第16話模擬戦ですよ2

「……ティナ!」


「おっと、行かせねぇよ」


私の元へ向かおうとするサクラの前にフリットが入り火球を飛ばす。

だが火球は泡となって消える


「ふむ、やはり魔法は効かないのかな、いや」


フリットは石を拾い投げる


「エンチャント【炎】」


「……無駄」


石に構うことなくサクラは突っ込み攻撃する

石はサクラに近づくと泡となって消えた。


「なるほど」


フリットは何かに気がついた顔をすると攻撃を全て捌き蹴りを入れ距離を離した


「君の能力は遠距離攻撃の無効化だ、常時発動型か任意かって言われたら常時、範囲は1メートル前後、多分他にもあるだろうけど丁寧に隠してある、まだ見れない」


「……」


「これだけ分かれ対策は可能だ、俺の【眼】からは逃げられない」


「……!」


サクラは何かを感じ振り向く

がそこには何もない


(……見られた?いや)


サクラはフリットを睨みつける


「くくく、凄いな、今ので気がついたとはさすがだな」


(……長期戦はまずい)


「……エンチャント【雷】」


「そうそう1つ忠告」


何か言おうとするフリットを無視して攻撃を仕掛ける


「……弐の型【鳴神】」


「足元に気をつけな」


サクラが“そこ”を踏んだ瞬間地面から炎の渦が襲い掛かった。


「ウア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


「やはりな、遠距離攻撃が効かないだけで設置型や近接攻撃は当たる」


やがて炎は消えサクラは倒れる


「……放電」


瞬間纏っていた雷がフリットを襲う


「何!避けられ……」


言葉は最後まで続くことなくフリットは気絶した。倒れた2人はやがてそとへと出される




フリットとサクラが戦う中私は大粒の涙を目に溜め震えていた。

私が動けないと確信したペイナ殿下はゆっくりと近づく


「僕的には君を傷つけたくない、降参してくれると嬉しいな」


ペイナ殿下の言葉にティナは首を横に振る


「みんなが頑張ったのに私の勝手な判断で終わらせるわけにはいかない」


ティナの言葉にペイナ殿下はため息をつく


「そんなに怯えてるのに何が出来るというんだ」


確かにティナは怯えてるだが何も出来ないわけではない


「【ウォーターアロー】」


ティナは自分が使える魔法の中で1番速い魔法を使うが狙いが定まらなかったのか当たらない


「やっぱり君の魔法は厄介だね封じさせてもらう【ジャミングチェーン】」


するとティナの両手首と首に枷と鎖が繋がれる、と同時に嫌な感覚を覚える、更には鎖に繋がれたあの日の自分の姿が脳内を過る


「サンダーボルト」


急いで攻撃しようと魔法を使う、速度も早く威力がある魔法


「え……」


しかし魔法は発動しない、それどころか魔力の流れが感じない。


「サンダーボルト!サンダーボルト!」


何度も使おうとするが出る様子もない


「なんでぇなんでぇなんで使えないの、ぅぅぅぅ」


精神が限界を迎える、魔法が使えないという恐怖で泣き始めてしまう


「言ったよ、君の魔法を封じさせてもらうって、その鎖は君の魔力を妨害するものだよ……向こうも決着着いたみたいだし諦めてくれるかな」


殿下は私にに近づく

絶望的な状態、私は無意識のうちに殿下をかつて自分を攫った男に重ねてしまった。


「ヒィ」

『こ……せ』


(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、ここで負けるのは嫌だ、みんな頑張ったのに、アスカちゃんだってサクラちゃんだって戦ったのに、エイルちゃんだって私を庇ったのに私は何も出来ないで負けるの)


