第6話誕生日会ですよ

「ふああ〜ここは?」


 辺りを見回す、暗くてほとんど見えない、何かふかふかなものの上にいるのは確かだった。


「見えませんね……光よ【ライト】」


 まだ少し寝ぼけてて無詠唱出来ることを忘れ短めに呪文を唱えた、明るくなり当たりを見渡す。


「私の部屋…ですか、いつの間に」


 ベッドの上でここに来るまでの記憶を辿る。


「えーと、お姉ちゃんとお昼を食べに学校近くの食事処に行ってお姉ちゃんのお友達に会ってお話してえーとそれから……あれ?」


 セラと話してる途中で記憶が途切れてるのに気が付いた。


(これもしかして話してる途中で寝ちゃったってこと、うわあああ)


 すごく申し訳ないことをしてしまって顔を青くする私


「と、とにかく後でお姉ちゃんに謝らないと、というか今何時ですか、やけに静かな気が、もしかして……でもまだお邸はまだ明るいしそんなに遅くじゃない気がしますけど」


 とりあえず廊下に出ることにして寝癖を直して部屋を出る


(んーいつもいるメイドさん達が居ないほんとにどうしたんだろ)


 色んなことを考えながら廊下を進むと光が漏れてる部屋を見つける、しかもわざとらしく若干開いていた。


(あそこって大ホールだよねパーティやお父様が大事な会議をする時に使う、でも今日何もなかったと思うんですけど、入ってみますか)


 大ホールの扉をそーと開ける、すると


 パンパパンパン


「「「ティナ誕生日おめでとう」」」


 部屋に入った途端すごい量のクラッカーと祝いの声に少し驚く


「えっえ?、え?これはなんです?」


「ティナの5歳の誕生日会だよ、サプライズしようって前々から計画してたんだ」


 辺りを見回すと豪華な料理や綺麗な飾り付けがされており普段とは全く別の部屋に思えるくらいに変わっていた。


「ふあああ!、ありがとうございます!」


 あまりの嬉しさにぴょんぴょん跳ねて喜ぶ


「でも今までここまで大きな誕生日会お姉ちゃんの10歳の誕生日以外やってませんでしたよね、どうしてですか?」


 ふと思ったことを口にする


「それはね、この国は女の子は5歳、10歳、そして成人の15歳、男の子は6歳、12歳、15歳は特別な歳なんだ、だからお祝いをするんだ」


「特別な歳ですか」


「そうだよ、さあこっち座ってみんな待ってるよ」


「はい!」


 姉に案内され椅子に座る、少ししたらお父様が立ち上がった。


「皆、本日はティナの誕生日会に参加してくれてありがとう、皆のおかげでティナはこんなに大きくなった、これからもよろしく頼む、今日は仕事を忘れ存分に楽しんでくれ、それでは乾杯!」


 お父様の声でパーティが開始した、普段働いているメイドさんや執事さん、料理人の人たちもみんな制服ではなく私服でパーティーに参加している、今日は家だけのパーティーなのでそんなドレスとか着てる人は居ない、みんな楽しそうだ。

 私はお父様とお母様のところに向かいぴょんぴょん跳ねながらお礼を言う。



「お父様、お母様、パーティを開いてもらいありがとうございます」


「ふふっティナちゃん誕生日おめでとう、どう?驚いたでしょ」


「はい!びっくりしました」


「実はね、このパーティを計画したのアリアなのよ」


 突然の不意打ちに姉は慌てて母の口を抑えようとするが避けられた。


「ちょっ、お母様それは内緒にしてと」


「あらあら、でも隠すことでもないでしょ」


「そうですが……」


 姉は少し赤くなりだんだん声が小さくなる


「お姉ちゃんが計画したのですか!ありがとうございますお姉ちゃん」


 とびきりの笑顔を向ける


「うぅ、まぁ計画したのは私だけど料理とかの指示は全てお父様とお母様だよ」


「あの笑顔反則だな、と、今回はゲストを呼んでるんだ、セナ!呼んできてくれるかい」


 仕事を忘れてじゃなかったのでは?とそんなツッコミはしないでおこう


「ゲストですかお父様?」


「そうだよ、ティナもよく知ってる人だよ」


(私が知ってる人ですか誰でしょう)


