第3話

──男が私に掴みかかろうとした。もしもその時、男と私の位置が反対ならば男は死なずに済んだかも知れない。

大して勢いのないトンという音、目の前に突き出された両手、唖然とした表情で後ろへ倒れていく男。全てがスローモーションかの様ようだった。


咀嚼をする様に、数秒かけて私は今何が起きたのか、そしてこれから何を行うべきかを考えた。


「大丈夫、心配しないで」


私はまず、自分の両手を見つめながらガタガタと震える友達を強く抱き締めた。


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