──第43話──
里を出てから三日目。
太陽が出てから俺達は支度を整え目的地に向かう。
道中、昼食を済ませ、今は目の前に広がる木々を眺めていた。
『何か、いつも見てる木と違う感じがするな……。』
俺がぽつりと言葉を溢すと、ネロがそれを拾う。
『場所によって育つ種類が違うんだろうな。とっとと行くぞ。』
そう言うと、ネロは目印の付いた木の間を歩いて行く。
俺とラルフもそれに続き、獣道を歩く。
木や草が
面倒臭そうだけど助けてくれるネロに、笑い声を上げながら手を貸してくれるラルフ。
二人の手を借りながら、俺は森を抜けていく。
しばらく歩いて行くと、拓けた場所に出た。
『ここが大体この森の中間地点だな。』
『まだ中間かよ……』
『あはははは!ルディはもう疲れちゃったー?休憩にする?この森を出たらもう着くからねー!』
『休ませて、もらえると……嬉しい、かな。』
ネロやラルフはスイスイ行くのに対して、俺は慣れない場所に右往左往してるだけだった。
なんか……情けないな、俺。
俺は大きくため息をついてから腰を下ろす。
ネロとラルフも、俺が座ったのを見ると近くに集まり腰を下ろした。
『あんまり長い時間は休憩出来ないぞ?』
『……なんで。』
『ネロは心配してるんだよ!暗くなっちゃうとルディがヘマして沼に落ちちゃうかも知れないからね!』
『心配なんざしてねぇよ!』
ラルフの言葉に反射的にネロは否定を口にする。
ラルフ……確かに沼にはまっちゃうかもしれないけどさ。
もう少し言葉をオブラートに包んでよ!
オブラートを沼に捨てた言葉だぞ!
オブラートは沼に捨てちゃいけません!!
俺は風を感じながら二人の掛け合いを聞いていると、不意にネロから声を掛けられた。
『そういや、聞いてなかったけど。何の為にリシュベル国に行くんだ?』
『そうそう!僕も気になってた!!』
え。
二人とも理由も分からずに来たの?
お人好し過ぎない??
いや、俺も何で行くのか、あんまり分かって無いんだけどさ。
俺は里を出る前に、今まで起きた事を思い返し、とりあえずの目的は決めていた。
『里を襲った〈闇落〉もどきの原因を見付けようかなって。』
カルロスがわざわざ何も関係無い〈闇落〉もどきを寄越すのか……。
そして、再び同じ厄災が起こると言った直後に〈リシュベル国〉に行けと言われたんだ。
なら、何かしら関係があるんだと思う。
つーか、それしか手掛かり無いし。
俺の言葉で腕を組み、何か考えてるネロに対し、ラルフは俺に疑問を投げ掛けてくる。
『〈リシュベル国〉に行ったら原因が分かるのー?』
『それは、分からん。でも、何かしら掴めるとは思う。』
意外にも俺の言葉にネロが賛同を示した。
『そうだな。……前は興味が無かったから、その……〈闇落〉もどきの情報を集めて無かったんだが……〈リシュベル国〉でそれらしき情報は耳にした事がある。そういう目的なら俺は情報を集めてみるか。』
『ありがとう。ネロがやってくれるなら心強いな。』
『……ルディに素直に言われると気持ち悪いな。』
『んだとぉ!?』
人が素直に感謝してるのに!?
なぜ気持ち悪がられるんだ!?
『あはははは!ルディもネロも素直じゃないもんね!』
『『ラルフもだろ!』』
『えぇー!?僕は素直だよー!?』
昨日聞いた『人間の嘘』の話を思い出すと、素直とは言えないと思う。
嘘を言わないけど、笑って流してる時もあるからな。
ラルフってもしかして、この中で一番腹黒…………
よし、考えるのやめよう。
ラルフはラルフだ。
それで良い。うん。
三人で談笑している間もずっと聞こえていた葉の擦れる音と魔物の足音。
会話も区切りが良いので二人に疑問をぶつける。
『なぁ……ネロ、ラルフ。……何かこの森の魔物の様子、変な気がするんだけど。気のせいか?』
『ここら辺の魔物は比較的弱いから近寄って来ないのはいつも通りなんだけどな。……確かに何か変だな。』
『そーだねー!魔物が逃げないで、一定距離から見てきてる?感じだよねー。何でだろう?』
『まぁ問題が無いんなら、気にしないでも良…………ネロ、ラルフ。』
俺が返事をする途中、【索敵】に猛スピードで俺達に向かう反応があった。
俺達は立ち上がりそれぞれ
向かって来た反応の正体はすぐに分かった。
俺達の目の前で止まるその魔物。
額の中央に鋭く尖った一本の角を持つ白馬───ユニコーンだ。
『珍しいな……ユニコーンが姿を現すなんて……』
ネロは驚きを隠しきれていなかった。
『そんなに珍しいのか?』
『あぁ、ユニコーンは昔…………人間に乱獲されてからは滅多に姿を現さない幻の魔物って聞いた。姿を見付けても、警戒心が強く、すぐに逃げられる。』
『すごーい!きれーだねっ!』
『ラルフ、油断するなよ?ユニコーンはそこそこ強いんだからな。』
『……なぁネロ、ユニコーンから敵意を感じ無くないか?』
目の前に姿を現したユニコーンからは敵意を感じられなかった。
もし、敵意があれば、あのスピードのまま攻撃を仕掛けて来てもおかしくは無いはずだ。
俺達はすぐに動ける態勢をとり、ユニコーンの次の行動を待つ。
ユニコーンは俺達を見回し、俺をその瞳に映すと声を掛けてきた。
『……お前が……ルディと言う人間か?』
え?
ん?
はい?
何で俺の事知ってんの?
んで、二人してそんな不思議そうな顔で俺を見ないで。
俺にユニコーンの知り合いはいないから!
逆に俺が、何で幻の魔物が俺の事を知ってんのか聞きたいくらいだから!!
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