第429話15-18セキ
15-18セキ
「これって本当に上手く行くのかしら?」
ティアナはそう言いながらあたしの代わりに赤竜の卵に魔力を与えていた。
あたしはティアナに口づけしながら彼女に苦労をねぎらう。
「お疲れ様ですわ、ティアナ。多分ほとんど魔力を吸われたと思いますけど大丈夫ですの?」
「ええ、正直きついけど何とかね。エルハイミ、コクの時もこうだったの?」
ティアナは近くにあった水のみからグラスに水を注ぎながらあたしに問いかけてくる。
あたしもティアナから渡されたグラスに口をつけてからあの頃を思い出す。
「ええ、確かにそうでしたわね。ただ、あの時のコクは私と魂の隷属が済んでいたので私の魔力がだいぶお気に入りのようでその結果孵化した時には人の姿で生まれたのですわ」
ティアナは水を飲みながらあたしの顔を見てから赤竜の卵を見る。
「そうするとこれは竜の姿で生まれるってわけね?」
「ええ、多分そうだと思いますわ」
「うんっ、お母様? ‥‥‥分かりませんよ、お母様たちの魔力は私たち竜族にやたらと馴染みますからね‥‥‥ ふわぁぁっ、途中で寝ちゃいましたね?」
コクはそう言ってあたしの横で起き上がる。
さっきまであたしから魔力を吸い取っていたのだけど、魔力を吸った後にそのまま横で眠ってしまっていたのだった。
なので赤竜の卵の魔力供給は今日はティアナがしている。
「なんかちょっと残念ね。コクを見ていたからこの卵にあたしとエルハイミが交互に魔力を与えればあたしとエルハイミの両方の姿に似た子が生まれると思ったのに‥‥‥」
「ティアナ、もしかして‥‥‥」
「う、うん、あたしとエルハイミの赤ちゃん‥‥‥」
ぽっ。
ティアナは赤くなって嬉しそうにそう言う。
うわーっ、何それ!?
思わずあたしはティアナにまた口づけをしてしまった。
「もうティアナったら、でもそうすると魔力の授乳は交互にしなければですわよ?」
「お母様! それはだめです!! お母様のおっぱいは私のです!」
コクが起き上がってあたしにしがみつく。
「コク、あなたも今のその姿になったのです。そろそろおっぱいは卒業なのでは?」
「そ、そんなぁっ! コクはお母様のおっぱいじゃ無きゃ嫌です! このまま大きくなってもお母様のおっぱいが良いです!」
なぜかよだれを垂らしながら真剣な目で迫って来る。
「コク、最近思うのですが本当に魔力吸収が目的ですか?」
「も、勿論です、赤お母様!!」
そう言いながらなぜか視線をティアナから外す。
なんか口笛まで吹いて‥‥‥
「コク、もしかして‥‥‥」
「そ、そうだ! お母様! もしかしたらお母様や赤お母様の魔力であれば赤竜も人の姿で孵化するかもしれません! 本来私たちは周辺の魔力を吸収して孵化しますが特定の魔力を供給するとそれに影響を受けると思うのです」
いきなりそう言ってまくしたてる。
うーん、まあその可能性はクロさんも以前言っていたし、あたしやティアナの魔力って通常の人よりずっと多いしね。
太古の竜の卵が欲するほどの魔力を満足させてあげるのって普通は出来ないもんね。
そんな事を思いながらザキの村からずっとこっちティアナとあたしで交互に魔力を与えてきた赤竜の卵を見る。
と、丁度あたしが見ていたその場所にひびが入る?
「ティアナ! 卵が!」
「どうしたの? って! これ産まれそうなの!?」
ティアナも気づいたようだ。
そしてそのひびはどんどん大きくなっていく。
思わずあたしたちはそれをベッドの上に置いて凝視する。
びきっ!
ぴきぴきぴきっ!
ひびはどんどん大きくなってきていた。
びきっ!
ぱきんっ!
