第7話誕生日会ですよ2
「えーと、それはね、僕がやらなくていいって言ったんだよ」
アル兄さんは慌てた感じになり口が早くなる、何かあるなこれ。
「どうしてですか?最後のお祝いなのに」
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何か当たったかのようによろめくとまた言い始める。
「あれだよ、ほら王宮の修行は忙しいし僕も早く覚えたかったから」
「でも特別な日なんですから休みもらえたんじゃないですか」
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「ほ、ほら上の階級に行くと難しいんだよ、だ、だから1日でもやらないとすぐに鈍るというかなんというか」
さらに慌てた様子になり手振りも忙しくなっている。
「1日で鈍るようなら王様から直々にお誘い来ないと思うのですけど」
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よろめきが大きくなった、よし行ける。
「私はお兄ちゃんの成人祝いたかったです……」
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「参りました……僕がワガママ言ってしなかっただけですほんとです」
ついに押し負け地面に手を着いたアル兄さん
「はっはっは、ティナ、アルはねお前のためにカッコイイお兄ちゃんでいようとしたんだよ」
突然の不意打ちに兄は父の口を抑えようとするが避けられた、これさっきも見たような気がする。
「ちょっと、父上、それは内緒にと」
「もういいじゃないか隠す必要はないだろ、アルはね『小さいお姫様を守るため僕は王宮の修行を終えるまで帰ってきません、成人になっても絶対に、そんな修行が終わってないのに戻ってきたらかっこ悪いじゃないですか!ティナがおっきくなる頃にはカッコイイお兄ちゃんとして戻ります絶対に』って言って家を出てったんだよ、今までやる気なかったのに突然ね」
突然暴露される真実、なんかやばい感じがする。
「うーわっ……」
「アリア、何若干引いてるの、やめてそんな目で僕を見ないで」
誰が見ても分かるくらい冷ややかな目を兄に送りドン引きする姉とそれに対して涙目で抗議する兄、どっちが上なのか分からない……
(それと初っ端の言葉と言い成人の祝いをしなかった理由といいもしかして……)
「アルお兄ちゃん、私の事好きです?」
何気ない質問をしてみる
「ああ好きだとも、結婚したいくらいには」
あ、シスコンだ、しかもかなりやばい部類の、いつかほんとに手を出てきそうな勢いだったよさっきの、結婚したいくらいって……
「ティナ、こっちおいで、あんな人について行っちゃダメだよ何されるか分からないから」
「はい分かりました」
姉に招かれすぐにアル兄さんの近くから離れる、私知ってる危ない人には近づいたらダメだって。
「お前実の妹を恋愛対象として見てるのは流石にないぞそりゃ」
ジル兄さんもこれにはさすがにドン引きしている。目はもう救いようのない奴を見る目だった。
「ちょっ、みんなして酷い!」
天性のいじられ役ってあんな感じなんだなーと思った。
「ふふふ仲のいいこと」
「そうだな、あの4人で集まって話すのは初めてだもんな」
そんな兄妹の会話を聞き微笑みながら見守る父と母、楽しい会話がその後も続いた、王宮での修行の日々や冒険者としてのお話など色々聞いた。
「アリア様そろそろ」
「ああそうだったね、ありがとうセナさん」
セナさんが時間を教える、だから今日はお仕事のこと忘れるんじゃなかったの?
