第15話模擬戦ですよ

「模擬戦か、面白そうだね」


「僕は久しぶりですね」


「チーム分けはどうするんだ?」


「今回は簡単に男子対女子ってのはどうですかね」


 あとからぞろぞろとやってきた男子、時間ギリギリでタイミングよく来たので測ったんじゃないかと思う。


「そうね、ちょうど半分出しそうしてみようか」


「……じゃあ時間貰えるかな作戦会議ってやつ」


 そうだね今日初めてあったとかもあるし能力とか実力とか知っておきたいし。


「分かったそうだね30分あればいいかな」


「……うんありがとう」


 それぞれ別れて会議を始める、女子チームのリーダーはアスカにとりあえず決まった。


「じゃあどうしようか、ティナちゃんは前衛だと戦えないでしょ、だから後衛は確定、サクラちゃんは前衛かな、となるとエイルちゃんは?」


 本日はじめましてのエイルの実力は分からない、杖とかは持っていないが腰に短剣を持ってる、多分緊急用だろう


「私は近接戦闘は得意ではないので後衛ですかね」


 やはりそうだった。


「となるとバランスを取るならウチが前衛、無視をするなら前衛1人でウチが中衛をやる」


「……いいよ1人でそれにボクの能力なんだけど……」


 サクラが小声でとあることを伝える、するとアスカが驚いた顔をしてサクラを見た。


「え、強すぎじゃないそれ」


「……だから大丈夫安心して」


「分かったわその方向で行きましょう、あとはティナちゃん」


「はい?」


 突然話が振られる、私伝えるようなことなにかあったっけ


「混合魔術どのくらい使える?」


 ああ、そっちか確かにそれは把握していないと大事故に繋がるもんね


「えっと、氷、雷、爆破ぐらいですかね」


「通常と治癒、防御入れると11種類ね幅広いのはいいね、ならこうしましょう……」


 色々作戦を建て時間になる、先生が全員いるのが


「ではフィールドを起動する、今回はシンプルに障害物なしのフィールドだ」


 先生が魔石を起動するとみるみるうちに景色を変えた、草原のフィールドだ


「では両チーム準備をしてくれ」


 互いに位置に着く


「準備いいな、それでは始め!!」


 先生が開始の合図をする


「【フラッシュ】」


 開幕そうそう私は光の魔法を使い目くらましをする

 それと同時にサクラは敵に突っ込む、剣は鞘に入れたままだ


「来ます、相手は1人こっちに……」


 フラッシュの効果が終わるとサクラはもう男子の目の前にいた、狙いはエルナト


「くっ、速い、けど」


 勢いよく剣を抜き攻撃する、避けられない、今から防御魔法を張っても間に合わない

 キン

 剣と剣がぶつかる音がする、エルナトがあの速度に反応するとは思えないなら誰が


「抜刀術ですか、あと1歩遅ければやられてましたね」


 茶髪で鎧を着た男の子、あれに反応する速度は1人、

 スティングがサクラの先制攻撃を防いだ。

 サクラはすぐに2発目の攻撃をを入れる

 キン

 しかしこれも防がれるこれも防がれる


「……」


 奇襲は失敗一旦下がろうとするが……


「逃がしませんよ」


 スティングがそれを許さない、サクラより速く回り込もうとする。


「サクラちゃん危ない!【サンダーボルト】」


 私が雷魔法を使い援護する、しかしそれを避けようとしない


「させない【プロテクト】」


 体制を建て直したエルナトが防ぐ、けどスティングとは距離ができた、逃げ切れる


「殿下今だ!」


「油断してたね、ショット」


 フリットの合図でいつの間にか横にいた殿下が光と闇の粒を飛ばす


(あれ?サクラの目って金色だったか?)

 良くは見ていなかったが確かに目の色が違うことに気がついたフリット


「……!、しまっ」



 サクラの全方位から粒が飛んでくる、この体勢、速度、回避も防御も間に合わない……


「……なんてね」


 そうフリットが思った瞬間、サクラはニヤリと笑うと、サクラに向かって飛んでいた粒が突然泡となって消えた。


「なっ!」


 普通ならありえない出来事に視線がサクラに集中する、それを利用するひとつの影が男性陣の背後から忍び寄る

 シュッ


「カハッ、なんで……いつの間に」


「まずは守備専門と」


 横から飛んできた矢をくらいエルナトが倒れる


「ちっ、アスカか【ファイヤーボール】」


「作戦成功、新作だよんと」


 フリットが何もない場所に火球を飛ばした、何かが燃えるように火をあげると、そこからアスカが姿を表した


「掠っちゃったか」


 着ていたローブをフリットに向けて投げ捨て、3発、燃えるローブを目隠しに利用して矢を放つ。


「その手は知ってる【プロテクト】」


「やっぱ防がれるか」


 素早いステップでフリットから離れる、"見られない"

