4話 信頼するよ。

カフェ。初入店。

メニューを開く。もちろん悩む。


初だから。



隣の席には若いOL三人組。

ワイワイしながらキャッキャしてる。

スマホのインカメ&加工アプリが大活躍中だ。



リーダー風の女がアプリを通していないドヤ顔で語り始める。



「とにかくココは夏野菜カレー!」


私の耳が隣の席に向く。



「安いのはもちろんだけど、とにかく野菜が甘いの!カレーにもよく合うんだわ、これが!」



ほほう。

気になるな。



隣の席に三人分の夏野菜カレーが届く。

ナイスタイミング。


食べ始める。三人。


「うわ!野菜あまい!」

「カレーはそこそこ辛いんだね!でも、野菜おいしい!」

「でしょ!ココ来たらこれしか食べないもん!」



満足げな二人と自慢げな一人。




あまい、うまい、そこそこ辛い。

あまい、うまい、そこそこ辛い。




そう、呟きながらスマホをいじるOL三人組。


あまーい。

うまーい。

そこそこ、からーい。



いつのまにか隣の席は沈黙していた。

呟くのはスマホの中でやっているらしい。


「ご注文はお決まりですか。」

ウェイターが来た。



メニューを見直す。

ついでに隣の席も。


沈黙。


よし。日替わりランチで。









カフェ。再び入店。

メニューを開く。再び悩む。



隣の席には

若いOL三人組はいない。



代わりにそこにはスーツを着た男。

特徴はぽっちゃり。恰幅がいい。フォルムが丸い。

以上。




その男のテーブルには料理がもうすでに届いている。




カツ丼。




カツ丼なんてあっただろうか。

メニューを再確認。



あった。

ドリンクメニューよりも後にあった。

小さいスペースに手書きで。



私がメニューを確認していると、

隣の男は出されたカツ丼をすぐさまかきこんでいた。


かきこむ。

頬張る。

箸が止まらない。


一言も、うまいとは言わない。

表情も変わらない。



とにかく箸が止まらない。




完食。一息つく。水を飲む。

表情は変わらないが、口がゆるんでいる。



ひとこと。



「よし。行くか。」





エネルギーチャージを終わらせた男はさっそうと店を後にした。






「ご注文はお決まり…」



カツ丼、大盛りで。




完食。



うまい。

ふつうにうまい。



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