは関係なくても、それがテストに出なくても関係ない。
とにかく難問に挑戦する、そして、それを解けた時の達成感。
社会人になってからは味わえない気分だ。
あ、私はゴリゴリの理系だ。
クロスワードパズルといっても種類がたくさんある。
一般常識を試すものや季節ネタを盛り込んだもの、計算や発想力を必要とするものから非常にマニアックなものまで幅広くある。
それらを一冊の雑誌で楽しむことができるのが、クロスワード雑誌である。
マニアックな問題だとよく知らない知識が出てくる。
そんな時、スマホには頼らない。
辞書だ。
スマホで調べた方が楽なのだが、そこは辞書。
辞書の方が自分で調べた達成感が大きい。
ただそれだけの理由。
難問たちに
己の頭脳と辞書のタッグで立ち向かう。
まさにボクサーとセコンドだ。
休日は朝から晩まで難問たちと戦っている。
食事の時間以外はずっと鉛筆を握り、頭をひねらせている。
食事の時には解けなかった問題を必死に頭でころがしている。
そうして一日が終わっていく。
至福の時間だ。
なぜこんなにも長々と趣味について語ったか。
それは共有したいからだ。
さてなにを。
『母帰ります。部屋の隅に積んであった古雑誌は捨てておきました。ちゃんとごみの日に捨てないとたまってくから気を付けるんだよ。 母より』
会社のデスクで
このラインを受け取った私の気持ちを。
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