学園1年目

第12話試験ですよ

 


【私を悪く言うのは構いません!ただ私のことを守ろうとした人達を悪く言うのは私が許さない!】






 〜アスト王国王都〜

 試験当日、私とサクラちゃんはアスト王国王都あるクリスタル学園に来ています

 この学校は将来が期待される実力派ばかりが揃う学校でハートノース領の家から馬車で3日ほどの距離にあり姉とは別の学校になります。なんでも国王が招待状が届いたらしくここに入学することになった

 試験は2日に渡って行われる

 1日目は学力テストと基礎体力テスト

 2日目は魔法と剣術の実力を見る、という内容になっている

 そして今、試験会場で学力テストの開始を待っております。


「いいか!これはお前達の実力を見るものだ、不正をしたものは即失格、即退場だわかったか!」


(うぅ叫ばないで……)



 厳つい男の先生の声に泣き目になる私、叫ぶような声にビクビクとする。


(……ティナ大丈夫かな)


 先生が言葉を発する度怯えているだろう私を心配そうな顔をするサクラ、それでも横を見る訳には行かないのでじっと前を向く


「あのぉー先生ーもう少し声小さく出来ますか?この子、大きい声が苦手みたいだから」


 すると隣に座っていた赤茶色の髪の女の子が声を小さくするように言ってくれた。


「え、ああ済まなかった」


 先生も私に気がついたのか声を小さくし説明を続けた。


「すいませんありがとうございます」


 小声で助けてくれたお礼を言う。


「いいってことよティナちゃん」


「え……」


 どうして名前をと言おうとすると唇に人差し指を当てて「後でね」と言って間を向いてしまった。わけが分からないまま首を傾げていると


「それでは、テスト開始」


 急にテストが始まった、いや私が話を聞いてないのが悪かっただけである


(あわわ出遅れちゃった)


 少し反応が遅れ急いで紙を表にする、どうやら計算問題のようだ。


(あれ…問題そこまで難しくない?)


 紙に書かれた問題は計算問題ばっかりで簡単な足し引き算や掛け算とかだった


(お父様に言われて色んな計算問題やってたけどもしかして過剰だった?)


 そんなこと思いながら淡々と問題を解いていった、難しそうな問題もあったけど今の私にはすらすら解けるものであった。

 その後のテストも特につまづくことなく終わった。


 ―――――――――――――――



「やめ!」


 先生の合図で一斉に動きを止める


「昼休憩後に体力テストを行う校庭に集まるように着替える者は更衣室を使うようにでは解散」


 休憩時間になると私はすぐにサクラちゃんの元に向かう


「……ティナ大丈夫だった?」


「うん何とか、お昼どこで食べようか」


 テストの問題解けたという意味と先生の声にビクビクしていただろうけど平気だった?という意味の大丈夫に曖昧な言葉で答える。


「……それなら中庭に木陰になってるところがあったそこがいいと思う」


「ならウチも着いてっていいかな?」


「ふぇっ!」


 後ろから声が聞こえ変な声がでた私、恥ずかしさに耳を赤くしてしまう、振り向くとさっきの女の子が立っていた。

 サクラが私とその子の間に立つと睨みつけるようにして言う


「……誰?」


 警戒心を出しているのか重い空気になる


「まあまあお昼食べながら自己紹介しましょうな」


 サクラの言葉に気にしない様子で答える女の子、結局3人でお昼食べることになった。

 中庭の小さな丘にある大きな木の下でマットを敷いてお昼を食べる私たち、女の子からは街のことや王都について教えて貰った。


「お腹いっぱいになったことだし自己紹介しますか、ウチはアスカ、アスカ・ダイヤサウスよろしくねティナちゃんサクラちゃん」


「……なんで私達の名前を知ってる?」


 さらに警戒心を増す、確かに私なら有名な貴族の娘だから名前を知られててもおかしくはないが、サクラの名前を知っているのはおかしいと思う


「ああ、そういう事か、噂になってる本人は知らないってことか」


「噂?」


 なんの事か分からない、私やサクラに関する噂なんて聞いたことも無い


「半年以上前に起こった誘拐事件その被害者が4柱貴族の1つハートノース家の天才少女、その子を救ったのはハートノース家当主が昔助けたというハーフエルフの人間の連れ子ってのが噂、そして4柱貴族と王家だけがその噂の詳しい内容を知ってる、もちろん関わった人の名前も翌日に起きたシーバッハ帝国滅亡のことも」


