第10話バレました
ティナはあれから寝続けている、顔には傷はなく今まで通りの綺麗な顔だ……しかしその美しいかった空色の髪は今は半分真っ白に変わってしまっていた。
どれくらい時間が経ったのだろう、ティナはまだ目を覚まさない……折れた箇所も傷ついた内臓も全て治した、目立つ外傷も全て綺麗に治した……異常もない呼吸も安定している、最善を尽くしたはずだ、なのになぜ起きてくれない……少なくとも3日は寝たきだ……頼むから目を覚ましてくれ。
「旦那様……そろそろ食事を取らないと」
「ああ、わかってる……」
メイドが声をかけるおそらく疲れきっている俺の表情を見て不安になっているのが分かる
そういや何も食べてなかったな、最後に口に入れたのはいつだったか、目眩もする、そろそろ限界か……
このまま娘は、ティナは、寝たきりになるのか
俺はイスから立ち上がり部屋から去ろうとする
「ぅぅ……ここは……?」
「え?……」
後ろから声が聞こえ振り向く
そこには体を起こして辺りを見渡す
「ああ……ああ……ティナ……よかった……よかった」
「おとう……さん……?」
ほんとは良くないとわかってるけど目を覚ましてくれた嬉しさに思わず抱きつく、涙が溢れ出る、ちゃんと戻ってきたのだ。
「そうか……私……帰って来れたんだね……死んでなかったんだね……うぅ、うわあああんああああ」
ティナは生きて帰ってこれた嬉しさと安心で大粒の涙を出して泣いた、今までどんなことがあってもここまで泣いたことはなかったティナが大声をあげて泣いた、相当怖かったんだろう
「大丈夫だよ、もう大丈夫だからな」
俺に抱きつき泣いた、そんなティナを俺は優しく撫でて落ち着くのをまった。
――――――――――――
よく分からなかった、夢なのかそれともそうではないのか、それでも確かに私はさまよい、そして未来を見た、白い空間で過去を探せと言われ去ったあとも何だかふわふわと浮き何も無い所でただただ過ごした。
戻り方が分からなかったのもあるが何だか浮いていたい気分だった、それでも時間が過ぎていくと辺りは黒くなり何も無い所がさらに何も見えなくなる
もう帰れないのかなと泣きそうになった時一筋の光が私を導いた、その光に向かい進むと見た事のある天井が目に入ってきた、けどどこか分からないとりあえず体が動かせるのを確認すると起き上がり辺りを見渡す。
「え?……」
誰かの驚いた声を聴きその方向を見ると疲れた表情の父がそこにいた、そこで私はここが家の病院だと、戻ってこれたのだと理解した。
「ああ……ああ、ティナ、よかった……よかった……」
父に抱きつかれる、いきなりでびっくりしたが暖かい感触が伝わる、そこで私の中にあったものが込み上げてきた、戻ってこれたんだって、死んでなかったんだって、怖かったって
父に抱きつきめいいっぱい泣いた、父の大きな手が私を撫でてくれた。
だいぶ落ち着き、泣きやんだ私は今、大声で泣いたことが恥ずかしくなり、ベッドに埋もれてる。
多分耳まで真っ赤になっていると思う。
「……アルタナさん、サンドイッチ持ってきたよ」
「ああありがとうサクラ」
知らない声が聞こえて私は体を起こし声がした方を見る、そこには桃色の髪の女の子が立ってた、誰だろうか、静かな感じがする。
「えっと……この子はサクラ、ティナを助けてくれた1人だよ、サクラ、シルフはどこに?」
「……今呼んでくる」
サクラと呼ばれた少女はシルフという人を探しに出ていく
「あの子確か……」
何か聞いた事ある声を聞きどこで会ったか思い出そうとする、
「あっ、確か街であった」
ようやく思い出した時にその人は入ってきた
「アルタナ、娘さんが目覚めたって!」
「ああ、ティナ、紹介するよこっちはシルフ、お前を見つけてここまで運んでくれ……ティナ?」
(男の人!)
