──第50話──

「ねえ!セシルとテトがネロと出会った時の話聞きたいなー!」


運ばれて来た料理を食べながら、ラルフが獣人二人に声を掛けた。


「俺達だって、ルディとラルフに色々と聞きたいぜ!なぁ、テト?」


「そうだね。故郷がどんな所なのか、とか、今までどんな魔物と戦ってきたのか、とかね。本当に聞きたい事がたくさんあるよ!」


「一気に聞かれても答えられないよー?」


ラルフがセシルとテトと仲良く会話をしている。

俺はそれを聞きながら運ばれて来た料理に舌鼓したつづみを打つ。


なにこれ!?

うまっ!!

肉が良い感じだ。

ソースも甘酸っぱくてうめぇ。

何の魔物の肉だろう。


「どっちも聞きたい事がありすぎるから、“フォルテ”で決めるのはどうかな?」


「お、良いねぇテト。勝った方が一つ質問をするって事だな。」


「そう言う事!」


テトが懐から取り出したカードを机に置きながら説明を始めた。

ラルフは興味津々にその言葉に耳を傾けている。


「これは二人で遊ぶカードなんだ。例えば、僕とセシルが遊ぶとすると……まずは五枚のカードを手元に持って、そこから始まるんだ。今は説明だから表を向けてるけど、本番は隠してね。」


テトが自分の前とセシルの前に五枚ずつカードを並べる。

その絵柄は五種類あった。

テトは一番端に置いたカードから順に説明する。


「まずは、これ。王様のカードで一番強いんだ。それから貴族のカード。王様より弱いけど他のカードよりも強い。そして……」


説明をまとめると

王様>貴族>騎士>農民>庶民

の強さがある。

ただ、庶民は反逆をしたとして王様に勝てると言うルールだった。


「それぞれ一枚決めて机に置く。強い方のカードを出した方が勝ち。これを手持ちのカードが無くなるまでやって勝った回数が多い方が勝ちなんだ。ラルフもルディも分かった?」


「なんとなく分かった!ね、ルディ!!」


「ん?うん。」


ごめん、食べるのに夢中で話半分だったわ。

お腹が空いてたんだもん!

しょうがないよね、美味しいからさ。

皆、食べないなら、それも食べていい?


「それじゃ、まずはどっちからやる?」


テトが俺とラルフに聞いてきた。


いや、俺はあんまりルール覚えて無いから……


そうだ。

さっきラルフに話をぶん投げられたから…


「まずは、ラルフからやるよ。俺はまだ分かって無い部分もあるし。」


俺も話をぶん投げてやろう。


「えー!?そうなの!?」


驚きの声を上げているが、ラルフの顔は笑顔だ。

本気では嫌がっていないのが、ありありと分かる。


最初はセシルとラルフで勝負する事になった。


「俺は、最初のカードはもう決めてたんだっ!」


セシルは配られた五枚のカードの一枚を伏せて机に置いた。

その様子を見ていたラルフはどのカードを出すか悩んでいる様子だ。


「決めるの早いねー!」


「俺は大体このカードを最初に出すって決めてんだよ。」


「そうなんだ!最初はやっぱり強いカードを出した方が良いのかなー?」


「さぁな?人それぞれだし、弱いカードを後に残したく無いって言って先に弱いカードを出すヤツもいるな。」


「そうなんだ!……ねぇねぇ!何のカード選んだの?」


「言う訳ないだろ!」


セシルとラルフは笑いながら会話を続けていく。


「ねぇねぇ!最初はやっぱり真ん中の方が良いのかなー?それとも、王様?」


「……さぁな。それも良いんじゃないか?」


「……うん!決めた!」


ラルフは一枚のカードを机に置き、テトの合図でカードをめくる。


セシルが貴族。

ラルフが王様。


ラルフの勝ちだ。

セシルは笑ながらも少し悔しそうに言葉を放つ。


「最初は取りたかったなー、くそ。何で分かったんだ?」


「セシルは分かりやすいよね!」


「……何がだ?」


「最初、僕が弱いカードを出させようとしたけど、王様を出すかもしれないってなった時に動揺してたもん!」


「俺、ポーカーフェイスには自信があったんだけどな……」


「あははははは!」


ラルフ……もしかしてセシルにカマかけてたのか……?


「よしっ!次だ!次っ!」


セシルが勢い良く声を発し、次の対戦に移る。


睨み合う事数分。

セシルは机の上にカードを置く。

ラルフもそれに続きカードを置いた。


テトの合図で再びカードはめくられる。


セシルが王様。

ラルフが庶民。


反逆が決まり、ラルフの勝ちだ。


「なんでだっ!?反逆なんて、そうそう決まらないぞ!?」


「あははははは!ちょっとした賭けだったんだけどね!それに、もし負けても一対一だから問題無いからね!」


「……何で、庶民のカードを出した?」


「え?だってセシルは最初に勝ちたかったって言ったでしょ?なら四分の一で勝てる王様のカードを出すんじゃないかなって!それに、庶民のカードを序盤で出すのはかなりの賭けだからね!」


「そこまで読んでたのか……全く恐れ入るぜ。」


その後も会話を楽しみながら対戦が続き、結果は四勝一分でラルフの勝ち。


出したカードの順番は

セシルが庶民、農民、騎士。

ラルフが騎士、農民、貴族。

となっていた。


「じゃあ!約束通り、ネロと出会った頃の話を聞かせてよ!!」


「ああ、そうだな。って言っても大した話じゃねぇけどよ。」


ラルフの促しで、セシルはネロとの出会いを語り始める。















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