「……そういう事だったのか」


 これを聞き警戒心を解いたのか重い空気が軽くなるのを感じた。


「まあティナちゃんの今の状態のことは多分私しか知らないと思う」


「そうですか……」


 やっぱり公には出来ないか、したら大変なことになるもんね、学校だって行けなくなる可能性もあるし仕方ないか……けどバレるのも時間問題だと思う


「でも凄いなー今年は、なんでもうちらだけじゃなくてスペードウェスト家の子とクラブイースト家の子、王子もこの試験受けてるんだから入学は確定だと思うから伝説の世代になるねみんな同級生」


「ほぇー凄いそんなことあるんですね」


 4柱貴族に王族が同級生なんて聞いたことも無い、確か王様からの招待でこの学校に来たのはそういうことなのか、ほんとに凄い奇跡に驚く私


「……あ、ティナ、アスカさんそろそろ時間」


「そうだね着替えに行かないとだからね」


 立ち上がり片付けをして更衣室に向かう私


「だね、それじゃ行きますかってティナちゃんそっち反対だよまぁまだどこに何があるか分からないよね」


「ふぇ?」


 私だけ違う方向に向かおうとしてたところ止められ恥ずかしくて耳まで赤くなる



 〜校庭〜

 テストは徒競走と持久走をやる

 徒競走の合図は先生が指で小さな爆発魔法を起こしてスタートする

 持久走は2キロ走る

 結果からいうと特に問題なく上位にくい込んで終了、サクラが学校新記録を出す速度でどっちもゴールした、分かってはいたけど運動に関してはずば抜けて凄いね


「では明日は実技になる各自ゆっくり休むように」


「「「はい」」」


 解散したあとは少しアスカちゃんと喋ってから王都にある別荘に戻った。


 ―――――――――――――

 夜

「サクラちゃん凄いどっちも新記録なんて」


「……ありがとう」


 サクラは少し赤くなる褒めると照れるところがまた可愛らしい


「……今日は早く寝て明日に備えよ」


「うんそうしよおやすみなさい」


「……おやすみ」




 試験2日目

 午前中に剣術の試験、午後に魔法の試験という内容なっている、今はサクラが先生と戦っている

 先生はかなりの実力者らしいがジル兄様よりは強くないためサクラが先生の剣を全て避けるということをしている、す、凄い


「……飽きた」


「え?」


 サクラは一言言ったあと一瞬で後ろに回り首元に剣を当てる


「……ボクの勝ち」


「参りました」



「お、そっちも終わったみたいだね」


 何か怪しい剣を持って声を掛けてきたアスカ


「あ、アスカちゃんこんにちは、はいサクラちゃんの圧勝です、アスカちゃんは?」


「サクラちゃんさすがだねぇー、私の相手なら向こうで伸びてるよ」


 と指を刺された方を見ると若干髪がチリチリになった人が倒れていた、普通の剣ではあんなふうにならないはず


「まさかだけど……」


「魔剣の使用を禁止しなかった向こうが悪い」


「ですよねー」


 普通の剣だとあんな焦げた髪にはならないもんね当たり前だよね


「と、ティナの番だよ」


「はい」


 急いで相手の場所に向かうと知ってる人が立っていた


「あ、セラお姉さん、お久しぶりです。」


「ティナちゃん久しぶり、大丈夫だった?」


 セラさん、お姉ちゃんの同級生で騎士を目指しててお姉ちゃんの親友でライバル?成績首位を取りあってるからライバルでいいよね


「はい大丈夫です。もしかしてセラお姉さんが相手ですか?」


「もしかしなくてもそうだよ、突然呼び出されて説明受けたよ、大変だったね、でも知り合いだからって手加減するつもりはないよ」


 そう言うとセラは剣を下段に構えて開始を待つかのようにピタリと止まった。

 私も正面に構えて待つ


「両者準備はいいな、始め!」


 開始の合図と同時にセラは突っ込み剣を振り上げる

 私はそれを受け止める


(速い、それに重い)


