第21話出発ですよ
【凶星】
古参や中堅にこの2つ名を知らない人は居ない
突然現れた凶悪な新星、不幸を呼ぶ者と色々とその由来がある、ただ1番有名なのは突然現れては全てを破壊し消える星である
今私のの前に【凶星】と呼ばれる男が立っていた。
「ようティナ!久しぶりだな」
ダイナミックな登場に周りの人達は開いた口が塞がらない、少しして1人の男が叫ぶ
「お、お前は!【凶星】のジル!!何しに来た!」
「何ってカナリアに呼ばれたから来たんだが、それよりなんでお前らのあしは凍ってるんだ?」
ジルは私を襲った男達に近づく、男達は私のさっきの発言が耳に残っていた、「お兄ちゃん」と言ったことを、ジルが1歩1歩近づく度に顔色を悪くし汗をかく
「……師匠、お久しぶりです、こいつらはティナのことを殺そうとしたので成敗してたところです」
サクラが師匠と呼ぶ、サクラの剣術は独自のものだがそれの修正、稽古などは全てジルが見ているためにサクラにとっては師匠なんだろう……
ていうのは冗談で男達を脅すために言ったのだと思う多分……
「ほぅ……」
ジルは男達を睨みつける、するとジルから強力な圧が放たれた。思わず足がすくみそうになる
「俺の家族に手を出した奴の末路って聞いたことあるよな、俺の2つ名の由来になってるんだけどよ、お前ら自分以外の奴の命差し出す覚悟はあるよな?」
放つ圧が強くなる、男は顔面蒼白になり泡を噴き倒れた。
「ジル、もう抑えて、この子達が泣きそうよというか泣いてるわよ」
後ろを向くとカナリアに抱きつき泣いているエイルの姿があった、アスカも涙目になり震えている、私も少し泣いていた。
「ああ、悪い」
ジルは申し訳なさそうに謝る
「応接室に来てちょうだい、サクラちゃん達もね昨日の件について話すわ、エイルちゃんは落ち着いたら来てね、シャリア居る?エイルちゃんに替えの服着せてあげて」
「はい、エイルちゃんこっちおいで」
「ぅん……」
俯きながら歩くエイルを見送る、目は赤く下半身は濡れていた……
ごめんね怖かったよね、後で言っておくから
「私たちもカナリアさんのところ行こうか」
やっと落ち着いたアスカとサクラと一緒2階に向かった。
ギルマス室に着くと殿下達が待っていた。
殿下にエイルが遅れてくるのとさっきあったことを説明した。
「大変だったね怪我ない?」
「はい大丈夫です」
「全員揃いましたねでは開始します
まず昨日のゴブリンの巣の攻略お疲れ様です、皆さんの活躍で囚われた人も誰も死なずに済みました、感謝しかありません
なので皆さんのランクをAに上げたいと思います」
すごい飛び級だ、まだ新人なのにもうここまで来てしまった。
「まだ2日も経ってないのにいいのですか?」
「はい皆さんの実力はもうAを超えていますから大丈夫です。Sランクは特定の魔物を狩らないと上がれないのでお許しください
ただ殿下も言った通りまだ未熟ですSランクのクエスト受けるのなら経験を積んでからにしてください」
「はい」
「で、ここからが本題です
王国兵からの報告で森付近で魔物が大量発生してるのが目撃されてるわ、多分氾濫が起きる前兆だと思うのそれでこれ以上増える前にあなた達と私、そしてジルのメンバーで討伐をしようと思うの」
それを聞いたジルが勢いよく立ち上がり怒声を上げた。
「おい、こいつらは子供だぞそんな危険なのに巻き込むのか!」
「けど彼らの能力は本物よ、エルナトくんの探知能力エイルちゃんの転移フリットくんの指揮、剣士組の攻撃力、アスカちゃんの殲滅力ティナちゃんの魔法、殿下のオールラウンダー性どれをとっても優秀よ」
なんかすごい過大評価されてる気がするそこまでのことしたかな
「でもな」
「大丈夫よ私が保証する」
「はぁーお前はいいかもしれないけどなぁ」
ため息をつきながらこちらを見る
「私は大丈夫ですよ何事も経験ですし」
「……むしろチャンス」
「そうだねこんな機会今後ないかもしないし」
「お前らなぁ」
ジルは私たちの反応を見てさらにため息をついた。さらに任せてくださいという感じで視線を送る
「わかった、だが行くからには覚悟しろよ
いくら注意してても死ぬ時は死ぬからな」
さすがにこれには折れたみたいだ。
「「「はい」」」
「と、自己紹介がまだだったな
俺はジル、ジル・ハートノースだ、LSランク冒険者でティナの兄だよろしくな」