 為にも距離をとるしかない


「使うしかないか」


 フリットはため息をついた後自分の目を一瞬手で覆う

 すると空気が変わる


「ッ!」


 何かを感じ取ってアスカは矢を放つ、しかし矢は当たらない


「ちッ、エンチャント【誘導】【爆発】【貫通】」


 不規則に動く無数の矢が全てフリットに向かい飛んでいく


「無駄だ」


 アスカが放った矢を剣で叩き落とす、エンチャント内容も把握しているので当たった際に起こる爆発を利用して他の矢も無力化させる。


「はっ!」


 フリットは火球を飛ばす、アスカは真正面に飛んできた火球を"左"に躱すと矢を構えてフリットの方を見る。


「なっ!」


 だが避けた方向に火球がもう1つ飛んできていた、予測できなかったのでそれに直撃する。


「アスカ、お前は速度重視の魔法が飛んでくると左に避ける癖がある、それを利用させてもらった」


 火球を諸に食らったため気絶する、すぐに脱出用の魔法が発動して場外に出た。


「スティング!2秒後使え一気に決める」


「……!なにかくる」


 フリットの声を聴き一気に距離を取ろうとするサクラをスティングはさっきよりも速い速度で追い詰める。


「だから逃がさないと言ったでしょ」


「……速すぎる」


 かなり距離を離したと思ったら一瞬で詰められた。逃げきれないと判断したサクラは防御の姿勢をとる


「はああああ!」


 サクラを切り上げようとする、サクラもそれに反撃しようと剣を抜く


「止まれ!!スティング!!」


 遠くからフリットが叫ぶ声が聞こえたがサクラの反撃姿勢に気を取られ一瞬反応が遅れた。


「なっ」


 突然現れた魔法陣と青い粒に触れた瞬間、身体が凍りついた。足や手が凍りつき動けなくなる


「【ダイヤモンドダスト】」


 スティングが声をする方を見ると杖をこちらに向ける私の姿を見た、スティングはあまりの発動の速さに苦虫を噛み潰したよう顔をした。


「今です!サクラちゃん」


 サクラは私の声に反応し鞘に剣を収め突進する、それはサクラが持つ剣技


「……【加速】 壱の型」


「くっ、【プロテクト】」


 突進するサクラの攻撃を防ぐために盾を張ろうとするが……


「【五月雨】」


 スティングが張り終わるより先にサクラの剣がとどく、鎧が砕かれ斬られた場所から血が出る


「カハッ」


 スティングは血を吐き地面に倒れた、すぐにスティングの体が緑色に光ると場外に飛ばされた。

 サクラはフリットに体を向ける


「……これで3対2」


「18回か」


「……凄いね1回で当てるなんて」


 フリットが呟いた謎の数字、それはサクラがスティングを斬った回数だった。今の一瞬でそんなに切ったのかと思うが倒れた時のスティングの切り傷を見る限り相当な数斬っていたのには変わりない


「ははははは、面白い!面白ね」


「……なに?」


 笑い声が聞こえるサクラは笑い声の主を見る。そこには眩しい程の光とどす黒い闇を放つ男の姿があった。


「ペイナ殿下……」


「こんなに面白いのは久しぶりだ、僕も全力を出すとしよう」


 殿下が光と闇を腕に纏わせる、次の瞬間視界に写った殿下の姿にノイズがはしった。


「え……」


「ティナちゃん危ない!避けて!」


 横を見ると殿下が拳を構え振りかぶっていた


「1人目」


「きゃ」


 闇を纏った強烈な拳の一撃を食らったのは私のではなくエイルだった。


「え?」


 わけが分からなかった、さっきまでエイルがいた場所に私がいて、私がいた場所にエイルがいて攻撃を私の代わりに受けた形になっていた。


「ほぅ、位置を入れ替えたか、それがエイル嬢、君の力だね」


 遠くに吹き飛んだエイルは倒れて動かない、すぐに魔法が発動して場外に飛ばした。

 私は未だに何が起こったのかわかっていない、それでも、あの一瞬の出来事、気の狂ったように笑いだした殿下の一撃を見た私の心を恐怖で染めるには十分であった……

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