 剣を流し体制を立て直すと今度は私が攻撃を仕掛ける


(力は負けてるなら手数で勝負)


 私は色んな方向から素早く攻撃をする、力がない私はジル兄さんから速さで勝負するべきと教えられた、がセラはそれを全て裁き私に一撃を与えた


「カハッ!」


 お腹にもろに食らった私は下がって構え直す


「ま、まだ」


 戦う意志を見せるとセラは剣を収める、もう終わったかのようにこちらを見た


「え?」


「ティナ、戦場では敵に一撃を貰った時点でまだはもうないほんとだったら死んでるよ」


「…………」


 確かにそうだ戦場に待ったやまだはない急所になる所に一撃貰った時点で負けなのだ、サクラやアスカはしっかり倒したのに私だけこんな感じで悔しいと言う表情を浮かべる


「まあそんな悔しそうな顔しないで、正直少し危なかった、もう少し速ければ捌ききれなかったし危なく使うところだった」


 褒められたのだろうけど嬉しくはなかった負けは負けだから……


「ありがとうございます」


 お礼をいうと肩を落としてその場を立ち去る、やっぱり悔しい、するとサクラが寄ってきた。


「……しょうがないよティナ、あの人すごく強い、ボクでも勝てないよ、その人を追い詰めたんだから」


「え……」


 思いがけないサクラの言葉に驚く


「サクラちゃんでも勝てないってそんなに……あ、」


 強かったのと、言いかけたところでセラの言葉を思い出す


「使いかけたってもしかして」


「……うん、多分能力」

 

 やっぱりそうだったんだ、セラさんの能力は知らないけどきっと凄いんだろうな……それでも


「やっぱり悔しい……」


「……その悔しさをバネに伸ばせば大丈夫だよ」


「んーそうだよティナちゃんあの人ここにいる中では1番強いからそんな人を追い詰めたのよ自信持ちなって」


 アスカもフォローを入れる、1番強い人を追い詰めたのか私は


「わかった……」


 その後私達は昨日食べた場所でお昼を食べて、午後の準備をする

 私は帽子と杖を持っていく、サクラは剣を、アスカはなんと手ぶらである、すごい魔法使いなのかな、でもダイヤサウス家って魔法と言うよりも武器のイメージあるけど


「じゃあ行こうか」


 アスカが私達の準備が出来たのを確認して出発した。場所は同じく校庭だ。



 午後

 魔法の試験はシンプルで的に向かって得意な魔法を使い攻撃するという内容だ


「火の矢よ、敵を撃て!【ファイヤーアロー】」


「エンチャント【火炎】」


「はあああ!!」


 それぞれが色んな魔法を使う、エンチャントと詠唱無詠唱様々だ


「次、アスカ・ダイヤサウス」


「先生、ウチ多分Sクラス確定だからやりたくないんだけど」


 まさかの発言にびっくり、この試験受けないつもりだから手ぶらだったのか


「だめだ、いくら優秀でもやらなくてはならない」


「ちぇー分かったよ、えーと、とうっ」


 アスカはそこら辺に落ちてた石を拾い投げた 、一瞬だが魔力の流れを感じた。


「お前な、いくらやる気ないからって……」


 ドカーン


 先生の言葉は突然起きた爆発音によってかき消された

 さっきまで的があった場所には大きな穴があいていた


「やる気がないからなんですか?」


「はぁー、お前、''いくつ"付与した」


「えっと、3つ、【爆発】と【属性強化】と【破壊】」

 