「よろしくお願いします。僕はペイナです」
兄の自己紹介に続きいつもの様に順番に挨拶をしこれからの事を話した
「よし、出発は今夜11時東門前に集合だ各自準備をしてくれ解散!」
それぞれ準備をしに部屋を出る、私とカナリア、ジルだけが残った。久しぶりにあった兄と喋りたい気持ちがあった。
「そういやティナの杖の件ありがとな」
「いえいえ、私も久しぶりだな竜狩りが出来て楽しかったわ」
「杖の件?」
そういえば昨日も杖をみて何か言ってたし何かあるのかな、同じ魔道士だから凄いって分かるのかな?それならこの杖作った人に感謝しないとですね。
「ティナの杖作ったのカナリアなんだ」
「ええ!」
なんだってー
「珍しく頼み事してきたので張り切りましたよ、素材もいいの使いましたし作製にたっぷりとかけましたよ、久しぶりに水竜を大量に狩りましたしこっちも楽しかったわ」
なんと、この杖の作製者はカナリアだった。なんか嬉しくてぴょんぴょん跳ねる
当たり前だよねあんなすごい人がこの杖作ってくれたんだもん、憧れだよほんと
「ありがとうございます、とても使いやすいです。魔法の補助もしっかりしてて威力もあるとなしじゃ違いすぎます」
「ふふ、いいのよ杖もあなたに使われて喜んでおりますわ」
笑い方がとても可愛らしいカナリアに少し頬を赤くする。
「ところでこの杖の素材には竜を使ってるんですよね、カナリアさんお兄ちゃんの知り合いぽいしもしかして同じパーティとかでした?」
私の質問にジルはため息をつきカナリアを見た。ため息多いなこの人、前からだけど
「カナリア、お前自分の情報何も教えてないな?ティナ、こいつは元LS冒険者で俺が入ってたパーティのメンバーだ、2つ名は【竜殺しの乙女】竜狩りに関しては右に出るものはいない程の実力者だ
今は引退してお世話になった王都のギルドのギルマスをしてるってとこだ」
カナリアさん思った以上にすごい人じゃないですか……
「ふふ、褒められてますねあのパーティないじゃ私1番弱かったのに」
「え?」
カナリアの発言に驚く、あれで1番下だったの?お兄ちゃんのパーティ凄すぎない?ていうかあのカナリアさんより上なのお兄ちゃん
「まあこうしてジルの妹さんに会えたのですから改めてよろしくね」
「はい!」
「ところでティナ、さっきの女の子なんだけど」
「エイルちゃんですか」
ジルは申し訳ない顔をしながらこっちを見た。反省はしてるみたいだ
「いやわざとではないとはいえ泣かせちまったから謝りたくてな」
ジルの困った顔を見てさっきのことを思い出す
確かにわざとではなかった、私のためにあの男の人たちを懲らしめただけであって、決してエイルを泣かすつもりではなかったのはわかる
けど大人の男の人が震えるレベルの威圧を8歳の女の子が耐えられるわけがない
「多分ですけとしばらく避けられますよ、一種のトラウマに成りそうなくらいの圧でしたし」
「ほんとに申し訳ない……」
ジルは肩を落として落ち込んだ。
「まあ会ってみないとわからないです。謝りに下に降りましょう」
私はそう提案しジルと一緒にロビー向かった、下に降りるとさっきまでの出来事がなかったかのように賑やかだった。
「あ、ティナちゃん!」
中央の椅子に座った冒険者にお酒を運んだメイド服のエイルが手を振って私を呼んだ。すごく可愛い
「エイルちゃん大丈夫だった?うちの兄が申し訳ございません」
「さっきはごめんな、怖かったよなほんとごめん」
私とジルはエイルに頭を下げて謝る
「顔をあげてください、わざとではないのは分かります、あれはティナちゃんを思っての行動ですもんね、こっちこそお騒がせしてすいませんでした」
逆に謝られてしまった
「じゃあ改めて、俺はジル、誰かから聞いてるかもしれないけどティナの兄だよろしくな」
「はい、ジルさんのことはアスカちゃんから聞きました
私はエイルです。ティナちゃんと同じクラスで同じパーティメンバーですよろしくお願いします」
2人は握手をした
「俺は準備しに行くまた後でな」
「「はい」」
ギルドを出るジルを見送った
「ティナちゃんのお兄様かっこいいですね……」
頬を赤くしながらポツリと呟いたのは聞かなかったことにしよう
「そういえばエイルちゃんその格好」
「これですか?シャリアさんに貸して貰いました。こういうの1回着てみたかったの、メイドさんって憧れだよぉ」
