第4話 勘違いが加速する

「何言ってんのあんた!」


「どうせ、何もかも発覚しているのでしょう? ならば、告白は早いほうがよろしくて!」


 だから誤解を招くような言い方やめてって!


「こ、告白……」

 あーまた、石倉さんにスイッチ入っちゃったじゃん!


「それじゃあ、二人は(交際していることを)認めるの?」


「ええ、(ビートボックスの特訓を)白状しますわ!」


 いやいや、ありえないって! 論点ズレてるから!


「(ビートボックスの)経験豊富なトワコさんから、手取り足取りプレイを教わっていましてよ!」


「(イケないことを)色々教わっているのね!」


 神妙な面持ちで、石倉さんは手帳にメモを取る。

 取らなくていいから。


「あのね、石倉さん、わたしらが二人きりでいるのは、言い出せない事情があって。時期が来たら話すね」


 こうなったら、どうにかして石倉さんの誤解を解かないと。


「そうだな、文化祭の後なんてどう?」


「文化祭の後になったら、お話ししてくれるの?」


「うんうん」


 説明する、といえば石倉さんも納得してくれるはず。


「いいよ、事後処理だし」


「事後、ね」


 どうしてそこに食いつくのかなぁ、石倉さんは? ムッツリなの?


「というわけで、密着取材とかは、勘弁してほしい」


「それは心得ているわ。なにせ、言質は取れたから。私だって、お二人の恋路を邪魔するほど、野暮じゃなくってよ」


 誤解されたままだが、まあこの場は収まったようだな。


「あとは、文化祭を待つだけね。文化祭のステージで交際宣言なんて、胸熱だわ!」


 どうやら、なんらかの物語が石倉さんの脳内で完成したらしい。


「この件に関して、これ以上は言及しません。お二人とも、お忙しい中ありがとう。では」

 清々しい笑顔を残し、石倉さんは帰っていこうとする。


「お待ちなさい」

 どういうわけか、サオリさんは石倉さんを呼び止めた。



「石倉さん、最後に一つだけ言っておくわ。わたしとトワコさんは、魂で繋がっているの!」



「あ……」


 わたしは、始めてサオリさんと話したときのことを、思い出す。

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