第18話冒険者ですよ

 次の日から本格的に特訓が始まった

 朝早くから体力作りにランニング、終わったら魔力コントロールの練習、その後シャワーを浴びて朝食を食べ学園へ、学園に着いたらフリットから今日のメニューを伝えられて練習場に向かう、練習場に着いたら始めに水の玉を保つ魔力コントロール練習、その後魔力の放出、操作、身体に纏わせるといった作業を繰り返す。

 お昼になったらSクラスのみんなと仲良く昼食食べます。アスカから調理器具を色々貰ったエイルが張り切って沢山作ってきてくれます、かなり美味しくてフリットがべた褒め、今度領地から定期的に色々と送るようにするとフリットが言ったらエイルが目を輝かせて頷いた、良かったね。

 お昼を食べてしばらく休んでから魔法の練習、連続で魔法を使ったり同時使ったり発動速度を早くしたり威力を上げたりと色々やる、魔法の練習後は戦闘が強いスティングとかと模擬戦をしてから反省会をして解散する、寮に戻ってからは夕食を食べて部屋でシャワーを浴びながら魔力コントロールの練習して最後に柔軟をして寝る。

 この生活を繰り返して2ヶ月が経った頃先生が練習場にやってきた。


「はぁー、お前ら何やってるんだ……」


 何か奇妙な光景を見たかのように先生はため息が止まらない


「え?」


 4つの水の玉を制御しながらなんの事だかわからない私は首を傾げる。


「え?じゃねーよ、なんだこれは!土の馬?こっちは氷で出来た剣か?ここはいつから物置になったんだ?」


 部屋中にあった魔法で出来た置き物を指差す。他にも銅像なり氷の花なり色々ある


「ああ、これですか、小さい時に魔法は、イメージが大切って言うのを本で読んだので色んな物を作ろうかなと、魔法の練習にもなるし……ダメでした?」


 私の説明を聞いて先生はさらに大きなため息をした。やっぱりダメだったのか


「……先生何しに来たの?」


「そうだった、ちょっと全員集まってくれないか」


 Sクラス全員集めて話をする。


「実は初日にやった模擬戦が噂になってなそれが冒険者ギルドのほうに耳が入ったらしい、でギルドマスターからぜひ学生期間だけでいいから冒険者として経験を積んでみないかって学園長に頼んだらしくてな、学園長は本人達に任せると返事したらしい」


「冒険者ですか、面白そうです」


 そう言えばジル兄様がすごい冒険者だったって話聞いた事ありますね、そんなこと思い出す


「どうする?ウチはいいけど」


「僕もいいですよ」


「俺は元々冒険者として経験をしばらく積む予定だったし嬉しい誘いだ」


 貴族組4人はOKをだす。あとは……


「面白そうですしいいっすよ」


「父上から学生の間は自由にしろと言われているのでみんなに任せます」


 エルナトはOK、殿下はどちらでもいいとの事


「……ティナが行くなら」


「私も新鮮な食材を使いたいのでやりたいです」


 残り2人もOKみたいだ。

 全員賛成?したので先生の方へと視線を送る


「なら学園長に話してくる少し待っててくれ」


 今後のSクラスの活動が決まり、学園長からは色々と条件をだされた。

 1.無理はしないこと

 2.2~3ヶ月に1回は学園に顔を見せる

 3.年度末の大会には参加すること

 4.ギルドの人を頼ること

 5.誰も死なないこと

 その条件をだした後全員に金貨を2ずつ配った

 この世界の金貨は数枚あれば家が買えるくらい大金、子供に渡すには多すぎる気がしなくもない


「じゃあ今日明日はそれぞれ準備をして明後日ギルドのほうに行くでいいかな」


「「「はい!」」」


「あ、でもティナ嬢、君は毎食後に魔力操る練習はやってね」


「わかりました」


 ということで今日は解散した。


 次の日は皆それぞれ支度をした。

 アスカはエイルに協力してもらい昨日のうちに家の方に帰り工房に篭ったらしい、エイルの実家がダイヤサウス領にあると聞いたのでそのまま転移して貰った。

 なんでもサクラ、スティング、フリット、エルナト用に新しく剣を、殿下ように手甲、エイルに杖と短剣を作るらしい

 私の分がないのは、「今のウチにこの杖を超えるものは作れない」から作らないという。

 他の杖使ったことないからわかなかったけどそんなに凄いのですかジル兄様に感謝しないと

 そんなこんなで時間が過ぎた。


 ――――――――――――――


 〜王都冒険者ギルド前〜


「ここが冒険者ギルドですか」


 さすが王都としか言えないくらいでかい建物

 木造建てで入口には獅子のマークが付けられた旗がある

 今はフリットのことを待っている


「ティナちゃん、帽子を深く被ることをオススメしとくよ」


 アスカは私に帽子を深く被るよう指示する

 私はその意味は分からなかったがとりあえず深く被る、被らなかったら損をする気がして


「前見えないです」


「少しの間我慢してね、ティナちゃんの為だよ」


「はい……」


 中の様子が気になっていた私は、少し落ち込んだ、そして最後の1人がやってきた


「待たせたな」


「みんな揃ったね、じゃあ行くよ」

 