ポロポロと泣き、震えが増す

『こわ……せこわせ……壊せ殺せ』


また、あの時のように頭の中に何が入ってくる、殿下が近づくに連れ声が大きくなりハッキリと聞こえ始める


『殺せ壊せ殺せ!』

「やめて……来ないで!入って来ないでー!」


叫びと共に魔力が溢れ出す。

恐怖が限界まで達し、何が入ってくる恐ろしさが暴走へのトリガーとなった。


――――――――――――


「なんだ、この魔力は」


溢れた魔力を感じ殿下は距離を取る

パリーン


「なっ!こんなことがあるのか」


ティナに付いた枷と鎖が魔力に耐えきれなくなり砕けた。

すると、座り込んでいたティナは立ち上がり手を前に出す。

と同時に無数の石がペイナ殿下に向かい飛んでいく、さっきまでの怯えていた姿はなかった、明らかに違った、目は青く光り、体には薄く何かを纏っていた。


「ははははは、そうじゃなくちゃ!」


殿下は笑い声をあげ飛んでくる石を全て避けティナ妊娠突っ込む


「制限を2段階解除、反撃開始だよ」


殿下は手だけではなく足に光と闇を纏う、さらに周りには粒が浮かぶ。


「はああああ!」


殿下は粒や足、手を使いティナに攻撃をする、だがティナはそこに来ることが分かってるかのようにピンポイントで防御魔法を張る。

反撃の隙を与えない殿下に対して攻撃を全て防ぐ、このまま行けば魔力が切れると思った殿下だが、ティナの後ろから魔法陣が展開され氷を飛ばした、


「嘘だろ!」


ギリギリのところで避ける、詠唱も呪文も聞こえなかった。何も発しないで魔法を使うなんて見たことない。


「ちっ」


避けた先にも魔法陣が展開されてあり攻撃する、本来のティナの発動速度を遥かに超えていた


(魔法の発動速度が人の域を超えてる)


次々に魔法陣が展開され殿下を襲う、それを全て避ける、形勢が逆転した。

殿下は攻撃を避けつつチャンスを伺う


(いくら連発出来ても隙は必ずある)


