第9話暴走 そして

 ーー???ーー


「この世界に帰ってくるのも10年振りくらいか」


 男はつぶやく


「………シルフ、森で迷ったの誤魔化さないで」


 少女は男のつぶやきを叩く

 時刻は夕方2人はやっと森を抜けとある家の前にいる。


「ここが僕の恩人がいる家だよ」


「……シルフ、もしかしてさっきの女の子気になってるの?」


「ああ、バレたか、ちょっとね、ここに立ってるのもあれだし入るか」


 男は家の門を開け広すぎる庭を抜け玄関の扉を開けた、瞬間男の怒号が響いた。


「おい!見つからないってどういうことだ!街に向かったんじゃないのか!!」


 怒声を放っていたのはこの家の主だった。


「アルタナ、お前が怒ってるなんて珍しいじゃないかどうしたんだ?」


「あ?ああ、誰かと思ったらシルフか、ちょうどいいシルフ手伝ってくれ緊急事態だ」


 主のいきなりの発言に男は真剣な顔になる


「何があった」


「娘が行方不明なんだ、買い物に行かせたが帰ってこない、メイドと兵士を何人か街に向かわせたが見つからない」


「娘か、昼間に街にいたもしかしたら見てるかもしれない特徴は」


「ミナと同じ空色の髪をしてる女の子だ身長は普通の女の子より少し小さいくらいだ」


「空色の髪の女の子ね……ん?その子って魔力がある青いペンダントしてたかい?」


「ああそうだ!どこであった!」


「やっぱり……街でぶつかった、どこか懐かしい感じしたけどそういう事か、分かった、サクラ!今の話聞いてたね行くぞ」


「……分かった」


「っと、すぐ戻ってこれるようにと、【ポイントマーク】」


 男は玄関を出ると消えた。

 主は男が消えた場所を見つめる


「お前とアルが頼りだ頼んだぞ」


 ―――――――――


 シルフ達は空にいた。


「サクラはどう思う?」


「……街にいなかった話だし帰り道で何かあったと思う、多分誘拐とか」


 シルフは顎に手を当てて考える


「それは充分あるな、としたら森の方かそれとも谷の方だな、どっちだと思う?」


「……谷だと攫うには少し目立ちすぎる多分森」


「となるとまずいなここら辺の森は魔力が充満してて探知魔法を下手に展開出来ないちょっとでも調整間違えると魔力災害が発生して魔物が溢れる」

(くそ!めんどくさい事になったぞ、奴隷として売るなら隣の国に行くはずだ、魔物を気にしないで進んでたら夜の探索は難しいぞ盗賊とかは目がいい、明かりなしでも充分に進めはずだ)


 日が落ちてくるのを確認して焦りが増す。


「チッ、降りて森の中を……」


 シルフの言葉は最後まで続かなかった

 っーーーーーーー!!

 叫び声が森の中から響き、聞こえた、次の瞬間大きな魔法陣が現れ魔法陣の中のものは全て凍りついた


「……シルフ!今の声街であった」


「ああ分かってる!」


(今の魔法、そしてこの範囲、まずい!)


 急いで魔法陣がある所に降りる


「サクラ!急ぐぞ!魔法陣無効化してくれ」


「……了解」


 返事をするとサクラは魔法陣に触れる

 すると魔法陣にヒビが入り割れる


「……行けるよ」


「ありがとう行くぞ」


 そう言うとシルフは姿を消した



【建物内】

「ここだな」


 凍りついた森の中心にあった建物に着いた

 中に入ると数人の男が凍り死んでいた


「……シルフ!いた、まずいよ!」


 奥から声が聞こえ向かう、するとそこにはひどい痣と血に汚れた少女が床に倒れ荒く呼吸をしていた。少女の体は冷たく小刻みに震えていた。


「確かにまずいな急がないと、サクラ応急処置を」


「……ああ」


 サクラと呼ばれた少女の手から緑色の光が出て倒れている少女に触れる


「これは……なるほどそういう事か!危なかったこれがなければ死んでいた」


 シルフは少女の近くに落ちていたペンダントを見つける、そのペンダントは弱々しく光っていた


「……血は止めたけど危ないのには変わらない早くしないと」


「分かってる、ちょっと待ってね」


 シルフは少女の体に触れる


「時よ……動きを止めろ」


 すると少女は急に固まり動かなくなった


「よし急ぐぞ、俺は先に行く、徒歩で戻れるか?」


「……シルフじゃないんだし迷子にはならないよ」


「はいはい……じゃ後で【転移】ポイントハートノース家」


「……はぁ、ボクも仕事しますか……」


 そう言うとサクラゆっくりと立ち上がり部屋を見渡す、少女が閉じ込められてたと思われる部屋から隣の部屋まで何か無いかと探す、どれも凍りついていて動かせないがサクラに取っては関係の無いことであった。


