第11話あれから.......

 〜アスト王国王宮〜


「報告します、ティナ様が意識を取り戻したとアルタナ様から連絡が来ました」


「ご苦労さま、で、あの手紙は本物だったのかい?」


「その件は私が」


 茶髪の男が前に出る、手には今回の件に関する報告書を持っていた。


「あの賊共が持ってた手紙と王宮に届いた手紙には同じ印が押されておりました、これでシーバッハ帝国が黒幕だと確定しました」


 シーバッハ帝国、最近出来たという小さな国、我儘と傲慢な王が支配する国、最初はお利口さんにしていたが最近は悪行が目立ち始めている


「ほぅ、ではこちらもお返しに軍を送り付けよう……と言いたいところだがもうハートノース家は動いてるんだろ、あの国も馬鹿だなー王家や他の家に手を出すならともかく1番手を出してはいけない家に手を出すんだから、しかも今1番可愛がってる子を瀕死の状態で返すし、これは明日には国が滅びてるぞ」


 陛下の言葉に周りの人は苦笑いを浮かべる

 くっくっく、と陛下が笑っていると兵士が扉を開け慌てた様子で入ってきた。


「どうした、慌てて、緊急事態か?」


「あ、いえ申し訳ございません、ただ……」


「ただ?」


 慌てるほどのことではないらしいが、何かあるみたいだ。


「ミナ様とジル様が出撃なさったという報告を受けました更に各地で竜巻が発生しております」


「あぁ……」


 陛下とその周りに立っていた3人の男が頭を抱えた、1番向かわせてはならない人が敵国に出撃したという


「おい、被害報告書の用意とと救援部隊を竜巻近くの村に向かわせろ」


「ハッ」


 兵士は慌てて下がった。

 陛下は報告した兵士が下がるのを見ると苦笑いを浮かべながらつぶやく


「あ〜、可哀想にこれは明日更地になってるぞあの国ははは」


 そんな乾いた笑い声に他の貴族達は顔を青くした、あの家に手を出すと国1つ無くなるらしい



 〜アスト王国国境付近〜


「あ、アリア落ち着いて怖いから」


「アルベルト兄様、ティナが死にかけたんですよ落ち着いてられますか!兄様だってそうでしょ」


 丘の上で怒りに任せて能力を暴発させるアリアとそれを止めようとするアルベルトが先にいる兵士を見ていた、辺りには竜巻が発生しており強風が吹き荒れる


「そうだけど、お前が落ち着かないとこっちまで被害が出る」


 さっきから竜巻に巻き込まれた物が降ってきて避けるのが大変である、落ち着いて貰わないと次に当たるのはこっちだろう


「で、ジル兄様とお母様は?」


 アルベルトの言葉に耳を貸さずに兄と母の場所を聞く、さっきから見えないのが気になるみたいだ。


「先に王宮で暴れてるはずだよ、僕達は辛いけどこの国の人たちを殺して周る、王の責任は民の責任、罪は同じだよ……ていうのが建前で村に潜んでる兵士の殲滅と王都の破壊、無関係の人の避難だよ、でそろそろほんとに落ち着いてくれるかな、いくら僕の防御魔法でも君の風は抑えられないから」


 アルベルトが張っている防御魔法にヒビが入り始めている、そろそろ限界だとアリアに伝えるとため息をつかれた


「はぁーわかったわよ、とりあえず目の前の奴ら殺してからね」


「はいはい」

 どうやら抑えてくれるみたいだ、助かったと安堵の息を漏らすアルベルトであった。

 アリアは先にいる1000を超える軍隊を見る


「はぁーほんと命乞いのひとつでもあればちゃんと繋がった状態で殺したのに……」


 ため息をつくとアリアは剣を抜く、その剣は風を纏っている。

 アリアが横に剣を降ると一筋の線と共に軍隊は真っ二つになった……体が


「ほんといつ見てもその能力惨い」


 アリアの能力【風鎌】は鋭い風の刃で敵を切り裂くというものでアリアの目で見える範囲なら距離関係なく届く、落ち着いている時は風の刃だけで済むが今回見たく怒っていたりすると風が溢れて辺りに竜巻を作ってしまう弱点がある。


