第5話
私が飛び降りた後、下等生物達はそれぞれ互いに防衛した。
「自分は悪くない」
「あいつが悪い」
「犯人なんだから死んで同然」
誰も私が話した真実には触れようとしなかった。しかしそれは突如ネットの海から浮かび上がってきた。警察を動かす程のものではなかったのだが、真犯人が自白したことによりそれは確実なものとなった。あれは正当防衛が招いた事故であり、しかも殺したのは私ではなかったと。
真実を眼前に突き出されて流石に防衛出来なくなったのだろう。内側から溢れ出す「何も悪くない人を自殺に追い込んでしまった」という罪の意識にどんどん押し潰されていった。なんせ探偵気取りをしていた彼女さえも真犯人を突き出そうという気にはならなかったという。やがて、日々増加していく罪悪感に耐えかねて私の様に飛び降りて死んだ奴もいるらしい。
私の場合、落下地点を見定めてから飛び降りたに過ぎないのだが。
「ザマアミロ」
見舞いに来た友達が話を終えて帰った後、これからトラウマに振り回されていく皆を想像してはそれに唾を吐いた。
勝手に憔悴されちゃつまらない。早く退院して早くクラスに戻らなくちゃ。
右脚に付けられたギブスを優しくなぞり、私はゆっくりと目を閉じた。
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