「そこら辺の石に3つも付与するとはさすが、だがやりすぎだ一時中断しなければならなくなった」


「あははは……ごめんなさい」


 あっさり謝ったアスカ、後ろに控えてる私達のことを考えないでやったことを反省したみたいだ、よってやりすぎたとは思っていない模様


「皆、悪いがこの状態だ少しばかり待ってくれ」


 返事がない、みんなさっきの爆発に驚いて固まってるみたいだ、それもそうだよねいきなり大爆発したら心臓に悪いもんね


「アスカちゃん凄い」


「……一瞬で3つも付与するなんて凄い」


「あはは、そうかな」


 アスカは耳をぽりぽりと掻いた。

 しばらく話してると教師数人が土の魔法を使い地面を元に戻し再開する


「これより再開する、次サクラさん準備を」


「……ボクの番だね」


「サクラちゃん頑張って」


「……うん」


 サクラは立ち上がり指定位置に向かう、その顔は少し笑っていた。

 真面目なところで笑うことはないから不安になる


「……あんなの見せられたんだ、シルフには止められてたけどちょっとくらいはいいよね」


「次の方始めてください」


 先生が合図をする


「……スーハー」


 サクラは大きく深呼吸をする、なんか肌がピリピリする


「……エンチャント【雷】」


 サクラが持っていた剣がバチバチと音を鳴らし、電気が流れる


「はあああああ!!」


 剣を地面に叩きつけると電気を帯びた斬撃波が地面を削りながら的へ飛んでいく

 的に当たると耳が痛くなるような音をたて的を破壊した、砕けた的はビリリと音を立てながら地面に転がった。


「……ふぅ、ってあれ」


 周りにいた人達が大きな口を開けて動かない、そんな異様な光景にサクラは首を傾げて戻る


「お疲れ様、凄いよサクラちゃん!」


 帰ってきたサクラに抱きつこうとした私、それに気がついたサクラ


「……あ、今ボクに触れると」


 手を前に出して触れないよう言ったがそれを無視して抱きつく私

 パチン


「イタッ、え、え?」


「……ごめん、まだ抜けてないからしばらく触らないほうがいい」


 突然の電気攻撃にパニックなる私、よく見るとサクラの周りにパチパチパチと音をだす電気が帯電していた。


(ここまでの威力は初めてのだよー)


 手が若干痺れた、苦笑いを浮かべてしまう、やっと現実に戻ってきた先生達が試験続ける

 そして


「最後ですね、ティナさん準備をお願い致します」


「よーし、サクラちゃんもアスカちゃんも凄い技使ったんですし、私もとっておき見せちゃいますよ」


 私は指定位置に立つとペンダントを握りポツリと呟いた


「アクリアさん私の体を守ってください」


【わかりましたティナ様】


 ペンダントが光始め青いベールが私を包む


「行きます!」


 私は杖を前に構え''呪文''を唱える


【蒼き光よ、全てを凍りつかせよ、銀色の世界はやがて白の世界に姿を変え時間すらも止めるそこに動くものは何もなく生きるもののない、凍てつく大地よその時を奪え】


 的を中心に大きな魔法陣が3つ現れる、周りの空気は温度を下げ冷たい風を送る


【アブソリュートゼロ】


 魔法陣が1つにまとまり中にあるものを凍りつかせ的はヒビを入れ崩れた。


「はぁはぁ、や、やっ……た……」


 魔法をうち終わると頭痛と共に私は意識を手放した


「……とと」


 地面に倒れそうなところをサクラが受け止める


「……ん、やっぱり熱出ちゃったか」


 額を触り熱くなってるのを確認する


「サクラちゃん今のは……」


 アスカが駆け寄り心配そうに見る


「……ティナの現状の最大魔法、杖とペンダントがなければ暴発して危ないからあまり使って欲しくないんだけどね、下手したらここら辺氷漬けになるし」


「ティナちゃんは大丈夫なの?」


「……大丈夫、魔力の使いすぎで熱出てるだけだから、元々体弱いのもあるけどね」


「ならいいけど……」


 サクラはそのまま先生の所に行き3度放心する先生に声を掛ける


「……先生、先帰るね、ティナを別荘に運ばないと行けないし」


「あ、ああ」


 先生に帰ることを告げるとティナをおぶって別荘を目指した。

 あの後私は3日ほど熱で寝込んだ、合格発表とクラス分けはサクラが見に行った

 見事3人とも合格Sクラスだ

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