第22話魔物狩りですよ

 〜森の中〜


 二手に分かれてから2時間程たったか、日は完全に登り森の中の魔物も活動を始めていた。


「お兄ちゃん、氾濫ってなんですか?」


「あーそういや説明してなかったな、魔物の繁殖期に上位種が増えたりその魔物を統率する王が生まれたりして魔物が溢れ街を襲う時期があるんだそれが氾濫、ティナ達が倒したゴブリンロードもその王の1種だな、アスカそっち行ったぞ」


 何気ない会話をオークの群れの中でしていた。


「よっと、ジルさん、ゴブリンロードって人の言葉喋るんですか?」


 木の上から矢を放つアスカがゴブリンロードのことを思い出して聞く


「人の言葉喋るやつもいるっちゃいるがほとんどは喋れないな」


「ふーん、じゃああの時のはその1部か」


「次行きますよ、少し多いので気をつけて」


 エルナトが倒し切ったのを確認して次の場所に向かう

 少し進むとさっき見たような魔物が姿を見せる、離れたところで様子見をする


「またオークですか」


「いや今回はオークだけじゃないな上位種と王も混ざってる、あの鎧をつけてるやつが王だ」


「名前は確かオークロードだよね、危険度はA、ゴブリンロードと違い魔法は使わないし動きは遅いけど攻撃力と体力が凄まじく高い」


「そうだ、俺でも一撃まともにくらったら危ないからな、お前らだと即死だ、絶対に相手はするな周りのオークだけ倒せばいい」


 ジルでもまともに喰らえば危ないのに援護なしで大丈夫なのかと心配になる


「わかりました、足止めはしますか?」


「頼む」


「はい、【ダイヤモンドダスト】」


 私が放った魔法がオーク達の足と手を凍らせる


「今だ!行くぞ!」


 ジルの合図で一斉に駆け出す


「行っくよー【貫通】【増殖】【誘導】」


 アスカが放った矢が雨のように降り注ぐ、それでも半分以上も残ってる


「さすがアスカ嬢、僕も負けてられないね

【カオスバレット】」


「あ、それって」


 殿下はまわりに浮かせていた球をオークの頭に的確に当てる、私がゴブリンを倒す時に使った【アイスニードル】のやり方に似ている

 これにより残ったのは上位種であるハイオークとオークロードだけになった。


「一昨日のティナ嬢の魔法を参考にさせてもらったよ」


「やっぱり」


「よし、あとは俺の役目だな」


 ハイオークを大剣でなぎ払いながら前に進む、1歩進む度に空気が重くなる


「はっ!ティナの魔法凄いなこんなやつも動けなくするとは今回は楽できそうだ」


 手足が凍り上手く動けないオークロードに剣を振り下ろす。オークロードも必死にガードしようとするが間に合わない。


 ズガーン


 その重い一撃は地響きと共に地面の形をも変えた。

 オークロードは真っ二つに割れその身につけた鎧のようなものは砕け散っていた


「一撃かよ凄いな」


「LS冒険者さすがとしか」


「剣の練習中にあんなの来なくてよかったです」


 ジルの姿を見てそれぞれ感想を述べる、いや練習中来るわけないけどね、残ったハイオークを倒して素材をしまう、その後もオーガ、森オオトカゲ、ゴブリンと色んな魔物を倒していった、王個体はいなかった

