──第30話──
久しぶりに三人が揃っていた。
『ところで、ネロはどんな仕事してんだ?』
『えとねー、ネロは情報集めかなっ!』
ゴチンッ!
俺の質問に答えたラルフはネロから鉄拳を食らって涙目になっていた。
『いたーいっ!何すんのー?』
『ラルフ、お前バカだろ!』
『えぇ!?バカじゃないよ!?』
『仕事内容はあんまり口外するもんじゃねぇっつーの!』
『えぇー、ルディになら良いじゃん!』
ワイワイとネロとラルフが口喧嘩を始めてしまった。
そこで、俺は手を上げ二人を止める。
『さっきまでラルフから〈闇落〉の人間の話を聞いてただけだぞ?あと、ラルフの仕事内容を少々……』
俺の言葉を聞きネロはキッとラルフを睨むとラルフはしょんぼりと項垂れてしまった。
そんなラルフに対し、ネロは諦めた様にため息を吐くと言葉を発する。
『……ラルフだから、しょうがねぇか……次から気を付けろよ。』
『うぇー……はーい。』
『話が途中だったから凄く気になるんだけど。』
『はぁ……まぁ、いいか……。今、人間の方で〈闇落〉らしい情報がいくつも出ているんだよ。』
『そんなに頻繁に人間が〈闇落〉になるもんなのか?』
『ネロだって話してるじゃん!!』
横槍を入れてきたラルフに再び鉄拳が落ちる。
同じ場所だから痛いだろうな……。
ネロは何事も無かったかの様に話を続けてくれた。
『んー……どうなんだろうな。人間の感情なんて俺は知らん。…………〈闇落〉の人間が出た時、〈闇落〉の人間が他の人間に捕まって牢屋に入れられて解放される事もあるんだ。そうなると、また被害が出て〈闇落〉予備軍が出来てしまう。だから俺達がその前に〈闇落〉を
『〈闇落〉予備軍?』
『〈闇落〉は理性が無い分、本能のまま動きやがる。特に人間の場合は質が悪い。んで、その〈闇落〉にやられた人間に近い奴が予備軍に入るな。』
『へぇ……それで、最近おかしいってどういう事?』
『〈闇落〉がいないんだよ。……いや、〈闇落〉らしい情報はいくつも出てるんだが、見付からないんだ。人間に捕まっているのかとも思ったが、どうもそうじゃないらしい……。ジョセフおじさんにも時間がある時に協力して貰ってたんだが、何にも分からず終いなんだ。』
ネロは両手を広げ、降参のポーズをとった。
俺が知らなかっただけで、二人は色々と頑張ってるんだな。
俺も負けない様に頑張らないと。
『何でだろうな?』
『さぁな。人間に〈闇落〉がいないんなら俺達には関係無いからどうでも良いさ。』
二人の仕事の話を聞いていると、里の外が騒がしくなっている事に気が付いた。
複数の魔物達の声が広間にいる俺達の所まで聞こえてくる。
『何かあったのかなー?』
ラルフが小首を傾げながら声が聞こえた方向に顔を向け、俺とネロもそこを見る。
鳥達が一斉に飛び立ち、空には無数の黒い点が飛び立っているのが見えた。
地面を蹴る魔物の足音と雄叫び。
まだ遠い様だが胸騒ぎがした。
『ネロ、ラルフ。ちょっと俺、見てくる。』
『俺も行く。』
『えー!?僕も行くー!!』
急ぎ、三人で里を出ようとすると、傷だらけのジョセフがこちらに走ってきていた。
『え!お父さん!?どうしたの!?』
『おお、ラルフか……ネロにルディも。無事だったか……』
『ジョセフおじさん、何があった?』
俺がジョセフに声を掛けたが、それに対する答えはもらえず
『すまんが、すぐにライアとカインを広間まで呼んできてくれ。長老の所にいるはずだ。』
『分かった、俺が行こう。』
『頼む。』
ネロがその場から駆け出し、俺とラルフはジョセフを手助けして広間まで連れていく。
ジョセフがここまでやられる事が今までにあっただろうか。
ジョセフの強さを知っているからこそ、今、この現状が普通で無い事を示していた。
早く【治癒】をしたかったが、広間に先に連れていけと言われたので、ラルフと協力し、急いで連れて行った。
広間に着き、岩を背もたれにしジョセフを座らせる。
俺がジョセフに【治癒】をかけていると、ネロがライアとカインそして長老を連れてやってきた。
『ジョセフ、一体何があった?』
長老がジョセフに問い掛ける。
ジョセフは俺の【治癒】を受けながら口を開いた。
『俺にも分からん……。狂っていないはずの魔物が大量に狂った様になっていた。』
『じゃ、じゃが、それでジョセフがそこまでの怪我をするはずがなかろう?』
『そいつらの進行方向を遮ろうとしたんだが、俺には目もくれず……しかも敵意も無く、目障りな虫程度にしか攻撃をしてこなかったんだ。何とか止めようとしたんだが……結果この様だ。』
ライアの質問に自重気味にジョセフが笑うと、ゆっくりとカインが口を開けた。
『……その魔物達の目的地は分かるのか?』
『あぁ、この里だ。』
『なんだと!?』
『まだ片言でも言葉を発している魔物もいたからな。…………里を攻撃する、と。』
ジョセフの言葉で俺の心臓は一際大きく打ち鳴らしていた。
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