第21話少しゆっくりと僕

「少し、ゆっくりしていきませんか?」


不意に、

呟くように、彼女は言う。


ランチ終わりの午後15時、

3時間の楽しいトークタイムを過ごした(少なくとも、僕は)僕たちは、連なる飲食街をてくてく歩いている。


今日で、4回目のデート。

1回目はランチ、イタリアン系。

2回目はランチ、がっつり肉系。

3回目はランチ、カフェ飯系。


そして4回目の今日も、ランチである。

今回はビュッフェ系のご自由にお取りください系。

バラエティに富んだメニューを、腹のなかに取り込んだ。

元を取ろう、なんて浅ましい考えは捨て、彼女との時間と会話に集中していたため、あまり食事の量はとっていない。


さて、どうしたものか。

この後の展開はまるで考えていない。

いや、多少は考えていた。

小指の爪の甘皮ほどには、考えていた。


このランチデートから次のステップに行くタイミングはいつなのかと。

僕は彼女いない歴2桁オーダーの猛者ではないし、

律儀に純潔を守る童でもない。


無論、その手の行為を誘った経験もあれば、実施した経験もある。

だけれど、

だけれども。

それは遠い昔だ、

遥か過去だ。

年号が違う。

ーーいや、昭和まではいかない。

一応平成ボーイだ。


閑話休題。

さっさと返答しなければ。

彼女の真意を読みどのように『ゆっくり』するべきか考え、言葉にしなくては。

沈黙は良くない。

この状況において、金でもなければ銀でもない。

銅ですらない。


何か、

何か言葉を。

いい感じにつなぐ言葉を捻り出すんだ、我が脳細胞たちよーー

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