「……ん?これは」


 サクラは机の上にあった2枚の紙を手に取った


 ―――――――――――――――


【ハートノース家】

「おい!!アルタナ!!アルタナはいるか!!急いでくれ」


 床に描かれた魔法陣が起動しシルフとシルフに抱えられた少女が姿を現す


「シルフ!戻ったか!ティナは……」


 アルタナは痣だらけのティナを見て絶句する


「今時を止めてあるが命が危ない今すぐにでも取り掛からないと間に合わない」


「!!分かった、おい誰かアルを探して呼んできてくれ緊急治療だ急ぐぞ」



 ―――――――――――――


【???】

 ああ熱いそれに苦しい、ここは確か前にも


「ア゛ア゛ア゛私のせいだ私がもう少し強ければこんなことにはならなかった」


 あれは私?でもあっちの方が大きい


「ねぇ神様!なんで私にこんな力を与えたの!なんで守る力が傷つける力になるの!ねぇ!なんで!聞いてないよこんなの」


 何を言ってるんだろ


「どうせ見てるんでしょ!見渡して見なよ!これが使いこなせなかった結果だって、過去を見つけなかった結果だって」


 え?周り……うっ、これは人の頭?なんで?みんな死んでる?これは?


「そうよみんな死んだの!家族も仲間もみんな私が全てやったの!力が使いこなせないで暴走した結果こうなった!お前もいつかこうなるのよ」


 嘘よそんなの……


「嘘じゃないわよ!私も昔否定しただからこうなった……そうよそうだわあなたの身体を使えばやり直せるその身体寄越しなさい」


 いやだ、近づかないで私はあなたじゃないお願い近づかないで来ないで!いやーーーー!




「ーー!!」


 気がつくとさっきまでの炎の中とは全く違う所にいた。


「おやおや目覚めたかい」


 前にも見たことある空間に1人老いぼれた女性が立っていた。


「ここは?白い空間?」



「そうだよ、あんたが産まれる前に来たことあるだろ」


 老婆はコツ、コツ、と音をたてて近づいてくる


「えぇそうね……さっきのは夢?」


「夢じゃないよ、現実さ数年後の未来だけどね」


「現実?どういうこと?あの未来を辿るの私は?それに……」


 過去がどうとか


「そうだね、辿るさ、けど未来の自分は言ってなかったかい過去を見つけなかった結果だって」


「過去?私の記憶?それなら今もあるけど」


「それは今の記憶だろう、私が言ってるのは前の記憶だよ、あんた全然思い出せないんだろ」


 老婆は睨みつけるように見るとそう言い放った


「前のって前世……そうね思い出せないただ今まで問題になんなかったし気にしてなかった」


「はぁー、未来のお前も同じこと言ってたな」


「あはは……そうですか」


 さっきの私も同じことを言っていたのかと苦笑いをする、って今は苦笑いするような体は無いか


「なら1つ忠告しとくよ、さっき見た未来みたいになりたくなければ、少しずつでもいいからすぐにでも前世の記憶を探しな、それで未来が変わる」


 未来は変わる、確かにあんな未来なんて嫌だ


「そうですか……分かりました探します」


「んやけに素直だね、見ず知らずの私を信用するのかい?」


 老婆は少し笑う、


「信用する、貴方の言葉嘘をついてるようには思えないもの」


「ははは、そうかいそうかい、そこは違うのかい、さっきの未来のお前はね『やだよ新しい人生存分に楽しむよ、そんな嘘に信じるものですか』って言ったんだよ、なら安心だ、決して踏み間違えるんじゃないよ」


 あの私はそんなことを言ったのか、でもそれが間違えだったならやることは1つ


「はい!行ってきます!」


 過去を探す、そしてあの未来を回避する


 ――――――――――――――


【ハートノース家】

「治療終了、息は安定したお疲れ様」


 俺は死ぬ寸前のティナの治療を終えて手術室から出てきた、酷いものだった、骨は数本折れていて中には刺さっているものまであった、奇跡的に回復は出来たが後一歩遅かったら、シルフ達が帰ってこなかったらと思うと鳥肌が立つ。


