第3話 ナイショの関係
「あのね、石倉さん、わたしたちは別にむぐうう!」
弁解しようとしたら、横からサオリさんに口を押さえられた。
「なにすんの」
「トワコさん、ここはワタクシが説得してみせますわ!」
あんたの言動が不安だから、わたしが話そうとしてるんだけど!?
「わたしが説得しようか?」
「貴女の場合、うっかり秘密を話してしまう可能性がありますわ」
そうだ。ビートボックスを披露するのは、文化祭までお預け。
文化祭実行委員にすら、「音楽によるパフォーマンスです」とごまかしている。
ビートボックスのネタを明かしてしまうと、
「全校生徒を相手にした、サオリさんのサプライズ」
は失敗に終わるのだ。
「ねえ、二人は実際、どんな間柄なの?」
「お答えしましょう、石倉さん。ワタクシ、トワコさんとは……淫らな関係ですわ!」
「ちょちょちょサオリさん!」
わたしは、サオリさんの腕を引いて、説教する。
「ワタクシは札付きのワルです、と言いたかったのですが」
「そのまま言えばいいじゃん! なんで誤解を招く言い方しかできん!?」
ほら、石倉さんが混乱しちゃってんじゃん!
「そうですの? 淫らなことはワルの代名詞と思っていたのですが」
その判断基準はどこから? 熱っぽさからですか?
「でもこの間、ハダカのお付き合いはしましたわ!」
腰に手を当てて言うことかそれーっ!
「確かに、一緒にお風呂は入ったね。うん」
汗をかいて一緒に銭湯へ入ったけれど、それだけである。
「あれが銭湯なのですね。何もかも目新しかったですわ!」
電動マッサージにオッサンのように酔いしれる、サオリさんのはしゃぎっぷりったらなかった。
「まあ、このように、ちょっとした秘密の関係ですわ。お分かり、石倉さん?」
「そっかー。一緒にお風呂に入る仲ってことは、分かったわ」
どうにか、石倉さんは納得したみたい。
おそらく、まだ誤解は解けていないけれど。
「じゃあ、筧さんとはどこまで行ったのかしら?」
「そうですわね。難易度Bあたりじゃないでしょうか!」
ドヤっていうことじゃねーよ!
「Bって……そんなに奥深くまで……」
あーもう。
完っ全に、わたしとサオリさんがハダカのお付き合いをしていると思われてるよー。
「そこまでのめり込むなんて、二人の接点はなんだったの?」
「先ほどから、あなたはワタクシたちの話を聞いて、どうなさるおつもりなの?」
「サオリさんと友達になる方法を、取材していたのよ」
サオリさんと仲良くなりたいって人は、他にも大勢いる。
その指標になれば、って思ったらしい。
「それで私、ずっとサオリさんを陰ながら追いかけてたの。そしたら、えらいものを見てしまって」
ひょっとして、ビートボックスを練習していたことが、バレてしまったかも知れない。
「どうする?」
「わたくしに考えがあります」
自信満々に、サオリさんは石倉さんの前に立つ。
「だったら、わたくしたちを密着取材なさいな!」
えーっ!
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