なるほどテンション高かったのはそういうことなのか、今度採寸してもらってあげようかな
この後私達もギルドを出て準備をする、エイルちゃんは食料とかを買いに行くといいすぐに別れた
私は一旦泊まった宿に戻り荷物の整理などし夜遅くに出発するので少し寝ようと思い横になったらガッツリ寝てしまった。
《夜》
〜王都東門前〜
少し寝坊して遅れてくる、みんなを待たせてしまったことを謝ったらジルが「ティナはほんとよく寝るよな、ハハハハ」と笑いながら言ったので少し睨みつけ、黙らせた。
全員いるのを確認して門を出る、道中は夜なだけあって特に何もなかった。
私はジルの隣を歩きここ最近あったことを話していた
しばらくして広い草原にたどり着くとジルが足を止めた
「ここで休憩だ、日の出まで休む用意を、エルナトは辺りを警戒してくれ」
「はい」
ここで野営をするみたいだ。
ジルとスティング、フリットは慣れた手つきでテントを組み立てていく
サクラとアスカは辺りに何かないか探索、殿下はカナリアと話し合い、私とエイルは食事の準備をしていた。
「ティナちゃんが料理出来て助かりました
教えながらになるのかと思ってましたがこれなら早めに出来ますしもう1品増やしても大丈夫そうですね」
「あはは、ありがとうございます。いざという時のために習っておいて正解でした」
実の所はそれほど習っていない、前世の記憶が少しだけあるのが救いか料理知識とかは豊富だった、あとは家にいた料理人やメイドさんに少し習ってこの世界の味を知るだけで済んだ、どうやら薄味が好みだしい
前世の私は料理人かなんかだったのか?
おしゃべりをしながらエイルは肉を焼き私はスープを作っていた。
「お、いい匂いがしてきた、お前ら飯にするぞ」
「相変わらず美味しそうだね、今回はティナ嬢も手伝ったのかい?」
「……ティナ料理出来たんだ」
サクラも驚いたのは仕方ないかな、サクラが来てからずっと遊んでたりして厨房1回も立ってないもの
「豆のスープです。お口に合うかわかりませんが」
焚き火のまわりに集まり夜食を食べる、簡単にとはいえ美味しいと評判だったのは嬉しいことだ
食べ終わったら水魔法でお皿を洗い収納魔法の中にしまった。
「今後のことなんだけどチームを2つに分ける、その方が事故とかも少なくて済むしね
森の中を散策するチームと森の周りと草原を散策するチームに分かれる
チームリーダーはカナリアさんとジルさん
カナリアさんのチームは周辺を見る、メンバーはサクラ、フリット、エイル、スティング
ジルさんのチームは森の中メンバーはティナ、アスカ、エルナト、そして僕
エルナトとフリットには信号弾を持たせておく何かあったら打ってくれ、出発は日が登ると同時それまでゆっくり休んでくれ」
「「「おう」」」
「いい機会だ、男子はテントの見張りをする、女の子はゆっくりと寝てくれ」
ジルはこれも経験だという感じで提案する
「僕はいいですが王族である殿下は休んだ方が」
「冒険者として過ごす間は身分は関係ないよ、それにみんなが頑張ってるのに僕だけ寝るなんて出来ないし」
スティングが心配した所を殿下が関係ないと止めた。
「そうだぞこいつの言う通りだ冒険者として生きてる間は身分は関係ない、それにそんなこと言うなら貴族であり将来家系を継ぐかもしれないお前や俺も休めってなってしまう、そしたら見張りはエルナト1人になるぞいいのか?」
「それは良くないですね」
さすがに見張り未経験だとはいえエルナトなら何とかなりそうですねとか思ったりした。
「まぁこのパーティだと言い出したらキリないしな、カナリアなんてどこぞの国の第1王女だぞ」
「ちょっとジルそれは言わないでって」
ジルの発言にカナリアは慌てて口を塞いだ。口が軽いんだな……って
「ええ!カナリアさん王女様だったんですか」
LS冒険者で【竜殺しの乙女】で王女様って、なんか謎の存在となってきた他になんか隠してないだろうか……
「昔の話よ、今は関係ないし帰りたくもない」
余程嫌なことがあったんだろ強く言い切った、これ以上の何も聞かないことにしよう。
ジルの言葉に甘え女性陣はテントでゆっくり休み、殿下達は見張りを交代交代でやっていたらしい。
特に何もなく日が登りはじめた。
「よし行くぞ」
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