第8話恐怖

【???】


 大雨の日が続く

 暗くてほとんど見えない建物の中に数人の人が会話をする


「こんな噂を聞いたことはありますかね王よ」


「なんだ」


「隣の国に精霊に愛された子がいるという噂ですよ」


「ほう……それで」


「その子魔術の才能もあり将来有望だとかで、欲しくないですか」


「はは、それは欲しいな我が国はまだ小さいだがその子を調教し育てれば、あるいは人質として扱えば……国の宝に等しいはずだ逆らえまい」


 王と呼ばれた男はニヤリと笑う


「そうでしょうそうでしょう」


「それならすぐ部隊と賊を雇うとしよう、でその子の名は」


「空色の髪の女の子、名前はティナでございます」


 不気味な笑い声が響いた




 誕生日会から2年

 日々の日常は魔法の練習、体力作りに加え剣術の練習とお父様の手伝いをしていた。


「はい、これお薬です。毎晩食後に飲んでください」


「いやーいつもすまないねティナちゃん、歳をとるとどうも体の調子が悪くてね、助かるよ」


 太めの男性が頭を下げてお礼を言った。


「はい、お大事にしてくださいね」


「ティナ、こっち手伝ってくれ」


「はーい、それでは失礼します」


 こんな日常を過ごしてます。

 魔法は治癒魔法と防御魔法はお父様のお手伝いをしていたので上級まで行きました。

 他は、アル兄さんとアリア姉さんが見てくれたり指導してくれたおかげで火以外の全属性が中級無詠唱、水属性は上級になった、火は昔から苦手である何故だかは分からない、さすがのアル兄さんもお手上げだから多分成長しないんだろうなと思い始めた、アル兄さんは「苦手は誰にでもあるだから気にしなくていいよ」

 と言ってけどやっぱり成長しないのは気になる。

 剣術の方は……ちょっとね

 ジル兄さんが強すぎるのか私が才能ないのか分からないけど未だに一撃も与えられない。

 自信なくす……


「ティナ、お使い行けるかい?この時期は忙しくて誰も空いてないんだ、1人になるけど大丈夫かい?」


 雨の日続きでさらに気温差も激しいこの時期は体調を崩したりする人が多くて治療所に足を運ぶ人が増えて忙しくなる、もちろん入院の人もいるのでそれを見る人が必要となる。


「私はもう小さくはないです、お使いぐらい1人で出来ますよ、心配しないでください」


「分かった、メモとお金入れとくから、気をつけてね」


「はーい、行ってきます」


 父から紙とお金が入った籠を貰うと街に向かう、父から買い物を頼まれることが増えセナさんとかと一緒に街に出るようになったので道とかは完璧に覚えた




 街に着いた私は紙を見ながら頼まれたものを探す


「えーと……あ、あったおじ様このりんご10個くださいな」


「おお、ティナちゃん久しぶりだねお使いかい?」


「はいそうです」


「偉いね、おまけしちゃうよはいこれ」


 おじさんは真っ赤ないちごを私に渡した。


「わぁ野いちごですか、大好きです」


「そうかいよかった、銀貨1枚ね」


「はい」


 籠からお金を取り出しおじさんに渡す。


「まいど、また来てな」


 りんごを買うと次に薬草を売ってる店に向かおうとすると、フードを被った男性にぶつかってしまう


「あっ、すいません」


「こちらこそごめんね、大丈夫かい?怪我は……ってあれ、君もしかして……」


「……シルフ、時間無い、急がないと」


 男の後ろから現れた小さい背の女の子が急かすように言う


「ああごめんごめん、怪我はなさそうだし大丈夫だね、またあった時お話しようか」


「え?はい」


 顔は見えなかったが背の高い男性が私ぐらいの身長の子に引っ張られて消えてしまった


(何か言いかけてたけどなんだろ?それに……)


 どこかで会ったことあるような、そんな感じがする。

 不思議に思い次の店に向かい買い物を済ませる


「まいど、また来てね」


「はい」


 買い物を終え店を出て帰ろうとすると


「ニャー……ニャー……」


 歩いてると脇から弱々しい鳴き声が聞こえる、見ると大怪我を負った猫が倒れていた。


「ひどい、血だらけ誰にやられたの」


 慌てて駆け寄り治癒魔法を瀕死の子猫に使う、緑色の光が子猫を優しく包み込む。


「これで大丈夫なはず」


 血が止まり一安心する私、だが後ろから近く影に気が付かなった


「キャッ」


 後ろからいきなり捕まえられ、口に何か抑えられる


「痛い目に会いたくなきゃ騒ぐんじゃねぇ、と言っても薬が効き始めるがな

 」

「んー!んー……」


 男に薬か何か吸わされ意識を失った


 ――――――――――――――


【???】


「うぅっここは……痛っ」


 目覚めると薄暗く汚いところにいた、頭痛がして頭が上手く働かない、動こうとしたら片腕は鎖が繋がれていて動けなかった。


「おい!ガキが起きたぞ」


 鎖の音に反応したのか大男が扉を勢いよく開けて入ってきた。


「誰!あなた達!」


「おいおい元気だな、そんなに知りたいかい?俗に言う人攫いだよ、いやぁ聞いてた通り優しいお嬢様だな、上手く引っかかってくれて助かったよこんなに簡単に捕まえられたんだからな」


