第7話爪楊枝と俺
「いてっ!」
コンビニ弁当を食べるために、割り箸を開けようとしたら、一緒に入っていた爪楊枝が指に刺さる。
鋭い痛みに顔を歪め、
急な攻撃に不快感を露わにする。
なぜ、俺がこんな目に。
俺が何をしたというのだ。
ただ、割り箸の封を開けただけ。
どうして、俺がこんな目に。
ゆっくりと血が滲む指を眺めつつ、俺は自身の過去を振り返る。
俺はだいたい運が悪い。
過去を語れば、やっぱり悪いと自覚する。
旅行に行けばだいたい天気が悪いし、
好きになった子にはだいたい彼氏がいたし、
4択のマークシートテストは往々にして25%以下の正答率だった。
金のエンゼルどころか銀のエンゼルも見たことはないし、
レアカードも自身がパックから買って得たものは一枚としてなかった。
コイントスは毎回外すし、
ダイスロールも目が悪い。
だが、敵対者にはそれが逆に働く。
故に、ギャンブルデッキ相手に勝てた試しがない。
尽く、タイムマジックを決められた。
運が悪いエピソードは幾らでもある。
腐る程ある。
いや、既に腐っている、
俺と同じように。
そもそも、どうして爪楊枝が割り箸と一緒に入っている。
俺のように使わない人間も一定数いるのだから、分けて用意すればいい。
そうすれば、コストもその分浮くし、地球にも優しいはずだ。
これは、割り箸業界と爪楊枝業界の癒着がひきおきした悲劇だ。
こんな抱き合わせ商品を流通させなければ、この流血はなかった。
ーーって、俺はバカか。
なんて無駄な思考をしているんだ。
だから、俺はダメなんだろう。
運が悪いとか、
それ以前にきっと俺は、
頭が、悪いのだ。
冷めつつある弁当の封をゆっくりと開ける。
ぬるく湿った肉汁が指につき、これまた不快だった。
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