第6話

男が死ぬ前、男と友達の間に入った時のことを思い出していた。スローモーションだったのはその時からだと思う。


直接的な点に置いて、私が無実なのは確実だろう。

挑発しないように穏やかにしたり、かと言えば反対に少し怒らせたり、わざと男が私に掴みかかってこようと仕向けたりしただけ。ただ一つ言うのであれば、友人想いの友達が唯一の存在である私を助けない訳がないと思っていた程度だ。


友達が男を突き飛ばした時に"偶然"足を引っ掛けてしまっただけ。わざわざ男を階段の前まで誘導したことも、恐怖でいっぱいだったであろう友達は気付きようがない。


そうしたら、呆気なく男は死んだってだけ。思いの外、友達は一切私を責めずにいたから罪を被ってあげたに過ぎない。

捕まらない自信はあったんだけど、ムカつくし丁度良かったからわざとバラしただけ。正直友達の許可なんてどうでも良かった。まさか皆もサンドバッグが欲しくて犯人探しをしてるだなんて思わなかったけど。


私は何も悪くない。だって悪いのは友達に乱暴しようとした男と、男を殺した友達、そして偽善者振って犯人を決めつけて自殺に追い込むクラスメイトだから。そんな連中なんて、非難されて当然でしょ?


人殺し、人殺し、人殺し……。


何処からか、またあのコールが聴こえた。てっきりまだ耳に残ってしまってるのかと思ってゲンナリしたが、自分が発しているのだと気付くと私はホッと胸を撫で下ろして眠りに着いたのだった。

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She has a sandbag. 蛇穴 春海 @saragi

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