突然、その人と私を殺そうとした人が重なり、体が震えだす、また殴られる、また蹴られる殺される
「これは……どういうことだ」
私はその人の姿を見るなり離れるようにベッドの端に行きシーツで身体を隠した
まるで何かから逃げ隠れするようにし、弱々しく酷く怯えていた、今にも泣きそうになる
「大丈夫かい?」
「ひぃ」
(殺される近づかないで)
その人が手を伸ばすと私は、更に逃げるようにして体を小さくした
「これは最悪だな、セナ!いるか、近くの街から男と女2人ずつ連れてきてくれ」
父は慌ててセナを呼び街の人を呼びに行くように指示をした
「アルタナ、これどういうこと?なんで僕こんなに怖がられてるの?」
「……シルフ、この子に何かやった?」
サクラはシルフを睨みつけるように見る、流石にここまで怯えられたら何かしたのではないかと疑うのは当然であろう
「いやいやいやなんにもやってないし、サクラは僕とずっといたでしょ」
「シルフは何もしてない、けどこれはなかなか癒えない傷だぞ……」
――――――――
ティナがシルフから逃げるようにしたそのあと、街でティナがよくお世話になった店の人達がセナと一緒に来たが、男の人にはみんな同じ反応を見せた。
ああ、嫌な予感があたってしまった。
「これで確定だな、ティナ、落ち着いて質問に答えてくれるかな?男の人が怖い?」
「…………はい……」
男性恐怖症……対人恐怖症のひとつで対象が男性になる、男の人にひどいことをされたのがトラウマとして表される
ティナの場合、今回攫われ、暴力を振られたのが原因であろう、クズ共だ、殴っり蹴ったりした後に無理矢理犯そうとしたのかもしれん、生きているなら一生地獄を見せるのだがな
「シルフ、申し訳ないがティナがお前に慣れるまでしばらく我慢してくれ」
ほんとに申し訳ない気持ちになる、命を救ったのにその子から拒絶されるのは気分が良くないだろう
「まああれでケロッとしてる方が怖いよ、誰もが死にかけることはトラウマになるからね、ただどうしても話したいことがある、2人にさせてくれないか」
「どうしてもか?」
俺はシルフを睨みつける、今のこの状況を見てなんで2人にしないと行けないのだ
「どうしてもだ、この子の今後に関わる」
シルフは真剣な顔をして返す、こういう時のシルフはどんなことがあっても食い下がらない、諦めるしかないようだ
「はぁー、分かったよ30分だ、それにあまり近づくなよ」
「有難い」
―――――――――――
アルタナとサクラが部屋をでたのを確認すると、シルフは扉に鍵を掛け指を鳴らし、何らかの魔法を張る
「防音魔法を使った、これでゆっくり話せるね……そんなに怯えなくていいこれ以上近くには行かない」
「…………」
怪しい、ただ話すのにどうしてここまで厳重にする必要がある、まさかこの人もあの男の人と同じなのか
「さてと早速だが君、この世界の者じゃないね、アルタナの話からちゃんとしたこの家の子だから転生者になるのかな」
「え……」
転生者であることは誰にも言っていないはずだ、それに前世の記憶もないからおかしな行動はしてないはず、なんで分かったのか
警戒心が増す
「警戒しなくていい、実は僕もこの世界の者ではない、ただ君とは違い転移の方だ、どうして分かったか知りたいだろ、それは君の魔力と力が少しおかしいんだよ」
思いもしない答えに驚く、まさか自分以外にこの世界の人じゃない者がいるなんて、これ以上警戒しても進まないため警戒心を少し解いた、が、まだ怖いため目を合わせて喋れない
「おかしいって?」
「君は魔法に優れたこの家系で過ごしたから気が付かなかったかもしれないが君は普通の人より魔力が異常に多い、今までは無意識でセーブしてたかもしれないけど今回の件でリミッターが外れた、その証拠に君は力が暴走した時に極星魔法を使った」
「え……」
確かに魔力が多いのは自覚していた、自分と同じくらいの子がやっと初級魔法を数回使えるのに対して私は中級魔法を何回も使える、がそれは家の血筋だと思っていた、それに極星魔法を使えるくらい魔力があるなんて想像できない
「【アブソリュートゼロ】全てを凍らす魔法そんな強力な魔法をかなりの広範囲で使った本来なら魔力の枯渇で死んだるはずなのに君は生きていた」
かなりの広範囲がどのくらいかは分からないが本来なら死ぬ量の魔力を使ったのは分かった、もしかしたら枯渇して死んでたかもしれないという事実に顔を青くなる
「次に能力だ、これに関しては少しややこしくなるな、さっき僕は転移してきたと言ったけど僕も能力者だ、この世界と同じく人が能力を持つ世界は他にもある、だがどの世界も人が持つ能力は1つだけだ。
けどその例外、2つ以上能力を持つ者、その能力の片方は神に選ばれた能力、【神能】と言われてる、生まれつきある能力とは別に何らかの理由で開花する、僕もその1人だ、そして選ばれし者はほとんどが訳ありだ、この説明で何が言いたいか分かったね」
「私が2つの能力を持っている?」
けど私は能力を使った事はない、それどころか自分の能力すら分からない、今回の暴走だって元の能力がまたまた開花しただけかもしれないのになんで分かるの?
