第3話 銀髪の幼女

「きゃーっ、可愛い!」

 鏡に映る銀髪幼女に、悲鳴を上げでしまう。


「バカなのこの子、ねぇ、バカなの」

 傍らでアンジェラの声、その脇では神父様が苦笑していた。


 鏡に映る幼女が、どうやら、私らしい。

 ストレートの長い髪、透き通るような白い肌、青い瞳、白く質素な患者衣と相まって天使のように見えた。


 興奮したせいだろうか、銀髪から燐光が溢れ出す。

 魔力量には自信のある私だが、これは、人の域を超えている。

 スーハーと深呼吸をし、クルリと身を翻し、ニッコリと微笑み神父様に手を差し出した。


「何なの、この手は!」

 ペチッとアンジェラに手を叩かれた。

 この人は、ちょっと私に厳しい、今朝のあの一件をまだ根に持っているらしい……。


 モジモジて内股になり、後ろで手を組みながら、

「お小遣い頂戴」

 と首を傾げた。


 神父様も男だ、きっと、お小遣いをくれるに違いない。


「おバカ!」

 アンジェラに今度は額を小突かれた。


「えーーっ! お小遣い頂戴!」

 ゴツンと頭にゲンコツ、

「悪ふざけもそこまでだ。今日は、もう寝なさい」

 神父様は、笑いながらそう言うと病室から出て行った。

 続いてアンジェラが、アカンベーをしながら部屋を出て行こうとする。


「ねぇ、お姉ちゃん、待って!」

 私は彼女の服の裾を慌てて掴み引き留めた。


「シスターアンジェラ、彼女の側に居てあげなさい」

 神父様は振り返りアンジェラの肩をポンポンと叩いた。


「しようがないわね、今日だけだからね」

 私は彼女の腰に手を回し抱きつき礼を述べた。


 それにしても、なんだかよく分からない事態に巻き込まれたようだ。

 とても不安でたまらない。


 夜は怖い。

 一人はやだ。


 あの晩を思い出してしまう。


 私が死んだ、あの夜の出来事を……。


 ……。


 死んだ?

 私が?


 何で?


 ベットに横になると、アンジェラは椅子に座り私の手を握り見守ってくれた。


 優しい人……。

 病室の時計から秒針が時を刻む音が聞こえる。

 いつしか、アンジェラは、私に覆いかぶさるようにして眠りについた。

 彼女の重みは心地良く、私に安心感を与えた。

 規則正しい、穏やかな彼女の寝息に耳を澄ませている内に、私も、夢の世界へと眠りについた。

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