第2話:俺が…佐吉?
二階に上がろうとした時、後ろから「澄哉‼︎」と声をかけられた。
「あぁ、おばあちゃん。どうしたんだい?」
声をかけたのはサワばあちゃんだった。
実は家にはサワばあちゃんにはミワという妹がいて、俺たちはサワばあちゃん、ミワばあちゃんと呼び分けていた。…だけど、去年ミワばあちゃんが癌で死んでしまった。それからおばあちゃんは何かしら落ち着きがないなと思っている。
俺は氷嚢を脱いでいたジャケットの下にさりげなく隠しておばあちゃんと向き合った。
「澄哉、颯輝がまた早引けしたって聞いたけど…何かあったのかい?」
おばあちゃんはそう言い、心配そうな顔をした。
うぅ〜ん、これは言っておくのが吉かなぁ…それとも言わぬが花、かなぁ…
そう思って俺は取り敢えずジャケットの下から氷嚢を出して
「颯輝は軽い熱中症になって先生に、念のため早めに帰って休んでおくようにって言われてたんだ。心配かけたくないから、親父と母さんには秘密にしておいてくれ」
と言った。心苦しいが嘘も方便だ。
おばあちゃんは、「そうかい…颯輝は色々と無理ばっかりしているようだからねぇ…後で水菓子を用意しておいとくよ」
と言って奥に行った。
「(おばあちゃん、嘘をついてごめん…)」
そう心の中で謝って俺は二階の颯輝の部屋に入った。
「(颯輝…どこにいるんだ…?)」
俺は、眠っている颯輝そっくりの少年の側に座って、ただ考えることしかできなかった。
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