「そう、ただそれだけじゃない、僕の能力のひとつ【複製】は触れた相手の能力を使うことができる力だその際に色んな情報が入ってくる、能力名やその能力がどんなのか、使いたかは、とか色々ね、ただ上手く発動しない時があるそれは何かによって能力が封印されているか神の能力の場合だ」
「神の能力?それがさっき言っていた神能のこと?」
「ああ、どんな理由で持つのかはまだ分かってない、神に近い力が使えるようになるんだ、2つ以上持ってる人のほとんどが神の能力者だ
しかし君はおかしかった、街でぶつかった時に複製が確かに発動したが、君の能力は見えなかった、次に君を救った時にもう一度発動した……そして君の違う能力に対して発動したんだ、けどそれも見えなかった」
それで私が2つ能力を持っていることが分かったのか、それもどっちも神の力
「こんなことが初めてだったので君のお父さんに何か特別なことはなかったかと聞いたんだ、そしたら君が5歳の誕生日の時にヴァースを名乗る者の手紙が届いたらしいじゃないか
世界の観測者ヴァース、本来なら世界に干渉しないあいつが君に手紙を送ったということはあいつは君を特別視してる、それで転生者と分かったよ」
「そう……ですか……それで私に何か?」
長々と話私の秘密まで握ったんだ何か要求があってもおかしくない
「そんな大きなことはない1つの願いと2つの質問に答えてくれればいい」
「…………分かりました、ただ父とかには内緒にしてください」
ここで転生者とバレたらどんなことをされるか分からない、もしかしたら捨てられるかもしれない
「ああわかってる、では早速質問するね
ティナちゃん夢の中で未来をを見たかい?」
首を縦に振り答える
「はい……気を失ってる間ですかね今の私の未来を見ました、そしてその後おばあちゃんがこれがあなたの未来だって、回避するなら過去を探しなさいと」
この質問をするってことは同じことでもあったのかな
「やっぱり同じか、でも過去については……次にカルディナって名前の人はあったことはあるかい?」
首を横に振る
「分かったありがとう、じゃあお願い聞いてくれるかな?」
「はい」
「では、サクラと仲良くしてくれないかい?彼女君と同じ歳なんだけど訳ありでね、3年近く僕としか触れ合ってないんだよお願いできるかな」
サクラ……あの桃色の髪の女の子だよね、訳ありってなんだろう、でも同い歳の女の子と仲良くなれるのは嬉しいことだ
「はい分かりました」
「そうかい!ありがとう」
シルフは椅子から立ち上がり近く
私は逃げるように下がる
「ひぃ来ないで!」
いきなりでびっくりし、手を前に構える魔法を出そうとしてしまった。
「あっ、ごめん、そうだったね、そろそろ時間だから僕は立ち去るとするよ、ただ気をつけてね君の能力は世界を変えるレベルにまでなると思われる決して間違えないように、それじゃよろしくね」
そういうとシルフは鍵を開け防音魔法を解き廊下に出ていった
世界を変える力か、私はまだ能力についてなんにも理解してないんだけどね、名前とかもないし、と考えていると扉の方で桃色の髪の少女が顔を覗かせていた。
「……シルフに何か変なことされなかった?」
どんだけ信用ないのあの人、普通に優しい人だと思うけど
「大丈夫です、ただ話しただけですから、えっと自己紹介がまだでしたね、私はティナ、今回は助けてくれてありがとうございます」
「……ボクはサクラ、お礼ならシルフに言ってね、それで、えーっとよろしくね」
サクラは優しく微笑んだ、それに私もニッコリと笑う
「はい!よろしくお願いします」
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