まだ避け続ける、ずっとチャンスはないかとティナを見る、そしてついにその時がやってくる

打ちすぎたのかティナは体をふらつかせる

殿下その一瞬を見逃さなかった。

一気に加速し拳を突き出す

ティナは反応が遅れたのか防御魔法を張るが今までより薄く破られる

ペイナ殿下の拳が顔に迫る

が寸でのところで拳を止めた。


「はぁはぁ、はは引き分けか……」


ペイナ殿下は笑いながら横目で首元を見る

首近くには魔法陣が展開されたティナの手があった


「そこまで!結果は引き分け!怪我は回復するはずだ、治るまでここに留まれ」


『うおおおおぉ!!』


どこからか歓声が上がる

周りを見るといつの間にか生徒が集まっていた。Sクラスのメンバーは歓声と拍手に少し照れる


「ティナ嬢、強かったまたやろう」


殿下は脱力し声をかける、がティナに反応はない……

すると突然何かが切れたのかティナの纏っていた薄い何かが霧散し気を失った。


「ティナ嬢大丈夫か!おい!」


倒れようとするティナを殿下は慌ててティナを支える

ティナは顔が赤く呼吸が荒い


「医務室に連れてく道を開けてくれ」


殿下はティナを抱き抱え医務室に急いだ。緊急事態のため集まっていた生徒は急いで道を開けた。




〜クリスタル学園医務室〜

サクラと殿下、アスカ、スティング、フリットが医務室の前でティナを心配していた。

扉が開く


「先生ティナは大丈夫なのですか」


扉から治癒魔術師の先生が出てくる


「ああ目は覚ましてないけど大丈夫だ、魔力枯渇が原因だね」


「中には入れるかい」


ペイナ殿下が入れるかどうか聞く


「はい、問題ありません」


先生の許可を貰うと中に入る

ティナはベッドで寝ていた、まだ顔は赤いが呼吸は安定していて穏やかな顔をしている


「よかった大丈夫だな」


「そうですね」


フリットとスティングはティナの顔を見て安心する

しかしアスカと殿下は険しいままだ。


なぜならティナの髪、白かった部分が増えてるからだ


「ねぇ、サクラちゃん、そろそろ話してくれるかな、ティナちゃんのこと」


「…………」


しばらく黙るとサクラは口を開く


「……みんなはティナが男の人に怯えてる理由は知ってるね」


「ああ、ハートノース領で起こった誘拐事件、その被害者がティナ嬢だね」


殿下の答えにサクラは頷く


「……その時ティナは恐怖で力を暴走させた、魔力ではなく能力を、その時初めてティナは能力を覚醒させそして死にかけた」


「じゃあ突然森が凍りついたのって」


フリットが驚いた顔をする、誘拐の話は聞いていたが、その日起きた森の凍結のことは知らない


「……そうティナが原因、ティナはその時以来男の人が怖くなった、さらに能力を制限をかけるようになった」


「え?」


さっきの戦い、制限をかけてる様子は見られなかった。


「……ティナの能力は魔法に関係している、普通の人より魔法の階級が上だったり速度が異常なのは能力のおかげでもある、もちろん極星魔法も、けど高威力や高階級の魔法が使えるのにほとんどが上級なんだと思う?」


「……」


「……ティナにとっては完全に無意識になんだろうけどね、死にかけたって事実が制限をかけてる、多分今のティナは本来の1割も出せない、とある条件を除いて」


「限界を超えた恐怖」


確かにさっきのティナは怯えていた、殿下だけでなく別の何かに……


「……まあ制限をしなくなるというよりも暴走に近い状態だね、今回みたいなのは初めてだけど」


「今までと違うのですか」


「……そうだね、今までというより前回が正しいかな、ティナが攫われた日ボクともう1人冒険者はアルタナさんの頼みでティナを探していた、その時ちょうど森にいた暴走も目の当たりにした」


少し黙るとサクラはでもと続けた、目には少しずつだが涙が溜まっている


「……すぐに駆けつけたさ、助けた時は倒れてた、虫の息だった、重症を負っていたのもあるだろうけど、さっきみたいな感じじゃなかった」


「サクラちゃん……」


サクラはあの時のことを思い出したのか少しだが震えていた


「……さっきのが本来の力なんだろうけど……

コントロール出来てない、魔力の使いすぎで倒れた、上手く使えるようにならないと、これ以上暴走するようだとティナが危ない」


「どういうことだ」


「ティナの力は2つ、全てを治す力と全てを壊す力、けどティナの力は強力すぎる、暴走はティナを蝕む、ティナの髪はその侵攻を示している、全て染まると崩壊が始まる、元の色もう半分もない……多分あと3回もない」


ティナの体は何かに蝕まれている


「おい!それってこれ以上暴走したらティナは……」


「フリット!!」


言いかけた言葉をアスカが遮った。


「……多分今のティナが制限をかけてるから暴走しやすいんだと、使えるようになれば暴走は抑えられるって言ってた」


「それは誰が」


「……さっき出てきた冒険者、シルフっていうハーフエルフ、彼の力は人の力を見ることが出来るの」


「すごい能力だな」


「……だからみんな、協力して欲しい……

ティナが……しっかりと……使えるように……じゃないとティナがぁティナがぁぁぅぅぅぅ」


サクラは限界を迎え泣き崩れる

いくらあまり表情に出なくて色々冒険等経験もしてるサクラでもまだ8歳だ、友達の命が危ないというのは耐えきれないものがある

アスカが近づき背中を優しく撫でる


「わかりました、僕でよければ協力しましょう」


「俺の【眼】があればどこが悪いのか分かる」


「ウチもやるよ」


「僕も今回暴走させてしまった責任があるからね全面的に協力するよ」


「……みんなぁありがとうぅ」


涙を拭くとサクラはみんなにお礼をしてにっこりと笑う


「君もそれでいいだろ、ティナ嬢?」


殿下の言葉に一斉にベッドを見る

するとベッドから体を起こし申し訳なさそうに笑いながらみんなを見た


「えへへへ……バレてました?」


「バレてるも何も少し震えてたからね、バレバレだったよ」


「そうでしたか、ははは……」


乾いた笑いをしながらみんなの顔を見る

フリットとアスカは呆れた顔してスティングと殿下は苦笑いを浮かべた、そしてサクラはというと


「……バカ」


その一言を言って後ろを向いてしまった

耳まで真っ赤にして


「サクラちゃん……今の話本当なの?」


サクラは静かに頷く


「わかりました……私、ちゃんと使えるように頑張ります」


ティナはにっこりと笑った



その日1日サクラはティナに口をきかなかったのは言うまでもない

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