3話 育ちは育ち。

ファミレスにて。ランチ。

一人。いつも一人。


会社の同僚は昼休憩をコンビニで済ませるやつが大半。

私はファミレス。


だから一人。



私はドリンクバーやコーヒーのおかわりで粘ったりはしない。

さっと食事を済ませ、出る。




私が店を出ようとした時、窓の外にいる外国人親子が目に入った。


父&娘。



父は、長身かつ細身。髭の似合うダンディイケオジ。

ハリウッドスターにしか見えない。洋画から出てきてしまったのだろうか。


娘は、まさに人形。ブロンズの髪に整った顔立ち。

彼女が笑うだけで、周りの人は顔がほころんでしまいそうだ。


まさに完璧親子。

外国人が多くなった今の日本でさえ、あの親子はダントツで目立つ。




誰かを待っているのだろうか。

二人で楽しそうに会話している。窓越しで何を話しているかは聞こえない。聞こえたとしても、ネイティブの英語なんて聞き取れるはずもない。



しかし、一生見てられる。うん、見てたい。

率直な感想である。




ずっと見ていたいが、食事も済ませたので出ることにした。

その親子を視界に入れながら会計を済ませた。



外に出る。



会社に戻ろう。



ふと…

いや、意識的にさっきの外国人親子の方に目をやる。


まだ楽しそうに会話中。


うん。

午後の仕事の活力がわいてきた。





ブロンズ髪少女はポケットからキャンディの包みを出した。

そのキャンディの包みをハリウッドパピーに誇らしげに見せる少女。


ハリウッドパピー、微笑む。

ついでに私、微笑む。


ブロンズ髪少女は包み紙を開ける。

中からキレイな白いキャンディが出てくる。


その白いキャンディをハリウッドパピーに誇らしげに見せる少女。


ハリウッドパピー、微笑む。

ついでに私、微笑む。


少女はキラキラした目でその白いキャンディを太陽にかざし、宝石のように楽しんでる。


私はキラキラした目で見ている。純粋に。


ひとしきりその宝石を楽しんだところで、少女はようやく口に入れた。







「これめっちゃ辛いやんけ!ぺっ!オトンがうまいって言うたんやで!」





少女はキャンディを口に入れた瞬間、苦悶の表情を浮かべ、その宝石を地面に吐き出した。


そして、ハリウッドパピーに向かって、嵐のごとく文句を浴びせかける。





関西弁で。





ハリウッドパピーも娘の文句に対して、猛反論している。






コッテコテの関西弁で。






あ、国産だ。

ハリウッド産どころか、純国産だ。



その後の仕事は思ったより進まなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る