 そして4時間経過


「そろそろ休憩にするか」


「はい、そうしましょうこれ以上は僕が死にます」


 ジルの提案に全力で賛成するエルナト、戦ってはないとはいえ常時能力を使っていたんだから当たり前か、ジルは収納魔法から石を取り出し色んな方向に投げた


「何投げてるんですか?」


「今投げたのは結界魔法が刻まれた石でな石と石を繋ぐように結界を貼るんだ、敵意を持ったやつはここに入れない結界だ、効果は1時間ほどしかないが十分だろ」


 最後のひとつを投げ終わると石が光だし結界を張った

 みんながそれぞれの場所で腰をつくとティナは収納魔法から夜のうちにエイルと一緒に作ったサンドイッチを取りだしてみんなにわけた


「美味しい」


「うめぇーなティナ、いつ覚えたんだ?」


「暇がある時に料理長さんに頼んで教えて貰ってたんです」


 まぁ半分嘘なんですけど


『ワンワン!』


「へ?」


 鳴き声に反応し振り向く、そこにはさっきまでいなかった黒毛の小さな犬?がいた。


「どこから入ってきたんだろいなかったよねってどうしたのティナちゃん」


 犬?を見つめながらプルプルと震える私を見てアスカが声を駆け出す。


「か……」


「か?」


「可愛いーなんですかこの子はすごく可愛いです。撫でても大丈夫ですか」


 ぴょんぴょん跳ねていると犬?は撫でてくれとこっちによってきた、私はよってきた犬?を撫で回す。


「はぁ〜自分からよってくるなんて可愛すぎです。連れて帰りたい」


「おい、ティナちょっと待てそいつは」


 ジルが慌てて駆け寄り少し観察する、正面からまじまじと見て声を出す。


「ティナ!そいつから離れろ危険な魔物だ」


「魔物?こんなに可愛い子が?わんちゃんじゃないんですか?」


「ああ、そいつはレジェンドウルフっていうシャドーウルフ系統の王個体だ、滅多に生まれないがかなり凶暴、危険度SSの魔物だ」


「え……」


 嘘!こんなに可愛い子が、つぶらな瞳でこっちを見つめているこの子が危険だなんて


「やだ」


「やだじゃない」


「やだもんこんなに可愛い子が危険なわけないもん大丈夫だもん」


 ふわふわモフモフのこの子が危険だなんてありえない!


「でもなティナ可愛くて危険な生き物なんていくらでも会うぞこれからその度にこんなこと言うのか?」


「そうじゃないけど……」


『くぅーん』


 私は小さなレジェンドウルフに抱きつき離さないとまで思わせる体制をとる、こんなに可愛いのに殺すなんて私には出来ないよ


「ティナ嬢がここまでわがまま言うところは初めてだね以外だな、それよりも気になることがある」


 殿下がここに来て誰も触れなかった疑問に触れる


「結界が張ってあるのにどうやって入ってきたんだ?王個体なのに他の魔物が1匹も見えないのはなぜ?」


「言われてみれば確かにそうだなシャドーウルフは基本的に集団で行動する特に王個体がいる時は他のどの魔物より集団を意識するのに1匹も見えないのはおかしいな」


 そう言われるとおかしい集団を意識する魔物がまだ生まれたてだと思う王個体を置いてどっかに行くとは思えない、もしかして勝手に離れた?他のシャドーウルフに気づかれないで?


「しかもさっきジルさん言ってましたよね、''敵意''のあるやつはここに入れないって、ほんとに敵意があるならここに入ってこれないはずでは?」


「そうですよ、この子は誰も襲いませんいい子です」


「はあーわかったよだがカナリアと相談してからだいいな」


 やったー許してもらえた、良かったねわんちゃん!


「ありがとうございますジルお兄ちゃん」


『ワンワン!』


「そろそろ結界切れる時間です僕も十分休めたし再開しましょう」


 エルナトが回復したと言うので探索を再開する、そこから2時間ほど狩りを続けた、森大ヘビやオーク、ダークベアなど色々狩り、回収を繰り返した、驚いたことはレジェンドウルフが狩りに参加したぐらいか、すごく勇敢なのはわかったが少し危ないと思った。


