警察署にある取調室で、若い女が警察官の質問に対して、供述している。年のわりに窶れ、力なく言葉を紡いでいる。
「私は、あの子の父親にDVを受けていました。……夜な夜な起こされて、撲られたり、沈められたり……別れた後も、また私のところにくるんじゃないかと、夜も眠れなかった」
「だからって子供にも同じことをしたんですか。あの子って、自分の子供ですよ。そんなことが許されるとでも思ったんですか?」
「だって、あの子の顔があの人とそっくりで、見るだけで、思い出してしまって……吐き気がしました。それに、何してもヘラヘラ笑ってて、気味が悪かった。そこも同じで……とてもじゃないけど、あの子と一緒にいられない」
「
みたいですよ。部屋にあった絵日記にあなたの似顔絵が描いてありました。哲弥君はあなたにただ愛してほしかった。なのに、虐待されて……その気持ちがあなたにわかりますか?」
そう尋ねられた女は髪をかきあげて、静かに涙を流したが、その表情からは感情がまったく読み取れなかった。
「…………わかるかって……どうなんでしょうね。わかるかどうかも、今の私には、わからないです。だって、私はてっくんじゃないんだもの」
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