──第44話──
ユニコーンに声を掛けられた俺。
何、この状況。
誰か、お願い。
説明求ム。
困惑している俺をユニコーンはじっと見つめて来る。
どうやら、俺の返答を待っている様子だった。
『え、と……そうだけど。何で知ってるの?』
『大精霊から話を聞いた。』
なんで!?
え?
どれ!?
だれ!?
大精霊に知り合いが多くて分からんわ!!
しかも、大精霊から何で何の何を聞いた!?
あ、【鑑定】を使えば良いのか!
すぐにユニコーンを【鑑定】する。
……サンルークか!
白馬に光ってめっちゃ似合うな、おい。
サンルークなら大丈夫だ──と思う。
幼少期、女性陣(?)からの無茶振りはトラウマ級だからな。
また何かやらかして来たのかと一瞬身構えてしまった。
俺は周りにバレない様にゆっくりと深呼吸をし、気分を落ち着ける。
混乱と困惑でパニック寸前だった。
危ない、危ない。
『えー、と……俺に、何か?用事でも……?』
気分を落ち着けたとは言え、頭はすぐに回転してくれない。
俺の
『ただ、
感謝の意味があるお礼の事??
『……何で俺に?』
『この森にいた魔物を、ルディと言う人間が精霊の元へ送ったと聞いたのだ。』
…………。
分からん!!
俺の頭が悪いのか!?
ユニコーンの言葉が足りないのか!?
どっちだ!?
『もう少し詳しく聞いても……良い、かな?』
俺の言葉にユニコーンはゆっくりと頷くと説明を始めた。
『元々この森にいた多くの数の魔物が数年に渡り、殺される訳でも無く人間によって連れ去られて行った。何匹かは戻って来たが、その様子は変わり果て、何か……人間に怪しい実験でもされたのだろう。その者らは
『……それが、連れ去られた魔物だ……と?』
『そうだ。見覚えの無い顔もあったが……。あの時戻って来た者らと同じ様子だった。私達はあの者らを楽にしてやりたかったが、戦力が無く、見る事しか出来なかった。……それを、ルディと言う人間がその者らの魂を精霊の元へ送ったと知らせを受け、あの者らを楽にしてくれたのだと──感謝を伝えたかったのだ。』
『……俺だけの力じゃない。皆の力があったからだ。』
『神狼族達か?』
『……何で知ってる?』
神狼族はその存在を人間に知られない様にしていた……はず……。
その為にチョーカーで人間に擬態している。
あれ?
人間じゃなくて魔物は知ってるのか?
俺の考えが分かっているかの様に、ユニコーンは言葉を発した。
『我ら魔物は神狼族が恐ろしいからな。匂いや感覚で分かるのだ。』
俺はネロとラルフを交互に見た。
恐ろしい……?
えー……?
どこが??
何となく納得がいかない俺をユニコーンは苦笑し、言葉を続ける。
『本当はあやつらも礼を言いたいらしいのだが、神狼族が居る上に、ルディのレベルも高い。近付こうにも近付けない様だ。』
あ、周りにいる魔物達はそういう事だったのか。
別にこの魔物達の為にやった訳じゃないんだけどな。
それより、気になるのが
『魔物同士でも助け合ってるんだな。』
なんか、ほっこりとするな。
『いや、そんな事は無いぞ。』
……ほっこりさせてくれよ。
否定してきたユニコーンに俺は疑問に思う。
『でも、仲間を心配してたんだろ?』
『同じ目的を掲げたに過ぎん。魔物にも家族や友人がいる。その家族や友人が……殺されたと思っていた者があの様な姿になり、人間に使われているのをみた者は数多く……狂う寸前だった。それ程の数が狂えば、この森の秩序は乱れ、全滅していたであろう。それをルディ……と神狼族達があの者達を楽にしてくれたお陰で、この森の秩序は保たれた。』
『……。』
『この森の危機が去り、我が身は安全となった。…………この世は弱肉強食だ。森の危機が無くなったのであれば、いつもの生活に戻っていくだろう。弱き者が強き者の血肉となる生活に、な。だが、今回の件で人間への恨みはより一層深くなっただろうな。』
なんか、すっげー話が重いんですけど。
俺には抱えきれない重さです。
……お返しします。
思考を放棄します。はい。
俺が思考を放棄したのが分かったのか、ネロが言葉を発する。
『言いたい事は理解した。』
理解したの!?
ネロすげーなっ!?
俺は半分も理解出来てないぞ!?
『それで、聞きたい事があるんだが、良いか?』
『なんだ。』
『『人間』に連れ去られ、『人間』に何かされたせいで魔物がおかしくなった、って事で間違い無いのか?』
『我らはそう認識している。』
『……そうか。それで、この付近を通って行った、おかしくなった魔物はルディが解放したって聞いたんだな?』
『その通りだ。』
『……ありがとう、助かるよ。』
『我らの方こそ感謝する。……あぁ、忘れる所であった。ルディ、これは感謝の印だ。受け取ってくれ。』
『……これは?』
俺に渡されたのはミサンガの様なモノだった。
ユニコーンは俺が受け取るのを確認してから、口を開けた。
『大精霊から、礼をしたいならコレを渡すと良いと言われたのだ。それは私の
『そう……ありがとう……?』
ユニコーンは満足そうに頷くと、その場から走り去って行った。
話し込んだせいか、空は暗くなり、俺達はここで一夜を過ごす事にした。
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