家は大学病院

第1話 顔を知らない家族

生まれてから、数十年。今は院内学級に入って勉強している。

もう何年も居るせいか、色んな人の名前を覚えてしまう。

たまに、治療してくれる先生(医師）を間違えて「父さん・母さん」と呼んでしまうことがある。

まあ、無理はない。僕には本当の家族は居るが、面会には滅多に来ない。だから、本当の親の顔は愚か名前すらを知らない。

どこかで会っても顔が分からないから、素通りしちゃうだろう。

だから、先生を間違えて呼んでしまうのだ。

「いっそのこと、先生の家族にでもなっちゃおうかな？」と冗談をぶっ飛ばしたこともある。

その時はさすがにドン引きされたけど。

食事の時は、半ば強引に同じ病室の患者さんと共に食べている。理由は一人ぼっちで食べているのが嫌だから。

外の情報は大体が同じ病室の患者さんから得て退院した時に他の人に置いてけぼりにされないように努力はしている。