 殿下が全員いることを確認すると扉を開ける

 チリリーン

 扉を開けるとベルのようなものがなり、その音に釣られて厳つい男達が一斉にこちらを見る。


「ああ……これは確かに」


「でしょ、多分ティナちゃん気絶しちゃうよ」


「ええ?何なんです?」


 気になって帽子を取ろうとする


「こらこらダメだよティナ嬢、とごめん」


 近くにいた殿下が帽子を押さえる

 ティナはここ2ヶ月ですっかり慣れSクラスのメンバーとは普通に話せるようになったがいきなり触られたので身体が震えだしてしまう


「ちっガキか」

「またお遊び感覚できた奴だろ」

「お、可愛い子いるね」

「おいおいこの歳に興味あるとかやべぇよお前」

「後で泣きわめくんだろうな」

 ワハハハハハハハ


 男達は様々な感想を述べる

 それらを無視して殿下は受け付けの方へ向かう、殿下は受け付け嬢に手紙を渡すと受け付け嬢は慌てて奥に消えていった

 しばらくすると2階に来るように指示されたのでSクラスのみんなは2階に向かう、私は前が見えないのでサクラに引っ張られながらついて行った


「もうすぐギルドマスターが来るので少々お待ちください」


 それだけ言うと受け付け嬢の人は1階に戻って行った。


「ティナちゃんもういいよ」


 アスカから許可が出たので帽子を外す、髪は少しボサボサになっていた。


「ふぇ〜暑かったです」


「よく我慢出来たねぇ、偉い偉い」


 アスカが私の頭をよしよしと言いながら撫でる、子供じゃありませんと私は頬を膨らませた、横を見るエイルは自分じゃなくて良かったという顔をしていた のでさらに膨らませる、すると扉から女の人が入ってきてた。


「お待たせ致しました。私がここのギルドマスターのカナリア・アメタートです」

 

 カナリアはお辞儀をして椅子に座る

 薄紫色の髪、スタイルのいい身体、何よりでかいお餅が2つ、そんな大人の女性って感じに見惚れていると、彼女がじっと杖を見てるのに気がつく


「えっとこの杖が何か?」


「ああいいえ、あなたがね」


「?」


「いい杖をお持ちで」


 カナリアはニッコリと笑うと私は顔を赤くして縮こまる


「では改めて、ようこそ冒険者ギルドアスタ王国支部へ、手紙の通りだと卒業まで冒険者やる子もいるそうね、色んな経験が出来ると嬉しいわ、まず簡単な説明をします」


 カナリアは腕を広げて私達を迎え入れると冒険者のルールを説明した。

 1.冒険者同士の争いは自己責任

 2.依頼は先に受注したものとする

 3.ランクに合わせた依頼を受けること

 4.他のメンバーが狩った魔物は横取りしないこと

 5.死体漁りはしないこと

 6.これらルールを破った場合ギルドメンバーとマスターが責任をもって制裁をくだす

 他にも色々あったけど重要なのはここら辺だ


「あとはランクについてね、ランクはFからLSまであるわ、FからAまでは自分と同じランク、自分より1つ高いか低い依頼を受けられるわ、昇格は一定以上クエストをこなすか、指定された魔物を討伐するか、誰からの推薦、飛び級もあるわ、まぁあなた達ならすぐにSランクになれるわ、Sランク以上の昇格についてはその時話しましょう

 そうですねー過去で1番若くSランクになったのは10歳でしたわ、彼は今LSランクでその凶暴さから【凶星】と呼ばれているのよ」


「では僕達はFランクスタートですか」


 殿下がランクについて聞く、カナリアは首を横に振り否定した。


「いえ、冒険者の卵、どんな才能があるかわからない、そんな子をFで放置なんてしません、なのでとあることをします」


「とあること?」


 カナリアは机の下から水晶玉を取り出した、透明で綺麗な丸をしている


「これは人の得意属性、魔力量を見る水晶です。剣とか得意な人もいますが問題ありませんそっちの方が得意な場合は銀色に光ります」


 そう言うとカナリアは水晶玉に手を置く

 すると水晶玉が青と赤色に光りだす、すごく眩しい


「「「おおおー」」」


「では順番にやって行きましょう」


 みんな順番に手を置いていく

 サクラとアスカ、スティングは銀色に以外は自己紹介した時と同じ属性の色に光る。


「最後にティナちゃんだね」


 アスカの番が終わって私の番がくる、なんか毎回最後な気がする……

 そんなことを考えながら水晶玉に手を置く、すると他のみんなと違って異様な光り方をする、さらに他より強く光る


「まっ眩しい、てか何色ですかこれ!」


 虹色に光る水晶玉、部屋が光で包まれてよく見えない、更には

 パリーン

 耐えられなくなった水晶玉が粉々に割れた


「わわわ、壊れちゃいました」


「こんなの初めてだわ……眩しすぎて何色が出てたか分からなかった」


「ティナ嬢は火属性以外全部光ってたよ銀にも」


 殿下が見えた色を言ってくれた、さすが光の能力を使う人、眩しいのには慣れている感じだ。


「……銀色って」


「そうですね、ティナの剣の腕は少し……」


「まぁあるかないか言われたらないわね、もしかしたら他の武器?」


 銀色3人組が首を傾げた、私そんなに才能ないの、もしかしたらあるかもよ


「なんですか3人とも!私に剣の才能疑うのですか!」


 私は頬を膨らませて怒る


「……疑うわけじゃないけど今の状況見るに絶対に光るはずないんだよね」


「そうですね、ティナさん剣より魔法の方が強いですからね」


「ティナちゃんの剣の腕は悪くないわよ努力の結晶だからね」


 そうだけどそうじゃない疑ってないなら認めてよ、私には才能ある!


「じゃああの光は?殿下の見間違え?」


「「「さぁ?」」」


 3人ほぼ同時に首を傾げた、カナリアも難しい顔をしていた。

 そして


「いいわみんな文句なしCランクからスタートでいいですか」


「はいお願いします」


 そのあとは冒険者として登録してギルドカードを受け取る


「じゃあ早速依頼を……と行きたいところだが先に食事にしよう」


 殿下の提案にみんな頷きギルドを出た。

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