5話 気づいちゃった。
会社までは歩く。電車は利用しない。
自分ルールだ。
以前は一駅分、電車に乗っていたのだが、最近は歩くようにしている。
理由は単純。
太ってきたからだ。
社会人になって四年。
学生時代は運動する機会もあったのだが、就職してからはほぼない。
スポーツどころか、走ることさえない。
そりゃ太る。
だから歩く。
痩せるため。
そうは言っても、食事制限や激しい運動などはしていない。
まずは小さいことから。無理したって続かない。継続は力なり。
自分にそう言い聞かせている。
本日は晴天なり。
だから私は歩くなり。
始めた当初は歩くのが辛かったが、
最近は苦に感じなくなってきた。
習慣として体になじんできているのだろうか。
会社に着く時間も早くなってきている。
うん。いい傾向だ。
今日は仕事の調子もよかった。
午前中に抱えてた仕事は思ったよりもスムーズに片付いた。
昼食はお茶とサンドウィッチ。
イェス、ヘルシー。
午後は自分の仕事に加え、後輩の仕事のサポートまでする余裕があった。
後輩からの感謝。気持ちがいい。
我ながらいいことをした。
後輩よ、よきにはからえ。
定時で終了。
気持ちがいい一日だったなり。
だから帰りも歩くなり。
家に到着。
ただいまー。
もちろんおかえりは帰ってこない。
一人暮らし。
そのことが寂しく感じる時もたまにある。
しかし今日は違う。
そんなことが気にならないくらい気分がいい。
大の大人がルンルンだ。
よし。
この気分のまま、シャワー浴びて飯食って寝よう。
ルンルン。
ルンルン。
早速洗面所に行き、服を脱ぐ。
ズボンを脱ごうと、腰元のベルトに手をかけた。
あれ、ベルトしてない。
不覚にも今、この瞬間まで気づかなかった。
気づかなかったことに気づいてしまった。
今の私にベルトはいらなかったようだ。
その事実は
私のルンルンを
簡単にバイバイさせた。
そして、腹はパンパンだった。
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