「ありがとうシルフ、お前のおかげだ」


 壁に寄りかかっていた男に声をかける、こいつはシルフ、俺が数十年前に倒れてるところを助けたハーフエルフで今回ティナを救ってくれた恩人だ。


「なんてことない、お礼ならそこのペンダントの精霊にも言ってやってくれ、そいつが加護を貼っていなければ今頃死んでいた」


 シルフはポケットから青いペンダントを取り出して俺に渡す。


「そうだったのか……ありがとうございますアクリア様」


「その精霊件も聞きたいがまずこの子だ、何もんだ」


 シルフは自分が救ったティナが普通ではないことが気になり俺に聞いてきたのだろうが俺はその質問の意味が分からない、何もんて言われてもな


「この子はティナ、俺の4番目の子供だ、それが何か」


「ああ、そのティナって子は力の暴走だと思うが極星魔法をそれもかなりの広範囲で使った」


 シルフの言葉に俺は目を見開き驚いた表情をする。そんなはずはないのだ


「なんだと、でもティナは今は使えて上級までだと思うが」


「多分何が吹っ切れた際に能力が開花したんだろう、僕が触れた時に【複製】が発動した」


 シルフは自分の右手をじっと見つめながら握って開いてを繰り返した。


「そうなのか、それで能力は」


 娘の能力の開花は嬉しいことだが、今はそんな余裕はない、それにシルフの表情が気になる


「それがノイズがかかって分からない何かに守られてるのかそれとも神能かどちらにしても扱いを間違えれば危険な力だ」



「……分かった、それでティナを攫った犯人は?」


 シルフは首を横に振った。


「皆死んでいた、この子の魔法によって」


 答えを聞いた瞬間怒りが湧いてくる


「くそ!手がかりなしか、街中で男達が走るのを目撃したって人がいるから雇われた賊だと思ったんだが」


 俺は力いっぱいに壁を殴る、壁にはヒビが入り始めるすると桃色の髪の少女が近づいてきた。


「……手がかりならあるよ」


 少女は紙を2枚渡す。


「これは入国許可書と依頼書、どちらも印鑑付き……君これをどこで」


「……攫った犯人のアジト、溶かしながら探すの大変だったよ、それに金貨とかもあったけどこの国のものじゃないよね」


 少女はさらにポケットから金貨を何枚か取り出して俺に渡してくれた


「ああそうだなこれは……隣国のシーバッハ帝国のだ、おい!これを鑑定しろ本物だったら攻め込む」


 俺は近くにいたメイドを呼び紙と金貨を渡す、メイドは受け取ると走っていった。


「ありがとう、シルフが連れてるってことは……お前もしかしてだけど」


 こんな小さい子、シルフと似てないしだとしたら誘拐……


「おいおいおい誤解するな、訳ありだ!今回旅した世界で出会って着いてきただけだ」


 訳ありか、それにしばらく見ないと思ったらまた旅に出ていたのか


「ならいいが……名前はなんて言うんだ」


 しゃがみこんで少女と目線を合わせる


「……ボクはサクラ、多分助けた君の娘と同じ歳だよ」


「となると7歳か、随分しっかりしてるな」


「……こんなドジと一緒にいると自然とそうなる」


 なるほどそれはしっかり者になるな、それより小さい女の子にこんなドジって言われるなんて相当だぞシルフ


「ドジは酷いんじゃないかい、一応この世界の言葉教えたの僕だよ」


「……むぅ、そこは感謝してる」


 その言葉をお前に教えたの俺だけどな、感謝されたことないぞシルフ


「分かった、それでシルフ、今回はどのくらいこっちいるんだ、またすぐ出てくのか」


「いや、サクラの面倒も見ないといけないし、もう見つからないって分かってきたし君がいいならここにずっと居ようと思ってる」


 見つからなかったか……


「そうか……こんなこと言うのはなんだが非常に助かる、君ほどの魔導師がいるとティナも喜ぶよ」


「ああ、そろそろ君に恩を返さないと行けないしな、そうだな、専属の先生としてここにいることにするよ、その代わりだけどサクラの面倒もお願いできるかな」


 恩ならティナを助けてくれたことで十分だとは思うけどな、まぁティナに同い年の友達ができることに期待するか、仲良くしてくれるかなサクラちゃんは


「なにそんなのお易い御用さ、さてとシルフ達はティナと一緒にいてくれ、ちょっと準備をしてくる」


 そう言うと俺は治療所を後にした。


「さて、俺の、俺達の家族に手を出したことを後悔させてやる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る