第430話15-19女神の杖運搬
15-19女神の杖運搬
「さあ、セキいい子ですからちゃんとおっぱいを飲むのですよ」
ティアナがセキに授乳している‥‥‥
あの大きな胸をあらわにして。
本当はあたしのなのに‥‥‥
「うう、ティアナ様がとうとう正妻の子供を‥‥‥」
「セレ、泣かないで。こうなったら何が何でもあたしたちもティアナ様のお子を!!」
いや、それ無理だって。
あたしですらまだその方法が見つかっていないのにあんたらじゃ無理だって!
『これってどうするのよ? エルハイミだけでなくティアナまで子育て始めるって?』
「でもシコちゃん、あれは赤竜の再生した姿。ある程度魔力を与えれば記憶を呼び戻しすぐにでも自我が芽生えますわ。更にそうなれば人とは比べ物にならないスピードで成長を始めやがて脱皮をしますわ」
コクがそうであったようにセキもこのまま魔力を与え続ければやがて記憶を取り戻し自我が芽生えるだろう。
そうなれば成長は一気に早まる。
コクが名づけの従属をさせているから危険は無いだろうけど、うーん、子持ちの所帯になってしまった。
「ああぁ~あ。ティアナも優しい表情で授乳できるんだぁ。なんかうらやましい。それにその子って本当にティアナとエルハイミの両方に似ているのがなんか腹立たしいわね! エルハイミ、あたしも子供欲しいぃっ!」
「何を言っているのです? お母様のお子を産むのは私ですよ? お母様、お母様のお子を産む為にはこの体をもっと成長させねばなりません。早速お母様から魔力をちょうだいしたいと思います!」
「いや、コクは昨日魔力供給したではありませんの? それにシェルもシェルで何を言っているのですわ!」
わいわいがやがや。
しばしセキに魔力供給という名の授乳をさせてからあたしたちは本題の話に入る。
「どうやらセキは魔力供給が終わったようですわね? ティアナ、大丈夫ですの?」
「ええ、だいぶ魔力を吸われましたがまだ何とか。それよりセキにげっぷをさせた方が良いのでしょうか?」
完全にお母さんになってしまったティアナは甲斐甲斐しくセキの世話をしている。
うん、好いお母さんになるな、ティアナは。
「赤お母様、魔力を吸ったのであれば胃袋に物が入っている訳ではありませんからげっぷは不要ですよ? それにそこまでセキにしてやらなくても大丈夫です。セキはその辺においておけば寝ているでしょうから」
「しかし‥‥‥」
ティアナはセキを抱っこしたまま離さない。
ちょっと妬けるけど仕方ない。
あたしは過保護なティアナをそのままに話し始める。
「さて、赤竜も無事孵化出来ましたし私たちもそろそろボヘーミャに行かなければなりませんわ。マース教授に女神の杖を渡し研究を進めてもらわねばなりませんからですわ」
そう、学園都市ボヘーミャに秘密裏に預けてある「女神の杖」は今マース教授とアンナさん夫婦の手によって研究されている。
杖自体も相当な魔力を持ち使い方によっては相当な効力を発揮する。
だが精霊に関与する女神の杖はあつかいが要注意で下手をすると双備型魔晶石核をも停止させてしまう事がある。
そんな危険性も持っている「女神の杖」だが一所に集めておくとどれかに魔力が集中して魔結晶石の中にある女神の体の一部が再生を始め女神の肉体が復活する恐れもあるそうだ。
いろいろと取り扱いが面倒な「女神の杖」だが一番の問題はそれが十本全て集まると「狂気の巨人」を封じている「虚無の空間」の封印が解かれる事だ。
それはジュメルの目的でありこの世界の破滅を意味する。
「それに初号機ですがあの後いろいろ調べてみたらかなりの部位がダメになっていましたわ。あれを修理するにはティナの町に戻るかボヘーミャで新たに素材を確保するかの方が良いですわね」
あたしは初号機の修理に必要なリストをめくってみる。
だいぶお金がかかる部材が必要だ。
幸いあたしたちの持ち帰った赤竜の財宝のおかげで今のガレント国庫はかなりの余裕が出来ている。
その辺は大臣たちも涙を流して喜んでいたっけ。
「ですので、この後はボヘーミャに飛びますわよ。ティアナ、よろしいですわね?」
「ええ、それで構いません。連合軍の行動についてはアラージュとカーミラを駐屯所に残し私が不在でも随時連絡が取れるようにしておきました。連合軍は引き続き巡視を行いながらジュメルの拠点を一つ一つ潰していきます」
ティアナの了承で今後の予定は決まった。
さてそうするとあとは日程調整と報告、ボヘーミャへの移動とアンナさんに連絡して‥‥‥
あたしにはボヘーミャでやらなければならない事があった。
それはアイミと四つの魔結晶石核を使ってスパイラル効果による異界への道を開き最低でも一本の「女神の杖」を異界に飛ばすという計画。
全ての「女神の杖」を異界に飛ばすにはもったいないとのマース教授の話もあり、研究が進んでもう使わないだろう「女神の杖」一本を異界へと飛ばす。
かなり危険な賭けだがこれさえできれば「狂気の巨人」は二度とこの世界に蘇ることは出来ない。
「女神の杖」は火山のマグマの中にいれようが【流星召喚】メテオストライクの直撃を受けようが壊れる事は無い。
だからこの方法を使うのだ。
「でも、本当にその赤ん坊も連れて行って大丈夫なの? この子が赤竜ってのも今だに信じがたいのだけど?」
イパネマさんはティアナが抱っこしているセキを見ながら優しい表情でそんな心配をしている。
言いたい事は何となくわかるけど、セキは赤竜の再生した姿だ。
「それは問題ありませんわ。セキは普通の赤ちゃんではありませんし、あちらではプロフェッショナルのアンナさんもいます。学園はいたって安全な所ですわ」
びっとあたしは人差し指を立てながらそう言う。
それに早い所「女神の杖」の問題を解決できれば後はジュメルの力を徐々に削っていってホリゾンの解放をすればほとんどのジュメルの駆逐は終わるだろう。
どう考えても今の拠点はホリゾン帝国やルド王国を中心にしている。
「巨人」の製造や「種」、魔怪人たちの生産を続ける拠点は必要だろう。
連合軍の巡視の成果もあって徐々に小さな拠点も壊滅している。
しかし報告ではどの国にも現在は大規模な施設は見つかっていない。
そうするるとやはり考えられるのは北の大地にジュメルの本陣が有ると言う事だろう。
それに多分ジュメルもルド王国に「狂気の巨人」が封印されている事を知っているだろう。
なので出来る限り「女神の杖」は早く処理したいのだ。
あたしはポーチから赤竜に預けられていた「女神の杖」を取り出してみる。
この杖は確か炎の女神シェーラ様の杖。
ティアナの魂と深くつながる女神様だ。
あたしはその先端についている魔結晶石の中にある何かを見ながら思う。
これが済めば秘密結社ジュメルは世界を破壊する手段を失う。
そして北の大地を開放できればやっと平和が訪れる。
もうジュメルに右往左往させられて苦労する事は無い。
「エルハイミさん、それが最後の『女神の杖』なの? どの女神様かしら?」
イパネマさんはティアナの所からこちらにやってきて一緒に「女神の杖」を見ている。
「ええ、そうですわ。炎の女神、シェーラ様の杖ですわ。あと少し、これでジュメルの野望は潰えて世界に平和が訪れるのですわ!」
「平和ねぇ‥‥‥」
イパネマさんは憂鬱そうにしていたがその時のあたしは気づかなかったのだった。
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