──第49話──
買い物の後は、ネロとラルフに連れられ街を案内してもらった。
フードを被っている方が目立つんじゃないかとも思ったが、冒険者の中にはそういう格好をしている人もいるので、周りは気にもしていない様子だ。
外が薄暗くなり、お腹も空いてきたので、ネロが用意してくれた
いつの間に用意してたんだろ。
俺、多分、ネロがいなかったら路頭に迷ってたかも……
街中は夜は夜で昼間と違う賑わいを見せていた。
俺達は人混みに紛れながら宿に辿り着いた。
「ここの宿はエルフが経営してる。宿を選ぶなら、人間の宿よりエルフの宿を選んだ方がいいしな。」
宿の中に入りながらネロが口を開く。
「なんで、エルフの宿の方が良いんだ?」
俺の質問にネロ、そしてラルフまでもが驚きの声を上げた。
そんなに驚く事か?
「ルディに常識を求めた俺が悪かった……。」
「ねー……。」
え!?
常識なの!?
いやいや!
聞いてない!聞いてない!!
二人してそんなに呆れないでよ!?
後で説明する、とネロが言うので、
ベッドが四つ並んだ、少し大きめの部屋は無駄なモノが無くキレイに整頓されている。
各々好きに自分のベッドを選び、そこに腰を掛ける。
俺は、ネロとラルフに持たされていた二人の荷物を【収納】から出し、投げ渡しながら先程の話を聞く。
「それで、何でエルフの宿を選んだ方が良いんだ?」
『神狼族とエルフは協力体制にあるんだよ。』
言語を変え、ネロは説明をしてくれる。
『神狼族は、魔物や魔族とかが暴走しない様に注意を払う…のは知ってるだろ?』
『いや、知らん。』
なにその話。
初めて聞きますが?
ネロは呆れながらも言葉を続ける。
『あー……そうだな……。神狼族が見るべきモノは魔物、魔族、闇落なんだよ。それで、エルフが見るべきモノが人間、獣人、自然な訳。混沌とした世界にしない為に俺達がいる。ここまで良いか?』
『……多分?』
『見守る種族が短命だと変化に気付きにくくなるから、俺達は長命になったって話、らしい。後は、竜族がいるが……竜族も長命だが、この世界が最悪の事態になった時に『ゼロ』にする役目を持っている……らしい。』
『さっきから『らしい』ばっかじゃねぇか。』
『俺だって歴史に詳しい訳でも、その時代に生きてた訳でも無いからな。詳しくは長老にでも聞いてくれ。』
『……それで?協力体制ってのはなんなんだ?』
『エルフは神狼族を認識しているんだよ。人間や獣人に〈闇落〉が現れた場合、その対処を神狼族がするからな。』
『エルフがしたら良いんじゃないのか?』
俺の質問に答えたのはラルフだった。
『人間と獣人は、本能で動くよりも感情で動く事が多いんだよねー!エルフはそこに紛れているのに問題を起こしちゃったら駄目でしょ?それに、〈闇落〉の判断はエルフには出来ないからねー!!』
『俺達が魔物を狩るのは問題にはならないのか?』
『魔物達は強いモノに殺られるのが当たり前だからね!面白いのが、人間はその逆の行動が多い事かな!』
『……逆?』
『弱い人を助けて、力をつけた強い人を攻撃するんだよ!一人の力じゃ負けちゃうけど、人間は数が多いから一人に大人数だと強い人が負けちゃうんだよね!本当に面白いよっ!!』
それは面白がっては駄目だぞ、ラルフよ。
とりあえず……
神狼族とエルフは仲良しって事なのかな。
「そろそろ飯にするか。」
「賛成っ!!」
ネロの言葉にラルフが勢いよく食い付く。
「俺はちょっとここの主人に話があるから、ルディとラルフで先に食べててくれ。」
「分かった。ネロの分も注文しとこうか?」
「いや、いらねぇ。適当にするさ。」
三人で部屋を後にし、階段を下りた。
宿の一階は食堂になっていて、泊まっている人も、そうで無い人も食事を楽しむ事が出来る。
空いてる席を確保すると、ネロは宿の主人の所へ向かって行った。
ラルフと一緒にメニューを見ながら、二人してどれを頼もうか悩み、食事を二、三品をお店の人に注文をした。
すぐに来た飲み物を飲みながら料理を待つ。
「あれ?お前、ラルフじゃないか?」
何か聞き覚えのある声が聞こえ、声のする方をみると、そこにセシルとテトがいた。
「えーっと、セシルだよね!それとテト?僕の名前覚えてたんだー?」
「当たり前だよ。所で、そこのローブの人は?」
「え?ルディだよ??」
テトの質問にラルフが答えると、セシルとテトの瞳が俺に向けられたので、少しフードをずらして挨拶をする。
「どーも……?」
「お前ルディだったのか!そうだ、一緒食わねえか?なぁ、テト。」
「そうだね、ルディもラルフも良いならお邪魔しても良いかな?」
一緒に食べたい、という雰囲気も隠さずにセシルとテトは言葉にする。
こういう時って断りにくいんだよな。
別にどっちでも良いんだけどさ。
俺は少し困ってラルフに助けを求めると、ニコッと笑顔を返される。
「僕はどっちでも良いよー!」
ラルフも丸投げかよ!!
俺も丸投げしたかったっ!!
「あー、じゃあ、一緒に食べる?って言っても俺達はもう注文しちゃったんだけどさ。」
セシルとテトは笑顔で頷くと、近くの使っていない椅子を持って来て一緒に座る。
大きめのテーブルを選んだつもりが、少し狭くなってしまった。
セシルとテトも注文を終え、飲み物が運ばれると全員で乾杯をして話を弾ませる。
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