「もうそんな時間か、ティナこっちおいで」
私は首を傾げてお父様の方へ向かう
「これは私からの誕生日プレゼントだ、魔法が好きなティナは気に入ってくれるかな」
「私からはこれ、ティナに似合うと思うの」
「ふああ、ありがとうございます」
父から上級魔法の本、早く覚えたかったから見るだけでもこれは嬉しい、母から青のペンダントを貰い喜ぶ、早速ペンダントを付ける
「似合ってますか?」
「ふふ、似合ってるわよティナ」
「えへへ」
お母様に撫でられ口が緩む私
「僕からはこれ、ティナの部屋をみたけどこういうの置いてなかったから良かったよ」
「うわあああ、可愛いですありがとうございます」
アルお兄ちゃんから熊のぬいぐるみを貰って喜ぶ、なんでこれにした理由は聞かなかったことにしよう。
「うわ、アル兄様女の子の部屋勝手に見たんですか……」
しかし姉は聞き逃さなかった模様。
「あるかないかの確認だけだったしいいじゃないか」
「まあまあ二人とも落ち着け、と俺の番だな
俺からはこの杖だ、知り合いに頼んで作ってもらった、名前は確か水月の杖
あとティナ宛に手紙だ」
少し大きめの杖を貰った私、嬉しいけど気になることがあった。
「手紙?誰からだ?」
お父様の言葉に頷く私、この邸、この敷地内から出たのは今日が初めて、知り合いなんてこの家以外にいないはずなんだけど。
「いや、名前はない、ただアルと合流する前にフード被った女性からもう少しで誕生日を迎える妹さんにって」
ジル兄さんから手紙を受け取り読む
『やあ小さなお嬢さん、久しぶり、そしてこの手紙を家族の前で読んでることを予測し改めて自己紹介をしよう、私は世界の観測者ヴァース、約束通り5歳の誕生日に特別なプレゼントをあげよう、この魔法陣に魔力を送りなさい、君の役に立つだろう、それでは君の幸せが続くように』
読み終わると手紙と一緒についていた紙を見る
さっきまで白紙だった紙に突然魔法陣が浮き上がる
「これは?」
「ヴァースってあの世界の創造というヴァース様か?ティナ、ヴァース様といつ知り合った?」
さすがに転生する前とは言えず誤魔化す言葉を探す。
「えーと、夢の中?」
これで大丈夫かな?
この世界の伝説は詳しくないのでよく分からない私
「そうか、なら安心だが……一応偽物って可能性がある、ティナ魔法陣は今使うかい?」
「え、はい、そのつもりです」
だってせっかくのプレゼント気になるもの、それになんか信頼出来る
「分かった、アル、ティナに防御魔法を」
「はい!【トリプルハードシールド】エンチャント【トリプルマジックガード】」
兄は魔法を使うと私の周りうっすらと盾が3重に現れる、上級防御魔法の1つにそれぞれエンチャントを一瞬でする兄すごい人では?
「ティナ、これで恐らく大丈夫なはずだ、だが過信はするなよ、危ないと思ったらすぐにジルのところに逃げなさい」
「分かりました、では始めます」
魔法陣の起動は少し練習してたのでなんとなくわかる、紙に手を置き魔力を送る
すると魔法陣が光だし辺りを包む
「なんだ!これは」
「眩しいです」
やがて光が収まると魔法陣の上にそれは居た、水でできた女性の姿が表れる
『私は水の精霊アクリア、ティナ様のお力になれることを祈ります』
精霊?本で見たことはあるけど本当にいるんだ。
「えーと?よろしくお願いします?」
『はい、お願いします』
そう言うと精霊は私が付けていたペンダントの中に入って消える
沈黙が訪れる
「……」
「……」
誰も理解が追いついていないようだ
「えーと、何も危ないことはありませんでしたね?」
「そ、そうだな、となると本物になるのか」
本物と確定したのはいいがみんなまだなんとも言えない表情をしていた
「普通に人の言葉喋ったたな、かなり上の精霊になるな」
あの精霊が言ってた言葉私だけではなく他の人にも聞こえていたみたいだ。
精霊は確か魔素の塊に生命が宿ったもので普段は精霊界というこの世のものでない所で過ごしているらしい、上に行くほど操れる人が限られ上位の精霊は自然を動かすと言われている。
「私、精霊なんて初めて見た」
「僕もあのクラスは初めてだ」
そんな感想で辺りがざわつく、私も幻ではないかと思ったがさっきまでなんともなかったペンダントに魔力が宿ってるのに気が付いた
(すっかり神様のこと忘れてた)
申し訳なさに少し苦笑い、
「と、まだプレゼントをあげてる途中だったね、最後に私からだよ、ティナ少し目を瞑ってくれるかな?」
「あ、はい」
姉の言う通りに目を瞑る
すると頭に何か乗せられた感覚がした
「はい、開けていいよ」
目を開け、頭に何を乗せられたか確認する
「これは…」
頭に帽子のようなものが被されていた。
「ティナ、これが欲しかったんだよね、街に出て色々見たけど立ち止まって自ら手に取ったのはこれだけだったよね、だから気に入ってくれるかなって買ったんだよ」
頭には私が断念した青の帽子があったあまりの嬉しさに涙が出る
「ぅぅぅありがとうお姉ちゃん!」
私は勢いよく姉に飛びつく
「あはは、今回はアリアの1人勝ちね」
その後泣き疲れた私が姉の中で眠りについて誕生日会は終わった
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