あたしたちが見守る中とうとうその卵は割れてその欠片が落ちる。
ごくっ。
思わずつばを飲み込む。
もし人の姿で出て来たならば‥‥‥
そう思うと思わず前のめりになってしまう。
あたしとティアナ、両方に似ているのかな?
それともティアナ似?
まさかあたしに似ていれば二人目!?
思わずそんな事で頭がいっぱいになってお目目ぐるぐるになってしまう。
ちらっとティアナを見るとあたしと同じくお目目ぐるぐる。
ものすごい真剣なまなざしで見ている。
「お母様!」
中で何か動いいた様だ。
それは更にひび割れを大きくさせとうとう卵の外に飛び出る。
ばきっ!
そこから飛び出したものは赤い鱗を持った竜の尻尾だった。
「はぁ、流石に人の姿では出てこないかぁ」
ティアナがそう落胆したその瞬間だった。
ぼこっ!
いきなり卵が大きく割れ上層部が外れると真っ赤な髪の毛の女の子が頭と手を出した!?
その子は一旦大きく伸びあがったと思ったらそのままぽてっと横に倒れベッドにの上に伸び出る。
「こ、これはですわっ!」
「ふむ、やはり影響を受けたのですね? 見事にドラゴンニュートになっていますね?」
「エ、エルハイミ! お、お湯必要なのかな!?」
卵から出た赤ちゃんはその後もずりずりと這い出てきて体をぬめぬめと液体をまとったままごろんとあお向けになった。
「うわっ!」
ティアナが思わず声を漏らす。
それもそのはず、この子はあたしとティナの顔のパーツが混ざったような感じで真っ赤な髪の毛、しかしそのもみあげの上には両方に二つずつの棘の様な髪の毛が出っ張っている。
「見事にお母様と赤お母様の両方に似ていますね? うーん、複雑な気持ちです。まるで私の妹のようでは無いですか?」
それを聞いたティアナは歓喜の声をあげる!
「エ、エルハイミ! やったわ! あたしたちの子供よ!!」
「ティアナ、落ち着いてくださいですわ。姿形は似ていますがこの子は赤竜ですのよ?」
「でもほらあの鼻の恰好とか真っ赤な髪の毛とかあたしによく似ているし、口の形はエルハミそっくり、もみあげの上の棘型の髪の毛も!!」
確かに似ているよ。
でもそのうちこの子は赤竜としての記憶が戻ってあたしたちに敵対的になるかもよ?
「ふむ、同族のよしみとこの後私に逆らえないようにしておきますか。誰が上か教えてあげないとですね」
コクはそう言ってニヤリと笑う。
そしてこの子供に手をあて魔法陣を出現させる。
「上下関係を意識づけさせるためにこの子に名前を与えます。私が与える事により私の配下とします。そうですね、赤竜ですから、『セキ』とでもしましょうか。赤竜よ、お前は我が配下! 『セキ』の名を受け取るがいい!!」
コクはそう言って魔法陣を輝かせるとその魔法陣は光ながらその赤ん坊を取り込み消えて行った。
「これで良いでしょう。赤竜の記憶が戻っても私の方が上と言う事でもう逆らえません。私の上部にはお母様がいますし、赤お母様も私の認識に準ずるのでこれでセキはお母様や赤お母様には逆らえなくなりました♪」
ふふ~んと鼻歌でも歌いそうな雰囲気でコクはあたしに「【浄化魔法】でもかけてやれば十分です」と言ってきた。
あたしはすぐに【浄化魔法】をかけてやるとぬめぬめも何も無くなりさらさらの赤毛がふわりとなる。
ティアナはすぐにシーツでセキを巻き取りその豊満な胸に抱く。
「か、かわいいっ! あたしとエルハイミの子供‥‥‥ う、うふっ、うふふふふふっ!」
既にお目目ぐるぐるのティアナはそれしか見えていない。
いきなり母性本能に目覚めたか?
あたしとコクは顔を見合わせながらティアナのその様子を眺めるのだった。
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