第4話

結論から言うと、私がどれだけ真実を話そうが無駄だった。終わらないコールのせいなのか、自分は正しいという歪んだ自信のせいなのか、私が何を話してもコイツ等は聞く耳を持たなかった。クラスメイトだと思っていたものは意思疎通の出来ない下等生物でしかなかった。

そんな環境に耐えられない友達はずっと泣いていた。

そして私はとうとう、堪忍袋の緒が切れたのかも知れない。何故かふっと吹き出したきり笑いが止まらなくなってしまったのだ。あまりに突然だった為、辺りは驚きコールはピタリと止んだ。これ幸いと私はろくに喋れないまま彼女の名前を叫んだ。続けて今此処にいる、友達を抜いた全員の名前を叫んだ。自身でも奇行だと感じる程だからか、誰も口を挟もうとしてこなかった。


「人殺し。私のことを人殺しって言うけど、お前等だってこれから私と同じ人殺しになるんだよ。この人殺し」


都合が良いことに此処は屋上だ。フェンスを乗り越えた。案の定友達以外は誰も止めようとはしない。お願いやめてと泣き叫ぶ友達を適当に宥めて、私はポケットから携帯電話を取り出した。

片手でフェンスを掴み、空いた利き手で携帯電話を操作しながら、今から私が落ちるであろう場所を見下ろした。所々に芝生や樹木がある以外はコンクリートで出来ており、五階建てのこの屋上からそこへ叩きつけられたら死ぬのは確実だろう。

最期の足掻きも確認も終え、携帯電話を放り投げた。


「じゃあな、人殺し」


そして私は皆の前で飛び降りてやった。

独り私の味方をしてくれた真犯人を残して。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る