「そうですか?見方によってはアル兄様の方が惨いと思いますし、私よりもジル兄様やお母様の方がやばいですよ」


「それもそうか……さて僕らも急ぐとしよう」


 ―――――――――――――


 〜シーバッハ帝国王宮〜


「て、敵襲ー」


 兵士が壁から逃げ下がったと同時に壁が爆発して穴が開いた。


「おいおい敵襲って、こっちは2人だぜっと、なんだ?兵士の他に冒険者ぽい奴らまでいるな」


「ふふふ楽しそうじゃない、敵は多いほどやりがいがあります」


 ジルの手には大きすぎる剣が握られている。

 そしてもう1人はローブに杖といういかにも魔法使いと言う感じの格好だ。


「母上、顔が笑ってませんよ……お、古参冒険者発見、名前は確か……そうそうSSランク冒険者【谷削り】アントだ、いやー残念だここで人生終わるなんてな」


 そう言って髭の生えた大柄のおっさんにニッコリと笑顔向けるジル、アントと言われた男は自分の持っていたハンマーを握り直す。

 さっきから攻撃を仕掛けようとしているが謎の威圧がそれを許さない、それどころか辺りの底辺冒険者の中には自害する者も現れている


「お前らは!LSランク冒険者【凶星】ジル

 それに【極光の魔女】ミラーナ・ステラ」


「あら、覚えてる人いたのね、何だか嬉しいわ、でもその情報古いわね、まあいいわ死んでく人に名乗るつもりないですもの」


 ミナの周りに光の粒が舞い始める


「さあ、自分達の行いを後悔しなさい」


「カハッッ」


 光の粒がアントの心臓を貫いたのを合図に城内の戦いの火蓋が開いた、2人に対して敵は未知数、冒険者から兵士までいるなか残虐で一方的な殺し合いが始まった。


 シーバッハ帝国王都は天からの光と共に跡形もなくなっていた、王の姿は無い、恐らく光に呑まれて消えたのであろう、近辺の被害も大きく建て直すのは不可能に近い状態であった。

 シーバッハ帝国滅亡という報告だけが王宮に届いた


 ―――――――――――――――


 事件から1ヶ月いつも通りの日常を取り戻しつつある、返り血まみれで帰ってきたジル兄様とお母様を見た時は倒れてしまったけど私のために戦ってくれたと聞いて嬉しくなった。

 変わったことは2つ魔法の練習にシルフさんが着いてくれるようになった、実質先生みたいな位置だ、シルフさんといる時間が長いからかまだ少し怖いけど普通に喋れるくらいにはなってる、他の男性はまだ怖い……

 そしてサクラちゃん、私の初めてのお友達身長は私よりも少し大きく運動ができる子だ。

 魔法は付与魔法と治癒しか使えない、普段は一緒に家の手伝いやお話をしている、買い物も一緒に着いてきてくれて私が男の人に話しかけられてると助けてくれる、そのお礼として私は勉強や魔法は私が教えたりしている

 周りからは仲のいい姉妹に見えてるらしい


「……ティナ、ここは?」


「ここの問題はここの式を使ってね……」


 そんなこんなで半年が過ぎる

 魔法はシルフ先生のおかげで火属性以外は上級無詠唱まで使えるようになった、あとは秘密にとある魔法まで教えて貰った、こっちはまだ詠唱付きじゃないと使えないけどね、火属性は相変わらず苦手だが中級までにはなった

 剣術の方はサクラちゃんが面白いくらい覚えるのでジル兄様はご機嫌だったけど、サクラはつい先日1本取っていた 、私はと言うとようやくまともに打ち合えるようになったくらい

 そして今サクラちゃんと一緒にお父様に呼ばれ部屋に来ていた


「失礼します、お父様お話とは?」


「……失礼します」


 父が呼び出すのは珍しいことではない、薬を届けて欲しいとか手伝って欲しいとかでよく呼ばれる


「来たか、話というのはな学校についてだ」


「学校ですか?」


「サクラの学費はうちで出すことになっていて入学は確定してるんだが……ティナ、お前は行っても行かなくてもいい選べ」


「え……」


 正直迷った、アリア姉様が行ってるの見てると楽しそうだから行ってはみたいけど、未だに男の人が怖い私は行っても大丈夫なのかと思う、まだ同じ年の男の子にあったことはないからわからないけど多分無理な気がする


「……ティナが行かないならボクも行かない、ティナが行くならボクが守るよ」


 どうしようかと迷っていたらサクラが口を開いた、守るって


「サクラちゃん……ありがとう、私頑張ってみる!」


 あまりの嬉しさに抱きつきたくなるけど今は我慢しよう


「わかった、1ヶ月後に入学試験という名のクラス分けがある内容は変わってなければ魔法、剣術、学力のはずだ、魔法はどんな種類でも大丈夫、もちろんエンチャントも可だ全て高成績だと1番上のクラスになるはずだ、そこを狙え、今日からの1ヶ月努力を怠ることは許さないいいね」


「「はい!」」


 それから1ヶ月家の手伝いを控えて魔法や勉強の日々を過ごしのであった。

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