「そろそろ戻るぞ」


「「「はい」」」

『ワン!』


 今更だけど狼って鳴き方って犬と同じだっけ?と思いながら別れた草原へと帰宅した。一足先に帰ってたカナリアさんたちと合流する


「おつかれ、そっちはどうだったカナリア?」


「そうね変なことがあったわ、シャドーウルフがかなりの群れを成していたのだけど統率するはずのレジェンドウルフが見当たらなかったのよ、こんなの初めてだわ……」


「あーなるほどねそういう事か」


「え?」


 1人納得するジルを不思議に見るカナリア


「ティナ」


 ジルは私を呼ぶ、そして私を後ろからついてくる生き物に目が止まる、もちろんふわふわモフモフの狼に。


「後ろにいるのってもしかして」


「そのもしかしてだ」


「なるほどねそれはいないわけですわね

 どこで会いましたの?」


「何故かわからんが結界内に入ってきた、ティナは可愛いと言って離そうとしない」


「それはそれは」


 カナリアはため息をつき私を見る、何となく言いそうなことはわかる。


「ティナちゃん、その魔物は危ないのよ今は大丈夫かもしれないけど大きくなったら人を襲うかもしれないのよ」


「大丈夫ですそんなことしませんしっかり育てます」


「……カナリアさん、ジルさんがここまで何もしないでレジェンドウルフ連れてきたのには理由があるんじゃ」


 ナイスサクラちゃんいいタイミング、言ってやれジルお兄ちゃん


「そうだ、ティナがな初めてだわがまま言ったんだよ、いつもは欲しいのあっても我慢したりするティナが、それにこのレジェンドウルフこいつはちゃんと人と魔物の区別が出来る途中で狩りに参加し始めたが1回も間違えることなく攻撃出来てた」


「ティナちゃんのわがまま言ってるとき可愛かったわー頬を膨らませて『やだ』って言い続けるんだもん」


「むぅ、アスカちゃんなんかずるいよ、私も見たかった」


「……それはずるい」


 アスカが違う感想を述べずるいと言い合う2人、そんなだったのか私……


「はぁーわかりましたわ、でもしっかり責任を持って育てるのよ、あとは街に戻ったらペットとわかるように首輪ちゃんと付けなさい」


「はい!」


 カナリアさんから許可が出た


「……ティナ、その子の名前どうするの?」


「んー男の子っぽいよねレオンにしようかな」


 レジェンドウルフの名前をレオンと名付けた。

 その後は男の子達とカナリアさんが集まり報告会、私とサクラ、エイル、アスカはレオンと一緒に遊んだりしていた


「よし、王個体は合計で3体倒した氾濫は何とかなるだろう、それじゃ帰るぞ」


「「「はい」」」


 暗くなる前に出発し帰る、レオンは私の帽子の中、つまり頭の上で眠っていた、かなり小さいので気にしないで進める、街に帰り早速首輪を購入、レオンは嫌がらずに付けてくれた。これでちゃんとしたペットなった。

 ギルド前でジルとカナリアと別れる、集めた素材は換金して後日渡すとのことだ、別荘に戻りメイドさんにレオンのことを話すと喜んで許可してくれた、今日も沢山動いたので部屋につくなりベッドで寝てしまった


―――――――――――――――――――――


 《朝》

 起きると横で丸くなったレオンが一緒に寝ていた、起こさないようにして着替えをはじめた、いつものように動きやすい格好をする、そして魔力制御の練習をはじめた、もう日課になってきている

 練習が終わったらレオンを起こして散歩に出かける、レオンはよく走るそれはもうすごい速さで、これからの体力作りはこれで良さそうだ。

 疲れて帰ってくると朝食を食べてサクラと一緒にギルドに向かった。


 チリーン


 ギルドに入るといつもように視線が集まる、ちょっと体がビクッとなる、しかし昨日程ではない、何事もなく2階のカナリアさんのところに向かった、扉を開けるとみんな集まっていた。


「全員揃ったわね、昨日はおつかれ様です素材の方はもう少しかかるみたいなのでしばらく待ってください

 討伐した王個体は先日のことを含むと3種、ゴブリンロード、オークロード、キングサーペントです

 報酬として金貨5、小金貨8枚ずつ差し上げますほんとにありがとうございました、これで氾濫は起こらないと思います」


「そんなに貰っていいのですか?」


「えぇこれでももっと上げたいくらいですが小さい子に大金をあげるとなると悪い輩に絡まれて問題になりそうですし」


 これでも十分に大金だと思うが気にしないでおこう、それにいい経験も出来たからね


「ありがとうございます。また何かあったら協力します」


「はいその時はお願い致します」


 報酬を受け取り今日は解散した、ジルは家に戻るといい帰って行った。


 そして今私はサクラと殿下と一緒に久しぶりに学園に来ていた、ひまになりそうな時は魔法の練習をする、能力の調整をしつつ魔法の練習をしていると帰ってきた報告を聞きつけた先生が姿を見せた。


「お帰り、凄いなもうAランクになるとはな驚いたぞ」


「ありがとうございます」


「これなら今年度の大会も楽しみだな」


「あ、」


 すっかり忘れてたこの学園最大の行事、まぁ何とかなるでしょう、先生は授業があるからと言い戻り私達は暗くなるまで魔法の練習をした。


(大会ですかどんなのでしょうか)


 別荘に戻ったティナはそんなことを考えて眠りについた。

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