 考えていると扉が開き2人の男性が入ってきた

 1人は私と同じ髪色の爽やかそうな感じの人もう1人は白髪の頼れるお兄さん感が出てる、どことなく父に似ている気がする。


「2人ともこっちだ」


 お父様が2人を呼ぶ


「ああティナこんなに大きくなったのか、可愛いよ、愛してる」


「お前初っ端それはないだろ」


 白髪の男の人が空色の髪の男の人に肘打ちをする


「ティナどうしたの?」


 いきなりの告白に顔を赤くして姉の後ろに隠れる


「あれ?人見知りかなこれ、セラにも同じ感じだったし、ほらティナ挨拶」


「え、あ、は、初めましてティナ・ハートノースです。よ、よろしくお願いします」


 赤くなりながら自己紹介すると辺りが凍りついてるのに気がついた。


「え」


「え?」


 何か変な言った思い首を傾げる、と


「ぶはぁあははwやっぱ覚えてないじゃねぇーかw何が『ティナは賢い子です、絶対に覚えてます』だよwあはは腹いてw」


 白髪の男の人が私の挨拶に腹を抱えて笑いだした。そんなに変なことを言った覚えはないけどなんでだろうか?


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ティナどうしてですか!小さい時にあんなに面倒見たのにー」


「いやだから覚えてるわけないだろその時のティナ何歳だと思ってんだよまだ1歳になる前だぞ」


 すると次に空色の髪の男の人が頭を抱えて悶え始めた、その様子に白髪の人は笑うのを辞めて真顔になり言い放った。


(え?これどういう状況?)


 少しパニックなってキョロキョロしてると姉が説明してくれた。


「ティナ、あの人たちはティナのお兄ちゃんだよ、ほらよく魔法の練習中に話に出てきた」


「え?この人たちが?アル兄さんの話はよく聞きましたがもう1人は?」


 今悶えてる人がアル兄さん?だった、聴いてたこととだいぶ印象が違いすぎる……あ、泣き出した。


「おいおいアルの話はしてるのに俺の話はなしですか、まぁそうだよな優秀な弟の影に隠れてるからな、俺はジル、この家の長男で冒険者をやってる、よろしくな、おいアルお前いつまでショック受けてるんだ自己紹介しろ」


 白髪の人はジルというらしい……って私のお兄ちゃん?凄くかっこいい、冒険者やっているんだ。


 ジルは手をついて泣き崩れているアルベルトを起こす


「いいもんどうせ覚えてくれないんだ自己紹介したって」


「アルお兄ちゃんですか?それとも違う人ですか?なんで泣いてるんですか?」


 自分のせいで落ち込んでるのに気が付かない私は不思議そうに顔を覗かせる、と途端に立ち上がり姿勢を正した。


「ああごめんねティナ……よし、僕はアルベルト、この家の次男で先月まで王宮で修行をしてたんだ、改めてよろしくねティナ、なんで泣いてるかは少し悲しいことがあったんだよ気にしないで」


「はいお願いします」


 本日3度目のとびきりの笑顔をする


「あれは反則だな多分なんでも許せる」


「それお父様も言ってた……で兄様達いつ頃戻られたんですか?私もいるの知りませんでした」


 戻ってたことは姉も知らなかったみたいで本当にサプライズゲストという形になっていたみたいだ。


「ああ、昼頃に戻ってきたその時はアリアもティナもいなかったし父上からサプライズゲストにしようって言われてずっと部屋にいた」


「そうだったんですか、で、どのくらい滞在する予定で」


 姉は珍しく真剣な顔をして兄達の方を見ていた、何かあるみたいだ。


「そうだな、俺はパーティが解散したしいい機会だからしばらく家の手伝いをするかな」


 パーティーの解散……本人はケロってしているけどそれって良くないことが起こったからじゃないのかな、誰かが死んじゃったとかいざこざがあったとか


「僕は王宮での修行を終えたのでこれからはこっちで治癒魔法の勉強をしようと思うのでずっといますよ」


「え、本当ですか!それは嬉しいな」


 姉は真剣な顔から一気に明るい表情になる


「ああ、頼んでくれれば練習相手はするぞ」


 姉は小さくガッツポーズをする、アルお兄ちゃんって魔法の才能があって王宮から呼ばれるくらいなんだよね、私も見てもらいたいななんて思う。


 そんな会話を見ていた私がそう言えばと思いこんなことを聞く


「あの、アルお兄ちゃんの15歳の誕生日なんでお祝いしなかったんですか?」


 爆弾を投下した

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