「まさかあの猫はあなた達が」


 私を捕まえるためだけに子猫を傷つけたというの、ありえない


「ああそうだが?」


「最低!【ウォーターショット】」


 魔法を放つが何故か魔力が練れなくて思った威力が出ない、けど男の腕には当たる


「痛えじゃねぇーかクソガキ」


「カハッ」


 男は魔法が当たったところを摩りながら、私のお腹を思い切り蹴られる、空気が全てでる感覚に襲われむせ返る


「けほっけほ」


 咳き込んみながら左手を前に出す、室内に風が吹く


「風よ刃となれ【ウィンドカッター】」


 無詠唱で上手くできないなら詠唱をするのが鉄則、私は詠唱して風の刃を飛ばし男の右腕を切断した。


「うぉぉ痛えええ、だ、誰か治癒魔法を早く打てくれ」

 

 男は悶えるが、すぐ仲間がやって来て治癒魔法をかけてもらい腕をくっつける。


「ガキがぶっ殺す」


 男は私の髪を掴み持ち上げると治った腕の調子を確認するかの如く腹と顔に数発殴りかかってくる


「ッツーカハッ……ハァ……ハア……」


 男の拳を抵抗出来ない状態でまともにくらったため意識が朦朧として力が入らない、恐らく何本か折れてはいるだろう

 男は壁に私を投げ捨てさらに数発蹴りを入れた。


「カハッ、けほっけほ」


 小さな体で大人の男の攻撃を食らったから体はボロボロになり、ついには血を吐き出してしまう。


「おいおい死んじまうぜ、依頼主は生かして連れてこいって言ってんだ、殺しちまうと金になんねぇぞ」


「いんだよ俺が気に食わねえから殺すただそれだ」


「あいよ、だが殺すならせめて穴使ってから殺せよな」


 男の1人が片手の親指と人差し指で輪を作りそこにもう片方の手の人差し指を入れるような形を作る

 穴?それってもしかして


「そうだなワハハハハ」


 男達の汚い笑い声が聞こえる。

 私はこの数年間、魔法の勉強もしつつ医療に関しての勉強もしてきた、穴の意味もなんとなくだがわかる


(私の初めてこんなところでこんな汚いやつらに……それに殺すって、死ぬの?嫌だよ新しい人生なのにもう終わるの)


 さっきの男が近づいてくる、私はその男をもう恐怖の対象としか見れなくなっていた。


「ぃゃ……死にたく……ないよ……いやだよ……」


 死にたくないという感情が支配し、それに耐えきれなくなった私は泣き始める


「今更泣いたって遅せぇよお前は俺らに使われて死ぬんだよ」


 男が服に手を伸ばすその光景はやけにゆっくりに感じる、聞いたことがある人は死ぬ直前周りの景色がやけにゆっくり見えると


(やだよ死にたくない、やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ)


 《なら、壊せばいい、壊せば全てが良くなる》

 突然、頭の中に何か言葉が入ってくる、声も音もないただ何か言葉が文字が頭の中に来る

 《死にたくなければ殺せばいい》


「来ない……でこっちに来ないでよ!」


 魔力が溢れ出す、辺りは冷たくなり始めていた。


「ガキがまだ抵抗する力があったか、だがお粗末だな」


 《さぁ殺せ、じゃなきゃお前はアイツらの好きなように犯されそして殺されるぞ》

 何かが入ってくる頭が痛い、必死に腕を動かし頭を押さえる、死にたくなければ殺せと頭を支配する


「やめて!入ってこないで!」


「ガハハハハついに頭がおかしくなったか変なこと言い始めたぞ、おいおい俺はまだ出してもねぇぞ」


 男が近づく

 死にたくないという思いが頭を駆け巡る、精神は不安定になり、恐怖と死が全てを支配し正常を保てない

 男に服を掴まれ破かれる、まだ家族以外に見せたことの無い裸体が顕になる


 《さぁ解き放て、お前の力を》

「やめてぇーーーーーーー!!」


 その瞬間私の中で何が弾けてそのあとの記憶はない…………

 ただ分かるのはここで変わったということだろう…………

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